伸びしろ無限大だと信じてる

澄ノ字 蒼

第1話

 最近反省したことがある。


 友達の一人はシステムエンジニアである。仮にHとしておく。その他にTと三人で時々カラオケに行ったり飲み会に行ったりした。Hは飲み会の費用を持ってくれたりしたこともあったり、北海道旅行に行ったときにはH自ら自動車を運転してくれたりしてくれていた。僕はというとそのとき自動車の中で眠りこけていた。


 そんな親切なHを失望させてしまったことがある。

 僕は会社を辞めて家でごろごろしているとHから電話がかかってきた。


「澄ちゃん、助けて」

「どうしたの」

「仕事手伝って!」


 話を聞くとその友達はあるプログラムを作っているのだが仕事がめいっぱい入ってしまいアップアップになってしまったそうである。話を聞くと僕にしてほしい仕事というのはある会社に出向して2週間仕事をして友達の作ったプログラムのバグを見つけてとのことである。


「お金なら僕が出すから! お願い。助けてください!」


 ムチャクチャな話だった。まず僕は障がい者でまたそういう枠でしか働いたことがない。それにパソコンは詳しくなくプログラムに触ったことも無かった。分からないことだらけだった。出てきた言葉は


「ごめん。無理」


 Hは

「ごめん。無茶いってすまん。分かった」

 その言葉だけを残して通話を切った。その時は深く考えなかったが帰ってからあるアイドルアニメを見て主人公が言っていた言葉が胸に突き刺さった。

「できるかどうかじゃなくて、やりたいかどうかだよ」

 そっか。やりたいかどうかだよな。Hを助けてあげられなかった。能力のなさなんてHは鼻から分かっている。それでも頼ってきたんだ。たとえ対人恐怖症でも精神障害を抱えていたとしても仕事に行くべきだったんだ。Hを助けたかったらかっこわるくても助けるべきだったんだ。今まで散々おごってもらったりしたのに。自分がかっこわるい姿を見られたくないばかりにHを見殺しにしてしまった。


ボクハHヲミゴロシニシタ

ボクハHヲミゴロシニシタ

ボクハHヲミゴロシニシタ


夜、布団の中で寝ながら思った。

僕ってかっこわるいなと。口だけ良いこと言って行動が伴っていない人間だな。自分への情けなさで一杯だった。メールを打とうとしたが自己反省から苦しくてメールを打つのを止めてしまった。


 今度は友達から助けを求められたら応えられる人間になりたいな。


 やっとのことで一時間かけてメールを打つ。

「ごめん」

 と。


 それから何ヶ月かして。またHから電話がかかってきた。

「今会社辞めているから平日開いているでしょ。手を貸してよ」

「うん。何?」

「エアコンが壊れちゃって。今度の水曜日に業者が来るから立ち会って欲しいんだけど。お願い」

「いいよ」

「今度また居酒屋でおごるからさ」

「今回はいいよ。前回のデバッグの件もあるし。むしろ仕事ください」

「ごめんね。じゃあ鍵渡すからお願いね」

 

 当日エアコンの修理に立ち会い無事に終わった。

「ありがとう。助かったよ」

「こっちこそ今回はいろいろと勉強になったよ」

「また飲みにいこう」

「うん」

 そうだった。Hはこういう人だった。僕を障がい者としてみるのではなく一人の人間としてみている。だからこそ仕事は無理だと決めつけないで頼ってくれた。頼られるのは初めてだった。やっぱりHは温かい人間だった。HだけではないTも僕のことを一人の人間として扱ってくれる。僕はHとTという友達に恵まれて幸せ者である。


 今回の出来事は、もっともっと成長したいなって思った、そして自身の小ささを思い知ったエピソードだった。障がい者だからできないではなくやろうとする努力も時には必要なことと学んだ。僕自身、まだまだ伸びしろがあるって信じている。


伸びしろ無限大!

そしてHとTは僕にとってとても尊い存在である。

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