最終話 神託と選択
デュラハンナイトだった俺は聖女ジャンヌに討伐されて彼女に憑依した。
しかし、その直後に勇者カインの凶刃に倒れ、彼に憑依転生することになった。
一応、今のステータスを表示しておこう。
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【ステータス】
種族:人間
名前:カイン
Lv:725
HP:15435/15435
MP:13083/13083
スキル:怨讐憑依、鬼火、
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さて、勇者カインとして、聖女ジャンヌの死を他の人々にどう伝えればいいのか悩んでいた。結論としては、元々のカインのプランに乗っかることにした。
領都に戻った俺は、教会の司教に会い、こう言った。
「……申し訳ありません。彼女はデュラハンと刺し違えてしまいました。……僕の力が足りないばかりに……」
本当は俺が憑依する前の勇者カインが殺したんだけど、幸か不幸か俺の言葉を疑う者はいなかった。
司教の人は、むしろこんなことを言いだした。
「代わりの聖女をお供につけますので、しばしお待ちを」
聖女って何人もいるんだね。
「冗談じゃない」って思ったので、当然断った。
「――しばらくは一人でいさせてもらえますか。僕はまだ、誰かを守りながら戦えるほど強くない」
司教は不承不承という感じではあったけど、頷いてくれた。
*
『……勇者カイン、私の声が聴こえますか?』
俺が勇者になってから、一ヶ月ぐらい経った頃だろうか。
突然、高く澄んだ女性の声が頭の中に響いてきた。
……あ、これ知ってる。神託だ。
何を隠そう、カインが勇者になったのも、この神託があったからだ。
教会関係者によれば、この声は女神の言葉だそうだ。
『あなたは遂に、勇者に相応しい心と力を手にするに至りました』
――マジかよ。
こんな聖女殺したサイコ野郎で、殺した相手に憑依されちゃってるような間抜けなやつが勇者でいいのか。
……自分で言ってて悲しくなるが。
残念ながら、神託にツッコミを入れても無意味らしい。
『今のあなたならば、魔王を倒すことができるでしょう。
――さあ、行くのです。この世界の命運はあなたにかかっています』
神託は以上だった。
こうして俺は、この世界の命運を神に託されてしまったのだ。
「んな、無茶な」って思うけど、まあ、勇者なんだし、そういうものなのかな。
魔王についても、ジャンヌとカインの記憶に情報があった。
魔大陸に住む数多の魔物を統べる強大な魔族の王で、人間たちが住む大陸への進出を狙っているらしい。
要は、この世界のラスボスっぽい存在だな。
……強そうだ。
魔王と戦ったとして、いくらこの俺の今のステータスでも、絶対に勝てるとは限らないだろうな。
ジャンヌやカインの記憶によれば、神託と言っても外れることもあるみたいだし。
……あ、でも、負けてもいいのか。
気づいてしまった。俺には〈怨讐憑依〉のスキルがあるから、たとえ負けても魔王に憑依転生できる。
――ってか、勝っちゃったらスキル取れないし、むしろ、負けた方が美味しいな。
勇者はもう体験したし、次は魔王になってみるのも面白そうだ。
まあ、戦ってみて、雑魚だったら倒せばいいし、駄目だったら殺されればいいかな。
憑依転生〜最弱のゴースト、最強へ至る〜 卯月 幾哉 @uduki-ikuya
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