第1話


ダンタリアン大公爵の一族はそれほど大きくないが、目立つな噂もなく、貴族では珍しく、軍事的にも政治的にもあんまり興味を示さなかった。

彼らの一族の偉大さは、医学のためであった。


アンテノーラ王国の先王はお世辞にもいい人とは言えなかった。自身の思い通りにならなければ気が済まない性格で、複数の王妃を娶っていた。その癖、飽きたら無向きもしないで後宮に入れた。殺さないだけが救いと平民では思うけど、実際、貴族社会では追放に近い扱いされたのだ。


横暴で、腐った駄王。

・・・そうダンタリアン家が密かにあだ名にした


そんな駄王には愛想がスッカラカンまで尽かした先先代ダンタリアンの当主(あの頃はまだ公爵だった)だが、彼と妻は尻拭い・・・即ち、不憫な王妃たちのために色々尽した。主に、メンタルケアの類。彼の姉弟やその家族は、そんなクソったれのダメな政治の為に苦しんでいた民の為に、平民のための病院作ったやら一週間に一度無料な食事やらを配ったやら、当時大声では語られないが、平民の間では大人気だった。


『いい家に生まれ、いい暮らししているのは、責任ある仕事の等価だからだ。そしてそれは、個人ではなく、国に仕えるの事だ』


それは、ダンタリアン家の家訓。

自分の為に生きる道を選んだ子は否定しないが、他人を不幸にするならば、死よりも重い罰が待っている。

実際、歴代のダンタリアン家の中にもバカな真似をして、結構悲惨な姿で罰られただそうだ。半分は脅かしだけど。




月日は流れ、王は侵略戦争を引き起こした。原因が主に王国をもっともっと豊富にしたいらしいが、ダンタリアンは、「どうせどっかの可愛い娘に振られてウサ晴らしだろうよ」と、ウンザリした顔で妻に愚痴った。妻も、「賭けモノにもなれないね、旦那さま」と、疲れ気味で答えた。


かくして、アンテノーラ王国は滅びかけた。

正確には、喧嘩を売ったカイナ王国軍にボコボコされの惨敗。

更に軍を率いていた駄国王は、カイナ王国軍の将軍に捕まったのだ。

莫大な身代金を支払えば、国王は解放されると、元々戦争なんて望まなかったカイナ国王が申し出をくれた。

だが、その時、アンテノーラ王国は不作続きの、とても不運な時期だった。民が飢えてないだけで、設けるモノ一つもなく、言わばプラマイゼロ。戦争の結果に加えて、本当に滅びを待つ哀れな集団だった。


あまりにも悲惨な国をみて、アンテノーラ王国の為にも、カイナは決断した。

王一人の首で、全てを終わらせる、と。王家も家臣も、見逃してやる。

拒否する人、一人もいなかった。駄王派の貴族たちは反対したいに違いないけど、結局自分が可愛いから手の平を返すようで、沈黙を選んだ。


駄王は処刑さてた。後世において遥か海の向こうまで末永く語り継がれる王の代表として、彼は世界史にその名を刻むこととなる。


それでも、やはり権力者狩りはあった。早速浮かんだのは、王宮を出入りの数が多いのダンタリアン家だった。しかし、カイナ国王は彼らの事を知っていた。戦争前、いくつかのダンタリアンの一族はカイナに留学した事があった。全員が真面目で優秀な子って訳じゃなかったが、みんなは同じ事を言っていた。


「少しでもこの国の良さを知り、学んで、祖国に活かす!」


実際、大きな問題を起こす事なく、その一族は戦争が始まった少し前に、カイナ王の元を訪れ、祖国の状況を細かく伝えた。自分たちが人質で構わないから、民を出来る限り犠牲にならないように、王を説得し、潰すなら、王さまや低脳な部下だけにして下さい、と。


先王やその駄目家臣たちが処刑されて国が一大事の時、ダンタリアン公爵は全民に守られたのだ。

この方たちは違うって。殺すなら我々も一緒に死ぬとまで、正直結重いけど、めっちゃ想われた。

別に、見返りとか考えてなかったのだ。それでも、民には救いに違いなかった。だからダンタリアン一族は決めた。


『余裕を楽しもう。他人を助けながら』


なんでオレはこんな事を話してるかって?

そりゃ、これから話すのが、その一族の長女として生を受けたオレの日常だから。


ぶっちゃけ、アンテノーラに起きる面倒・・・基。ふかーい事情や事件の記録だ。

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