第4話

ダンタリアン家はいわゆる「王家の手綱を握った管理者」である。

ダンタリアンの力はあまりにも大きい。たまに、我々を警戒し、敵対する貴族や王家が異を唱えるけど、オレたち一家はこの国とある契約を交わした。


サンガス契約。簡単にいうと、血の契約かな?裏切ったら二度のチャンスなんて皆無な死。

歴史上、この契約に縛られた貴族なんてオレたちだけかも。

しかしながら、契約していたのは「国」。決して「個人」ではない。

つまり、法律上の罪を犯したら、王家でも例外ではない。実際、何代も前のダンタリアン家の当主は王子の一人を処断した話があったぐらいだ。何年か前も前国王の弟もおじい様にボロカスされたのを目撃した。うん。オレもその場にいた。っていうか、あの一家と使用人共の破滅の引き金かも。


今年の秋、学園の最終、つまり合格試験がある。弟はその後もう学校へ来なくなるだろう。当主の本格的な修業のために。それと同時に、イスラ嬢もここに住めるようになる。


ー イスラ嬢、驚くかな・・・


イスラ・ベルトシンガー。ダンタリアン家の分家の分家(ぶっちゃけ、もう血の繋がりはこれっぽちもない)だったベルトシンガー家の長女。五歳の時からニースの婚約して、オレとも仲良しな少女だ。

将来、ダンタリアン夫人たる女性、まだ遊びたい年頃なのに、オレたちの仕事と関わろうとする所から、オレたち家族や使用人たちの評価はとても高い。


イスラはいい子だけど、彼女の尊敬の眼差しはいつも眩しすぎて、照れるわい!

まぁ、原因はオレ自身だけどね。自業自得、うん。


事の始まりは、数年前だった。

イスラはダンタリアン家の長男の婚約者として、学校でかなり嫌がらせを受けた。

大人しい子だから、

あの頃、学校や家の跡継ぎの教育のためにニースは本当に余裕がなくて、見捨てるこそはしてないが、あんまり役に立たなかった。そこで、姉であるオレに頼んだのだった。影からでも構わない、彼女を守って欲しいって。学校こそ卒業したが、色んな事で正直オレも余裕がなかったけど、困った女性を見たら通り過ぎないというモットーの元で、その願いを受け取った。動きやすさのために、父の部下を数人借りた。


図書室の本を調べたい、必要な本や教科書を寄付したい、と、表向きに学園側に伝えたら、出入り許可は降りた。オレは図書室で待機し、ケルビナや使用人たちは観察に移った。一日で色々分かったけど、実際イスラ嬢が受けた嫌がらせはマジでムカつくだった。

そして、暗黙の了解で、学生同士の問題は自力で何とかせねば。教師が動くのは、結構遅い。まぁ、とにかく、キレたオレは、犯人たちに征伐を下った。


なんでオレはそんな権限持ってるのかって?

コレは、ダンタリアン家に生まれた者の使命であり、呪いだ。


駄王が処刑された後、カイナ帝国と新しい王家、そして公爵家はある掟を作った。

それ以来、我々はアンテノーラ国の守護者であり、影の処刑人だ。

王家、貴族、司教、聖騎士、聖女。法を犯したモノは排除する。表では「病死」になったのが多かったな。我々ダンタリアン家の言葉だから信用度が高かった。


ちなみに、将来家を継ぐのは弟で、オレは言わば「裏」、「影」の仕事を受ける身。

優秀な人なら両方同時にやってるけど、ニスには立派な医師になりたいからね。オレも、家族も。



人が近づけないように、ケルビナたちの手を借りて、アンドロマリウスにも声を掛けた。まず、黒幕的である令嬢は、みぞおちにクリーンヒットし、そして、肩の関節を脱臼した。無理矢理に。ん?酷すぎないかって?いやいや、オレはただ自分の信念を貫いただけだぞ?真の男女同権主義者たるもの、女子供にも容赦はせん!腐った根性なら叩きのめしのみ!どうせ顔は傷つかないし、その後すぐ肩を元に戻したし。最も苦しい方法でだけどね。敵にまで情けを書けるなんて、オレは優しいですよ~?ウェヒヒヒ・・・。


そのあと、何だっけ?彼女の信者共には、確か・・・金玉潰し刑だったね。でも、まず汚い言葉を吐いた二人には、口の拳をめり込んで、前歯を全部砕いた。いやー、痛かったな、手が。だからその後股間にマジ蹴りを贈っただけで済んだ。アイツらその後我が家の歯治療を材料として使わせて貰った。付け歯は未だにお世話になってるらしい。


そのあとはすこーし面倒だったけど、証拠あった上で、アホ共は男爵家だから、寧ろ実家がまともだったから、全員の親は土下座祭りだったな・・・幸い、問題を起こした連中は次女、次男三男ばっかりだから、実家が潰されずに済んだ。でも、当人たちは勘当され、今はアンドロマリウス家の管理に入れられた。何に使うかは知らないけど、ハニートラップとかは無理かな?顔は普通の上に、頭悪そうだし。最悪、豚の餌かもね。


あっちの「餌」の意味で。


その後、ニスはうちの家業を話したらしい。んで、それからよね、イスラ嬢がオレを慕ったのは。


今回は、多分、身近に経験するかも。気を引き締めてやらねーとな・・・。

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大公爵の令嬢はぐっすり眠りたい Kou @Noirciel

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