エピローグ

 あれから約一週間経った。

 オレは件の本を返しに第一図書室のトビラを開けた。

「あ、ベルリッツ先生」

 ジャス・ラピスラズリが貸出カウンターの席に座っていた。

「キミ、図書委員だったのか」

「そうですよ。だから、あのとき本を一緒に運んだんじゃないですか」

 オレの驚きに、ジャスは不満そうに答える。

 図書室にはオレたちをのぞいて誰もいない。一週間前、聞けなかった疑問を聞く良いチャンスを得た。

「なあ、ジャス? ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「答えられる範囲なら、いいですよ」

 ジャスの言葉に、オレは遠慮なく、

「一つ目。ヒーラー・プラチナの指輪はどうなった?」

 と聞いた。

「ちゃんと、長に献上しましたよ。ご心配なく」

 涼しい顔でジャスは答える。

 オレは二つ目の質問をするために深呼吸をした。

「二つ目。これが一番聞きたいことなんだが、ウィズとキミと、ブラックスターの関係は一体何なんだ? やけに親しげな感じだったが」

 オレの質問を聞いたジャスは豆鉄砲を食らった鳩のような顔をした。

「それを聞きますか……」

 ジャスは頭を掻くと、

「ボクら双子も、『元人間』の常闇族です。そして、人間だった頃、ボクらは兄妹でした」

 ジャスはオレが返した本の事務処理を行い始めた。

「は? でも、ウィズは姉はいない、って言っていたぞ?」

「ボクらには姉はいませんが、妹は二人いました。あと弟。これで満足でしょう! この話はこれでおしまいです!」

 ジャスはそれだけ言うと、事務的にオレの図書貸出カードを押しつけ、図書室から追い出された。

 オレは納得できるような、出来ないような、モヤモヤ感が残った。

 一体、どういうことなんだ?

 ジャスからはこれ以上何も聞き出せそうにないし、この分だと、ウィズにも話を聞けそうにない。

 またブラックスターがオレの前に現れることを願った。

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今日は明日の物語 端音まひろ @lapis_lazuli

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