屋根裏の増浦さん

あーく

屋根裏の増浦さん

外では雨がザーザー降っている。


窓にはぽつぽつと水滴が垂れている。


父は仕事で、母は買い物に行っている。


僕は暇で暇でしょうがない。


あまりにも暇なので二階に向かって叫んだ。


「おーい!増浦ますうらさーん!」


名前を呼ぶと屋根裏でバタバタと音がしたが、しばらくすると音が止んだ。


――もう一度呼んでみるか。


増浦ますうらさーん!」


『はーい!』


すると、慌てた様子で増浦さんが二階から降りてきた。


『呼んだ?』


「こんにちは、あれ?しばらく見ないうちに痩せたんじゃない?」


『うん。僕も屋根裏に長く住んでるから、だんだん食べるものが少なくなってきてさぁ。』


「でも、元気そうでよかった。まだ朝ごはん食べてないでしょ?ちょっと待ってね。冷蔵庫見てくるから。」


『冷蔵庫!?僕にも見せて!』


「君は駄目だ。」


僕は立ち上がると、ガサゴソと冷蔵庫の中をあさった。


「確かこの辺に――あった。ほら、チーズ」


僕はチーズを1ピース取り出し、増浦さんに差し出した。


『わぁ!おいしそう!いただきまーす!』


「どう?おいしい?」


『うん!』


増浦さんはむさぼるようにチーズを食べた。


「ハムとかソーセージもあるけどいる?」


『それはいいや。』


「そっか。」


増浦さんはチーズを食べて満足そうな顔をしている。


『それにしても、僕なんかがここにいていいのかい?』


「もちろん。増岡さんは僕の友達だ。追い出したりなんてしないよ。

僕が守って見せる。」


『ありがとう!うれしい!』


その時だった。


買い物から帰ってきた母の声がした。


「ただいまー。帰ったわよ――」


「まずい!見つかっちゃう!」


「キャー!!何してるのあなた!早く追い出して!」


「母さん!待ってよ!増浦さんは僕の友達なんだ!追い出すことなんてできないよ!」


「友達ってあなた!何を言ってるの!確かキッチンに――」


母はキッチンに向かった。


きっと増浦さんを追い出す武器を取りに行ったに違いない。


増浦さんを追い出すなんて――


せっかく友達でいられたのに――


あれこれ考えているうちに加藤さんが部屋に入ってきた。


「まずい!加藤さんだ!」


加藤さんは増浦さんをにらみつけたまま動かない。


増浦さんも蛇ににらまれた蛙のように動かない。


『助けて!』


そして――


加藤さんは増浦さんを頭から噛みついた。


「加藤さん!駄目だ!」


加藤さんの口から増浦さんの臀部でんぶが見えている。


増浦さんは足をじたばたさせている。


加藤さんは長いしっぽを左右に揺らしながら、ニャーと返事した。


「せっかく友達になれたと思ったのに――しょうがない――諦めるか。」


加藤さんはゴロゴロと喉を鳴らし、自慢げに口にくわえた増浦さんを見せつけてくる。


僕はキッチンに向かって叫んだ。


「母さーん!加藤さんが増浦さんを食べちゃったー!」


母から返事が聞こえてきた。


「そうー!もう馬鹿なことはしないでよー!」


「はーい!」


友達を失った僕は階段を上り、自分の部屋へ向かった。


扉を開け、大の字になってゆっくりと寝ころんだ。


外では相変わらず雨がパラパラと降っている。


「暇だなぁ・・・。」


天井を見上げていたそのとき、屋根裏からバタバタと音がした。


「もしかして!」


しばらくすると、ネズミが部屋の中に入ってきた。


『こんにちは!』


「やぁ、こんにちは。次の増浦さん。」

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屋根裏の増浦さん あーく @arcsin1203

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