21回目の告白

味噌わさび

第1話 俺と幼馴染

「好きです。付き合って下さい」


 俺はそう目の前の女の子……長い付き合いの幼馴染に告白した。


 しかし……女の子はどことなく嬉しそうではない表情である。


「……駄目。まったく、駄目」


 不機嫌そうにそう言う幼馴染。俺自身も……なんとなく駄目かな、と思ってしまっていた。


「……そうか。やっぱり、駄目か」


「はぁ? あのさぁ……やっぱり、って、何? 最初から駄目だって思ってたわけ?」


 幼馴染は怒りを露わにする。俺は慌てて謝った。


「いや、なんというか……その、今回は駄目かなぁ、って」


「……はぁ。アンタさぁ。ほんとは私のことなんてどうでもいいんじゃないの?」


 と、幼馴染は呆れ気味に俺にそう言う。


「そんなことはない! どうでも良かったらそもそも告白なんてしない!」


「……その告白に真剣味が感じられないから怒っているんだけど?」


「それは……なんというか……」


 どうして真剣味が感じられないのか……俺だって反論したかったが、やめておいた。


 いずれにせよ、俺に真剣味が足りないのは問題の一部である。だからこそ、もっと真剣に告白すべきだと思うのだが……。


「……もういい。アンタとは……もうダメなんだ」


「え? な、何言っているんだ?」


「……私、今別の人に告白されているんだ。もう、その人の告白、受けちゃおうかなぁ、って……」


「そ、そんなの駄目だ!」


 俺は慌ててそう言う。すると、幼馴染は少し驚いたような表情をする。


「でも、アンタは別に私のことなんてどうでもいいんでしょ? だから、真剣に告白もできないわけだし」


「そんなわけないだろ! お、俺は……今までもお前のことが一番好きだし……これからの人生でもお前以上に好きな人には会えない……そう思っているよ!」


 俺は自分の気持ちを全部ぶちまけるくらいの気持ちでそう言った。しばらく幼馴染は冷たい視線で俺のことを見ていたが……急にニヤリと微笑む。


「……プッ。変なセリフ。それ、自分で考えたの?」


 バカにした調子でそういう幼馴染。俺は思わず恥ずかしくなって視線を反らす。


「……悪いかよ。こういうのしか思いつかないんだよ」


「う~ん……まぁ、でも、必死な気持ちは伝わってきたかな? でもさ、よく嘘だってわかっているのにそんな必死になれるね」


「……だって、お前が俺以外の誰かと付き合うって考えると……なんか、嫌だし」


 俺がそう言うとさらに幼馴染は嬉しそうな満面の笑みを浮かべる。


「うんうん。合格。今年も一年、良い関係でいられそうだね!」


「……なぁ。お前……これ、いつまで続けるんだ?」


「ん? いつまでって……ずっとだよ。約束したでしょ? 21年前に」


 ……確かに約束した。21年前。5歳の頃。俺は彼女に告白した。


 彼女はすんなり俺の告白を受け入れた。しかし、それと同時に一つの条件を出した。


 まさに、それこそが……。


「それに……毎年、1年に1回、告白するなんてロマンチックだと思うでしょ?」


 得意顔でそう言う幼馴染。


 正直、俺としても21年もこんなことに付き合っているのもどうなんだろうと思うが……惚れた弱みで、嬉しそうな彼女の顔を見ると、来年も告白しようと思ってしまうのであった。

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