【ネモフィラの花言葉は】

そうして私はMM地区を見下ろす高台、みなとの見える丘公園へと降り立つ。

そこに、“あなた”は居た。全てが手遅れになる前に辿り着いた。

何かを呟いていた様に見えたので、ひとまず返事だけはしておいたけど大丈夫だっただろうか。

過剰なエフェクトの使用によって暴走状態となった“あなた”はしかし、どうしてか驚いた表情で私を見た。

「助けに来たよ」

私の言葉に“あなた”は苦しそうに首を振った。

でも、関係ない。

「世界のみんなが許さなくても……ううん、“あなた”自身が許さなくたって!」

そう──

「……私が“あなたを許す”よ」

「だって、あなたが私にそうしてくれたから。私がやりたいことをしていいって言ってくれたから!」

そう言って私は微笑んで手を差し出した。……笑えていた筈だ。じゃなければあなたに届かないかもしれないから。


──“あの時”と、何もかも逆だね。


降りしきるネモフィラの花弁の中で、あなたは悩んだあと、でもそっと私の手を取った。

目から涙が溢れてきた。でもきっと、この海が全てを隠してくれただろう。


「私、ただ綺麗なだけの存在じゃなくて良かった。だって、今この時あなたの傍に来れたから」

「私──あなたの傍に居たい。2人で、もっと美しい世界の果てを見てみたい。苦しい時には一緒に乗り越えたい」

「それが……今の私の願い!」


まだ、何も終わっていない。

でも私達なら大丈夫。

──帰ろう、みんなとMM地区支部へ。


end.

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エレウシスの秘儀SS @kei_munakabe

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