大公爵の令嬢はぐっすり眠りたい

Kou

プロローグ

そこは、無数の本棚が並んでいる、果てしなく広がる白い空間だ。

生き物があ存在しな筈その場に、一人だけ、まだ空っぽ本棚の前に無造作に置いていた本を片付ける人物・・・オレがいる。


コレはもはや日課のようなモノだ。毎日、新しい本が落ちた。何十冊が落ちた日があれば、一冊だけの日もあった。でも、必ずといっていいほど、新しい「情報」・・・本が来る。だから毎日やらないと痛い目に会うのは自分なので、怠ることなく片付けるべき!


さてと、今日は何を読むのやら、と、オレは散らばった本を拾い上げて、棚に入れた。今日は結構物騒な本が多い。


『拷問の歴史』

『人殺し大百科』

『図説・世界の銃パーフェクトバイブル』

『レメゲトン』

『淫ランボー』


・・・


ちょっと待って!何この最後の本は!?絶対関係ないよね、他の本とは!表紙もやべーし!何このおっぱいのデカさ!牛かよ!?牛魔の乳ですらこんなサイズじゃないだろ!?


「相変わらず、何でも読むな、コイツ……」


オレは独り言を口にしながら手元にある際どい本を眺めた。


はい。すいません。気になるので、片付けが終わったら、そのまま床に座ってソレを読んでいた。



数時間後、ダンタリアン大公爵の屋敷は朝を迎えた。

一人の長身の女が寝室の窓の前で腑抜けた顔で佇んでいた。


そう、オレである。



「………………ヤバいな」



何というか・・・うん、すごい小説。

やはり、異世界の作品ってすげぇな。



「おはようございます。朝からあんな顔はどうかと思いますが、ルー様の事ですから、きっといつもの夢でしょうね……大丈夫ですか?」


オレ付きの侍女、ケルビナは朝の飲み物を持って現れるなりそう言っていた。態度はこうだけど、一応オレの理解者の一人なので、問題ない。むしろ堅物じゃなくてよかった。


「うん。いつも通り、ぐっすり眠らないよ」


オレは基本、ぐっすり寝ていない。

原因は勿論、あの「脳内の図書室」だ。

ケルビナには夢としか言わないが、家族のみんなは知っている。


だって、あの本からの情報・・・「地球」とかいう異世界の知識や技術を活かせないと勿体無いだろ?


まぁ、いらん事に巻き込まれた種でもあったのは、否定出来ないけどね。

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