第4話 スキル調教発動

「こでれは依頼達成になりませんね」

 ギルドに戻ってきて、受付嬢の第一声がこれである。


「えーと、バジリスクは倒したんですが……」

「モンスターを倒したら、核となっている魔石を持ってきていただかないと」


 モンスター討伐クエストでは、倒した証拠となる魔石を持ってきて鑑定するなど、討伐した証拠が確認されてクエストクリアとなり報酬を受け取れるそうだ。

 他にも、希少部位や高価なアイデムなどが有れば、買い取ってもらいお金を受け取れるとの事だ。

 しかし今回は、あいちゃんの魔法で全て溶けて消えてしまったので、討伐した証拠が何もない。

 オレ達は報酬を貰えず途方に暮れていた。



「助けた商人から貰ったお礼が有るから、今夜の宿代と食事代くらいは大丈夫かな?」

「つかれたー 早く宿屋に行こうよぉ」

「誰のせいで疲れる事になってると思ってんだよ、やっぱアタシが討伐すれば良かった」

 今日は色々あって疲れたから、早く宿屋でゆっくりしたい。



「この金額だと一部屋しか貸せないねえ」

 食事代を抜いた額を提示したら、宿屋のオッサンの返答がこうである。

 ボッタくっているのか?


「もう疲れたから一部屋で良いよ」

「うちは、はるっちと一緒に寝る!」

 咲とあいちゃんは最初から一部屋のつもりらしい。

 もう金も少ないので一部屋に決める事にした。



 疲れた――――

 今日は色々あったからな……

 明日からどうしようか。

 とりあえず、はぐれてしまった仲間を探さないと。

 咲やあいちゃんが超強いから、コツさえ掴めば簡単にクエストクリアできそうだけど。

 彼女らの強さは、元の世界での伝説の鬼の転生者という事から、転移したこの世界では本来の鬼の呪力がステータスに乗って強化される事で、凄い強さになっているのだと思う。

 そう、栞子さんを除く七人の女子は、元の世界で鬼の末裔と呼ばれていた。

 その事は、また別の物語になるのだが、今回はこの世界に転移したとしても、他の人も咲やあいちゃんのように強力な力が有れば安心できる。

 そう考えると、オレと同じ普通の人の栞子さんが心配だ。

 彼女もオレと同じように低ステータスだったとしたら、この世界で大変な思いをしていそうだ。


 しかし、部屋の中は狭くてベッドも一つしかなかった。

 これに三人で寝るのか?



「つかれた~」

 あいちゃんがベッドに飛び込んで占領してしまう。

「おい、一人で大部分使うな」

 咲ともめてる。


「そうだ! オレのスキル調教を、試しに使ってみようかな?」

 まだ、どんなスキルなのか分からないから、どういうものなのか調べてよみようかな。


「ちょーっと待て! 絶対、ろくな事にならないから止めろ」

 咲が必死に止めて来る。

「でも、どんなスキルか分からないし……」

「大体わかるだろ! 絶対エッチなやつだ!」


 咲は自分がエッチな調教されるのではないかと警戒しているようだ。

 でも、弱キャラのオレの数少ないスキルだし、役に立つかどうか調べてみたい。


「はるっち、うちになら使っても良いよぉ」

 あいちゃんがベッドに寝転がったまま、さあどうぞとばかりに両手を広げた。


「ちょっと待て、あいに使うのならアタシに使え!」

「ええっ、さっきは使うなって言ってたのに」

「うううっ…… あいを調教するくらいなら……アタシをして欲しいというか…… とにかく、アタシにしろ!」


 咲をベッドに寝かして、スキル発動の体勢に入る。

「咲、本当に良いの?」

「はぁ、もう良いから早くしろよ…… なんでアタシがこんな事に……」


「よし、スキル調教!」

 オレの手からボヤーっと光が出る。

 なんかショボそうだ……

 そのまま咲のお腹の上に手を乗せる。


「うっ、ううっ、はぁぁぁ……」

「大丈夫?」

「いいから、続けろよ……」

 なんだか辛そうに見えるけど……


「うっ、うわっ、はぁぐっ、んんんんんっ――――」

 咲は体をビクビクさせて耐えているように見える。

「ぐぐぐっ……あっ、もうダメぇぇぇぇぇーあぁぁぁぁぁーっ!」

 ビックンビックンと体を仰け反らせてから、脱力したように倒れこんでしまった。


「咲、どう? 大丈夫なの?」

「ううっ、最悪……」


 何か効果が有ったのだろうか? 咲が涙目になって拗ねてしまっただけのような?


「ねえ、はるっち、うちにも同じのやってよ」

 あいちゃんが、興味津々きょうみしんしんで迫ってくる。


「あれ、このスキルって、一度使うと暫くは使えなくなるみたい。何日かして回復したら使えそうだ」

「ええっー ずるいずるい」

 あいちゃんまで拗ねてしまった。



「あああぁぁぁ!」

 突然、ぐったりして横になっていた咲が大声を上げたのでびっくりした。


「アタシのスキルが上がってる!」

「えっ、どういう事?」

「スキルレベルは上限が10だったのに、上限解除されて全部11になってる」


 スキル:神速剣Lv.11 魔法剣Lv.11 次元斬Lv.11 無限斬Lv.11


 ステータスを確認すると、スキルレベルが軒並み上昇している。


「これって、ハルのスキルのせいなのか? これ、ハルが居ればどんどん強くなるかも!」

 スキル調教の効果で、スキルを上昇もしくは上限解放する事が出来るのか?

 これって、実は凄い事なのでは?

 レベルカンストした最上位クラスの人を、更にステータス上昇させて強くできるって事だよな。


「あっ、でも、これは二人っきりの時にやった方が良いかも……」

「えっ、何で?」

「何でじゃねーよ! もう、ハルのバカ! ごにょごにょ…………」


 咲もあいちゃんも拗ねてしまったので、今日は寝る事にした――――





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る