暗闇に蠢く怪人を、魔法装束に身を包み、魔法杖で倒すのが、魔法少女の、毎夜の、そしてこれからも続く毎日の宿命……のはずだった。
先代の魔法少女から、その座を譲られ、夜毎に悪を滅していた主人公。それは、先代の意志を継いだものだった。
先代に託されたことで、必死にがんばる主人公。しかし、その反動は、日常生活に影響を及ぼしていて……。それが元になり、通う学校では標的にされていた。
その攻撃が執拗性を増していく。そこに大きな衝撃が! そして、彼女のこころが……折られた。
これは、とても残酷でダークな哀しい物語。
そこに、この世界の救いと自らの赦しを求めるのは間違いだったと、あなたは言われるかもしれない……。
でも……。
夜は、ファンシーな格好で人々を怪人から守る魔法少女。
昼は、荒んだ身なりのいじめを受けている女子中学生。
それが四方山もえぎの日常だった。
昼の自分を犠牲にして、魔法少女としての活動に心血を注ぐもえぎ。
これも全て、人々を邪悪から守るため。
しかし、学校の同級生はそんなこともつゆ知らず、もえぎへの嫌がらせを続けていた。
タチが悪くも浅はかないじめを、内心で一蹴していたもえぎだったが――。
ファンタジックできらびやかな展開を期待させる導入に反して繰り広げられる、薄暗く荒んだ日常が、淡々と、けれど、ひたひたと沁みる文章で描かれています。
そしてさりげない伏線もまた見事でした。
優しく温かい家族を唯一の心の支えに、使命を果たさんと奮闘する魔法少女に訪れる運命を、是非ご覧ください。