第7話 小さな子

少女は思い出したように走り出す

「早くいかないと授業が始まる!?」


僕たちはつい話し込んでしまい急いで教室に駆け込んだ



教室の中には小さな女の子がいた

小学生?


服装はまるで教師の服装・・・

小学生が教師のコスプレか?


少女が口を開く

「先生おはよう」


え・・・

この小さな子に少女は話しかけた


この子が先生?

そんなことってあるのか?


小さな女の子が口を開く

「ぎりぎりだぞ」

かわいい高めの声で怒り出した


少女は少しニヤッとしながらはーいといっていた

僕も頭を少し下げた


次は机といすが用意されている


少女は小声で僕に話す

「机といすはゼロリングで転送して私が出すね

転送したいものをイメージしてリングを右に回せば転送可能なものなら転送したいところに表示される

授業で使うモニター画面表示方法も同じでイメージしてリングを右に回したらできる

転送したものを戻すときは左に回してって感じにする

ゼロリングをあなたも手にしたらつかってみて」


そういわれて僕はうなずく

机といすをイメージしてゼロリングを右に回している様子の少女


机といすが本当にさっと転送されてきた

僕はゆっくり席に着く


僕が彼女と出会ってまだ1時間程度しかたっていないが

あまりのこの世界の違いに圧倒されて少女の名前すら聞きそびれている


頭がついていかず僕は

はあ、と少しため息をついた


すると隣の席の同級生くらいの男が僕をにらむ

「なにやってんだ白石

ゼロリング忘れたのかよ」


僕の名前を何で知っているんだ?

「・・・」

なんといえばいいかわからず黙ってしまう


あきれたように彼は前を向いた

僕も不思議だったが先生といわれていた小さな少女の方に顔を向けた


授業が始まったようだ

本当にあの小さな少女が授業をしている

内容ははっきりとわからないが数学の授業だった


周りの人の授業の受け方は

ゼロリングからモニターを表示して宙に画面をいくつもつくり

教材の資料を見ることに活用している

画面の1つを自分の手元に表示させて

転送させたタッチペンを使用しながらノート代わりにしている


授業が終了したようだ

僕は転送した机やいすなどを元に戻す


何度かまた移動をして授業をいくつか受け昼休みにはいった


少女が声をかけてきた


「色々質問したいことあると思うけどとりあえずゼロリングからモニターを表示してあなたの世界のスマホで買い物するイメージで昼食を選んで完了が表示されたら

転送できるようになっているの

あなたの分は今日は私がおごるね


ふたを開けたら返品はできないからね

ごみを捨てたいときは捨てたいものをイメージしてリングを左に回しながら戻せばごみ処理所に転送されるから捨てたいときはいって

家に転送させたいなら家にをイメージしてリングを左に回せば転送される

転送できない場所もあるからその時は拒否されてものは転送されずに同じ場所から移動しない


プライバシーのあるものは勝手に転送できない

例えば他の人の家なんかには許可なしではものを転送できない

人のものを転送するときは相手の承諾を得なければいけない


買って使用したらお店に物を転送することもできない

使用後も返却可能なものもある、その時はお店に物を転送して返却できる


学校内にあるものは学校内でしか転送できない


って感じで色々転送規約みたいなのがある

違反なんてできないけど知っておかないと困ることも出てくると思う」


僕はようやく聞きたいことを口にした

「転送規約か、そもそも君は何でそんなにこの世界のことに詳しいの?

パラレルワールドは同じ場所には来れないって言ったよね?

僕がここに来た時に一緒に移動してきたんだよね?

一度も来たことがないはずのこのパラレルワールドのことをなぜこんなに詳しく知っているの?


