第43話 花道


 「専務、社長がお呼びです」と、大場咲秘書が。

 「高井戸のことだな」


  社長室に入ると、大河原取締役と自見が。大河原は兎も角、何故自見が、

 「自見君、君、場所を間違えているよ、惚けてしまったのか」

 「専務、自見さんは顧問として此処にいます」

 「顧問、そんな話聞いていない」

 「顧問の任命権は社長の私にあります、格別専務にお断りすることはありません」


  この若造が、偉そうに、銀行あがりが、この際はっきり言ってやるぞ。


  「で、なんなのですか、中央道高井戸の受注のことですか」


 社長は、

 「専務、私は専務が苦節50数年身を粉にして、当社に尽くされたことを尊敬申し上げ、心より感謝しております」


 そう言いながら、ホテル瑞鶴での密会の写真、バルザック管理部との交信記録をテーブルに広げた。

 遠藤は、ソファから転げ落ちそうになりながら、拳を握りしめ、鬼のような形相で社長を睨みつけた。が、それも一瞬、肩を落とし、顔が蒼ざめた。


 大河原取締役から

 「実は、臨時幹部会で、このことを明らかにしようとしましたが、社長が反対されました、余りにも忍びないと」

 


 遠藤は、社長を見た、社長の目には涙が光っている。


 社長に、深々と頭を下げ、今日この場を以って職を辞します。長い間お世話になりました。

 そう言って、静かに部屋を出た。

 


 遠く富士の雄姿が、その花道を見つめていた。


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自見耕助の歩いた道 第二部 飛躍 伊眉我 旬 @03haru

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