第18話 成仏
「なるきくん、これで成仏できるよ。」
天使の声とともに、奴の体を無数の光が取り囲む。どうやら僕達は、
真実にたどり着いたようだ。
「本当のことを話してくれてありがとう。これで、天使も成仏できるよ。」
僕はほっとして故郷を後にした。
寺に戻った時にはすっかり日も暮れていた。
「今日は疲れたろう。早く寝なさい。」
住職はいつになく優しかった。
「夜分遅くにすみません。」
耳元で聞こえたその声に、なんだか嫌な予感がした。
「なるきくん、なるきくん。起きてるんでしょ。」
「お前、成仏したんじゃなかったのか。」
天使の霊が戻ってきた。
「いやあ、そのつもりだったんだけど、まだ果たしてないことがあってさ。戻されちゃった。」
霊のくせに、明るく言うな。
「まだ、何かあるの?」
「いえない。」
いま、いえないっていったよね。いえない、いえない、家が無いってことか。
「実家も墓もあるだろ。」
どうやら、僕に言えない内容らしい。
「しばらく、世話になるよ。あ、お茶も食事もいらないから。」
当たり前だ。霊に食わせる食事はねえ。
「どうしたら、成仏するんだ?」
「約束通り、君が立派な僧侶になって成仏させてくれればいいんだよ。」
それから二十年後、小さいながらも僕がある寺の住職につくと、やつは満足したように消えた。
かねのなるき(続) 明日香狂香 @asukakyouka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます