21回分余分に生きた私

富士蜜柑

n月m日Ω(φ)

今この日記を書いている私、三和・アウローラ・愛奈。

私はどこにでもいる普通の女の子、とはいきません。

幸か不幸か、私は大企業の令嬢として生まれてしまったのです。

5大財閥として名を馳せた、三和家の後継ぎなのだそうです。

ちなみにアウローラはミドルネームですので、日本で暮らしていく上では、

三和愛奈です。

私は所謂日系イタリア人だとメイド長に伺いました。

周りの皆さんとは違う、ゴールドの髪に先天性の虹彩異色症、

要するにオッドアイの目。

左が赤眼、右が青眼なのです。

そんな私を怖がって、同年代の子たちの中に話しかけてくれるような方は

いませんでした。

…まあそうですよね。

あ、ですが、今の暮らしに不満があるとか、そんなことではありません。

お父様やお母様には滅多に会うことはありませんが、それも全て側近の方々が私が生活する上で不自由ないようサポートしてくださっていますし。

それに日本のアニメ・漫画の文化は素晴らしいですね!

百合という枠組みを作っていただいた先人には感謝しかありません。

尊いです。

ならばなぜこんな一人語りを始めたのか。

そう思われるのが自然だと思います。

その理由は、今からお話ししていきたいと思います。


ある日、二年ほど前でしょうか。

おやすみなさいと、床について眠った、あれは確か忘れもしない4月の15日。

次の日に目が覚めて日付を確認すると、4月の15日のまま変わっていない。

そんなことがありました。

私は急いでベッドから降りて、側近のものに確認を取りました。

これは壊れているのではないか、と。

しかし、どれも正常、どころか皆が一様に今日は4月の15日だというのです。

私はあの時、自分の頭がおかしくなったのかと、深く悩みました。

そしてそのまま、違和感を抱いたままその日は寝ました。


それで何もなく4月の16日になれば何も問題はありませんでした。

しかし、また次目覚めた時も4月の15日のままでした。

これはやはりおかしいと、私は事態を深刻に受け止めるに至りました。

そこで側近のメイドのに、昨日も言ったが今日もまた4月の15日のままだ。

そう告げたのですが、さらにおかしいことに、メイドは昨日私がそんなことは言っていないというのです。

もう訳がわかりませんでした。


そこで私は自室に篭り、状況を整理することにしました。

今この日記をつけているノートにです。

『1、世界は4月15日を繰り返している。

 2、その繰り返しを私以外誰も覚えていない。

 3、それを誰かに伝えても問題はない。』


現時点でわかっていたのはこの三つだけでした。

ただ、これだけをまとめるのにもひどく時間がかかってしまいました。

本当にそうなのか、今までの記憶を総動員に、明確なルールを作るためです。

そんなことを書いて、そろそろ寝ようか、明日は来るのか、など思っていた矢先、

ちょうど目に飛び込んできた時計の針が24時ジャストになった瞬間、視界があやふやになり、私は意識を失いました。


ここで新たなルールが加わることとなりました、

『4、24時ジャストに世界は繰り返す。

 5、この世界についての記述は削除される』

というものです。

ですから、今このノートはこの世には存在しません。

ですからもしこのノートを今あなたが読んでいるのならば、この世界の繰り返しが終わった、もしくはどこか別の世界にこのノートが移動した、ということでしょう。

ちなみに、私が今記憶している限りでは世界は累計21回繰り返しています。


誰かがこのノートを目にしてくれることを心から願っています。

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