あの頃はまだ、小さく丸かった彼女の背中

　高校二年のある日、転校生がやってきた。

　小さく丸まった背中で、オドオドと自信なさげに視線を彷徨わせる、陰気な少女『長谷川瑠衣(はせがわ　るい)』

　陰鬱な第一印象から、あたし『高嶺麗(たかみね　れい)』は彼女と関わることはないと思っていた。

　その印象通り、人付き合いが極端に苦手な彼女は頼まれたことを断れない性格をしていて。
　それを良いことに、クラスメイトや教師は彼女を都合よく小間使いした挙句、その吃り癖から『カオナシ』などとからかっていた。

　そんなある日、文化祭の催事を決める場で、彼女はクラスのいじめっ子から面白半分でミスコンへの出場を推薦される。

　それまでの経緯をずっと傍観し続けていた、あたしは、いよいよたまらず彼女へ接触する。

「イヤならイヤって言いなよ。したら…続きを読む