扉を開けると、こじんまりとした、どこか懐かしい香りが漂う雰囲気のいい喫茶店が現れます。
まずは、紅茶を一杯。
仮面をつけた不思議な店主が、今の貴女にぴったりの、心を込めた一杯を提供してくれます。
店主の話に耳を傾けると。
紅茶やコーヒー、ちょっとした甘いお菓子に関わるこぼれ話。
…だけにとどまらず、日々の身体的な疲れをとるための、様々な健康法。
精神的な疲れをとるための、気持ちを回復するアドバイスまで。
店主が繰り広げる幅広い知識は、すべてただひとり、そう、貴女のために。
…なんて、女性なら思わずときめく言葉まで散りばめながら、まるで極上のスパでリラックスしているような、この上ない贅沢な気持ちを味わわせてくれるのです。
あ、リラックスしたいなら、男性もぜひお読みください。
ここに書かれた様々な豆知識、いくつかは私も実践しております。
この作品を読みつつ、美味しい紅茶でも飲みながら、一生懸命になり過ぎてバキバキになった体をほぐしてみてはいかがでしょうか。
店主が丁寧にご案内してくれますよ。
路地裏にひっそりと店を構える喫茶店「雨夜の止まり木」は、目まぐるしい日々に疲れ切った大人の女性を癒す隠れ家。
ミステリアスな雰囲気をまとう店主が雨夜のように、しっとりと、優しくもてなしくれます。
基本的に一話完結の構成になっていて、お話の中には店主こだわりの素敵な紅茶や様々なドリンク、そして道に迷った貴方へ向けたヒントが丁寧に織り交ぜられます。それはきっと癒しだけでなく、読み手に気づきを与えてくれるはずです。
店主の語り口調は決して押しつけがましくなく、静かに心の中に沁み入ります。それはまるで、ゆっくりと丁寧に淹れられた一杯を味わうような心地。
メインは女性向けですが、「最近寝つきが悪い」「仕事の人間関係で悩んでいる」等、現代社会で生きていく中で起こり得る、さまざまな悩みを持つ方に勧めたいお話です。
「他人の理は己を包む霧」
とある作品のこんな一言は、長らく私の規範でした。
好意的に解釈すれば、全て自責で生きる。
悪く言ってしまえば、唯我独尊。
誰かにいただいた言葉も、その時は霧と思い込み、自分の視界を妨げるものだと忌避してきました。
結果として、それほど悪くない、満足できる生き方をしてきた自負もありますが、それは結果論であって、道程のあちこちでいろいろな人に助けられていたことに気付きます。
きっと多くの金言が手のひらから零れ落ちていたのかと、自らの不実を嘆くばかりです。
本作は、現代に生きる我々に対し普遍的な「気付き」を与えてくれます。
「教え」や「助言」とも言えるかもしれませんが、その示唆を自分のものにできるか否かは、自らの「気付き」以外はありません。
もちろん、本作の全てが万人にとって有益であるか、読むことに費やした時間の対価になるかは分かりません。
ただ思うのです。
その時には分からない言葉も、おせっかいに聞こえる声も、今だからこそ理解でき、ここに辿り着いたからこそ沁みる助言であったと。
悩める人も、常勝街道まっしぐらの人も、いつかどこかで、そして何度でも頼りになる「人生の歩き方」
私にとっても本作はそんな「一冊」になりました。