男子高校生は彼女を作るために奮闘しました。

藍坂イツキ

僕は何が欲しかった?



 何かが欲しかった。

 それは確かだった。


 でも、結局僕が欲しいものが何なのかはよく分かっていない。


 初めて恋心を持ったのは小学六年生の頃。

 良くいじられていた僕はもしかしたらMだったのかもしれない。でも、僕には自覚はない。それに今は女性とする時に自分が主導権を握りたいと思っているし、あくまでもあの頃の僕だけだと思う。


「さあ、問う」


 うん。


「君は何が欲しかった?」


 知らない。

 あの女の子も僕のことをよくいじっていた。

 でも、たまに見せる優しさとその笑顔に僕は惹かれていった。


「じゃあ、欲しいのは優しさ?」


 いや、違う。

 それではないと思う。


「根拠はあるのかい?」


 そんなものはない。

 当時はそうだったかもしれないけど。

 母親から優しくされていたし、幼き弟もいた。むしろ、こちらが優しさを持っていたような気もする。


「じゃあ、違う」


 いや、違うわけでもない。

 信じたくもない心が僕にはあったから、そうは思わない。後ろの正面がそれだと思うけど、この解釈は違うのか。


「へぇ、そう」


 うん、そう。


 じゃあ、僕はなんなんだろう。


「ふぅん、意味わからないね」


 それが心じゃないのか。

 それが僕の——心の壁だ。


「皆には見せたくない」


 うん。

 それがたとえ、愛する彼女だったとしても見せたくはない。


「独占欲」


 そういうわけじゃない。

 知られたくはない。本当のおれを。

 もちろん、君たち観客にも。


「じゃあ書くなよ」


 読まれたくて描いているわけじゃない。

 これは僕の自己満だ。


「それ、言っていいの?」


 良いよ、そうだもん。


「じゃあ、決まり文句は何?」


 それは本音。


「どっちだよ、性根腐った大学生君よ」


 はは。

 で、だから何?


「嘘だね、僕は承認欲求の上で動いてる」


 ふぅん、僕はそう思うんだ? 

 なんで?


「君は書きたかったSFが読まれないことを悟り、ラブコメに転換させた」


 でも、割と評価はされている。


「でも、Youtubeにその小説の未完成版を読むライブ放送をやってくれた方がいて、半分くらい馬鹿にされて悔しかったよね?」


 無論、僕が書いたんだから。

 あれは俺の息子みたいなもんだ。他の作品だって全部。


「へぇ、それだけの愛を持っていても?」


 いいじゃん。


 それで、僕は何が欲しいの。


 二回目の恋は——なに?


 中学二年生だった。一年の時から思っていた女の子、クラスで僕的には一番かわいいと思っていた女の子だ。友達には否定されたし、B級だのなんだの言われたけど、僕から見れば可愛かった。今でもそれは思う。


「付き合った?」


 ああ、告白して。

 もちろん、友達に冷やかされてすぐに破局したけど。


「悔しい?」


 うん、悔しかった。


「何で好きになったの?」


 可愛かった。

 守ってくれそうな気がした。

 笑顔が好きだった。

 字が好きだった。

 根は凄く優しい人だった。


「褒めるじゃん」

 

 心が成長してるからだよ。


「へぇ、そうなんだ」


 笑ってるな。


         ——

 くそったれ、マジタヒね。



 三度目の恋は?


 高校の時、花火大会に一緒に行った女の子。


「好き?」


 好きではなかった。

 みんな誘うから俺も誘って、雰囲気で告白した。


「ダメ男」


 異論はない。

 でも、あとから好きになった。

 彼女の一生懸命なところとか、後に始めた作家活動を悪いとは言わなかった。


「……?」


 嘘。

 言われた。

 別れ様に「きもい」と。


「だよね」


 でも優しかった。

 怒ったりしないし、可愛い。

 アニメも好きだし、否定しない。

 彼女の趣味に凄いとも思った。

 そして、エ□かった。


「気持ち悪い」


 はは。

 その台詞はアスカに言われたいな。


「まごころを君に」


 そう言われてみれば、欲しかったのはまごころかも。


 いや、違うか。


 そんな想いだけじゃ僕は満たされない。


「でも、その子もひどかったね」


 ひどくはない。


 アマチュア作家を馬鹿にするのは、芸人を夢に思う人を馬鹿にするのと一緒だ。ましてはあの頃。対して読まれていない時期だ、仕方がないよ。


「でも、辛かったでしょ?」


 もちろん。

 僕の子供を馬鹿にされたら、親たる僕は怒るだろ。

 いや、怒ったんじゃない。恨んだ。絶望した。

 一回の浮気未遂を許したんだ、そりゃあ思うさ。


「でも、君も悪いよね」


 ああ、勿論。

 僕もひどいことをした。

 裏切ったことはないけど、確かにしていた。


「結局」


 普通に別れた。それだけだ。

 友達には心配されたし、三日三晩何もできなかった。


 希望は絶望の裏側にある。

 事実は虚偽の隣にある。


 真実を知れば辛い。

 虚構に囚われれば楽だった。


「何が欲しかった」


 きっと、承認な気がする。

 彼女からの愛の承認。


「今は何が欲しい」


 分からない。

 全然、分からない。


 僕は、俺は何が欲しい?


 四度目の恋は?


「成功している――――と思う」


 僕もそう思うのか。

 

 でも、彼女はマイペースだ。俺でもゆっくりだと思ってたけどそれよりもだった。


「辛い」


 辛くはある。

 でも、信じてる。

 疑惑は何も生まない。

 疑惑は絶望に変わることを知ったから。


 浮気未遂ね。


 ああ、うん。


「好き?」


 好きだ。


「愛が欲しい?」


 愛が欲しい。


 じゃあ、それじゃない?


 彼女思うに、愛が欲しい。


 僕思うに、愛が欲しい。


 いやちがう。


 これは恋だ。


 愛と何が違う。


 重みが違う。


 じゃあ嫌いなのか?


 大好きだ。


 矛盾が混沌に、混沌が真実に、真実が虚構へと変化する。


「いや、恋じゃない。あれは愛恋だ」


 逆。


「いや、あいごころだ」


 初耳。


 その心、本物?

 嘘は本当、本当は嘘。

 君は私、私は俺、俺は僕。


 一つになりたい。


「心も体も一つになりたい?」


 うん。


「それはとても気持ちのいいこと」


 気持ちいい。


「じゃあ、俺はきっと」


 欲。


「違う」


 もう、うるさいよ。


 なんでもいいよ。

 我思う、故に我あり。

 夢ではない。

 そうおもっているから俺はいる。


 僕はいるんだ。


 それを否定されたくはない。


 だから僕は――――何が、欲しい?


























「正解はそこのあなたが見つけるんだよ?」


 いつまでも受け取る側のあなた方は何が欲しいの?


 WHAT DO YOU WANT?



<あとがき>


 ただの自己満小説です。

 フィクションとノンフィクションが混ざり合っているので誤解だけはしないように。

 

 エヴァに影響されましたね。






 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男子高校生は彼女を作るために奮闘しました。 藍坂イツキ @fanao44131406

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