それに僕はまだ君の名前すらまだ聞いていない」


少女は少し笑っている

「メインワールドの猫さんと契約したって話は覚えてる?」


僕はうなずく


少女は続ける

「メインワールドの猫さんと契約したら

移動先のパラレルワールドの情報をその世界の最低限の情報がノウハウとして猫さんから提供されるの、勝手に頭に情報が転送されるイメージ

そのパラレルワールドで生活できるように対応されている


でも私に連れてこられた白石かいくん、あなたには転送されていないから私が説明しなきゃいけないってこと


ちなみにいうと

パラレルワールドにはあなたという存在が元からいたのに

私があなたを連れてきたことでこのパラレルワールドに元からいたあなたと一体化している、体はこの世界のあなただけど心は元の世界のあなた

このパラレルワールドに元からいた穴との心は今のあなたの心の底にひっそり生きている


もう一人のあなたが眠っているってこと


私の名前は

城崎雪{しろさきゆき}

最初に名乗るべきだったね」


僕は質問を続ける

「雪さんが色々知っているのはメインワールドの猫さんのノウハウを提供してもらっているってことであってる?


それともう一人の僕は簡単に言えば永遠の眠りに僕のせいでつかせてしまったてことだよね、もう一人の僕の人生を奪ったことになるんだよね?」


雪は答える

「ええ、その通り

私は猫さんのノウハウを分けてもらってる

もちろんしらないこともたくさんあるけどね


もう一人のあなたの人生は奪ったことになるわ、

でももう一人のあなたの心を起こすこともできるの

そうしてしまうと二重人格みたいになってしまうから

大変になる、だから今はその方法は教えない

勝手に起こされても困るからね


でもこのままだと病にかかって元の世界のあなたと同じ人生を歩んでしまう

それを食い止めることはもう一人のあなたを救うことと同じ

もとはといえばあなたなんだから他人ではないの

誰かの人生を奪ったなんて思わないでいいと思う」


やりきれない思いだったが僕はわかったというそぶりでうなずく

僕は悪いことをした気に少しなってしまう

その時僕が元の世界で死にかけていた時に病室で泣いていた小さな女の子が脳裏に浮かんだ・・・

僕は寝ていると聞いていても眠っているようにして実はすでに

起きていないか不安だった

暗闇で困っていないのか・・・


もう一人の僕もあの小さな女の子のように悲しい思いをさせていないか不安だった


「雪さんは僕がこの世界に来る前に病室に来てくれた小さな小学生くらいの女の子を知っている?

雪さんによく似てた」


雪は誰?と言いたげな顔をしていた

「私と似た女の子?わからないかな

私があなたの元の世界であなたと会ったのは猫さんを助けたあなたを見た時と

病室に迎えに行った時の2回だけよ?」


僕は女の子のことを話す

「その子は僕もその時が初対面で、僕が声も出せないくらい動けないときに

目を覚ましたら目の前で泣いていて・・・

僕はあの子に触れられて

また眠りについて目を覚ましたら病が回復に進んでて声が少し出て体が動いたから

両親に感謝の気持ちを伝えることができた

ってきりあの子が不思議な力をもっていて僕を救ってくれたのかななんて思ってしまった


そのあとまた眠りについたら動けなくて僕は死んでしまったみたいだけど・・・

死んだあとは君が僕を迎えに来てくれて体は普通に動いてとても軽かったから雪のおかげで体が回復したのかなって思って、小さな女の子と同じ力もっているのかなとか不思議なこと考えてた・・・


ん、僕は雪が来た時には僕は死んでたの?

そうだとしたらなんで動けたんだ!?」


今更かと言わん顔で雪は説明する

「今気づいたのね(笑)


私が迎えに来たときはあなたはすでに亡くなってた魂だけあの病室にいたの

私はあなたを見ることも触れることも猫さんと契約していたからできたんだけどあなたの元の世界の人には見えもしないし触れることもできない存在になってた


その女の子が力を持っていたかはわからないけど

私はその子のことはしらないかな


でも少し気になるね、あなたも初対面だったのに泣いていて

その子にふれられて死の間際に回復したってのも気になる


あなたの病は途中回復なんてしないはずの病だったから

異例なことが起きただけとは思えない・・・」


少し雪は考え込んでいた


僕はわからないことが多すぎるが

雪といたらあのことも出会える気がしてしまっていた・・・





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白い空 @yurikawa07

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