第3話
待ちに待った、お茶会の日。
私は計画を実行に移すことにした。
そのため、お茶会の時間に合わせて魔王城に向かうことにしたわ。
「お母様、行って参ります」
「ええ。いってらっしゃ……コホ……」
「お母様? 大丈夫⁉」
「ご、ごめんなさい。ただの風邪だから、大丈夫…ゴホッ」
その後、お母様は激しく咳き込んで倒れてしまった。大変。早くお医者様を呼ばないと!
「誰か! お医者様を呼んで! 急いで‼」
お医者様を手配している間、お父様にお母様のことと、魔王様に今日のお茶会を延期してもらうように伝えるため、私は魔王城へと向かった。
魔王城の王の間にて。お母様が倒れたことを報告した途端、お父様の顔の色が変わった。お父様のお顔が真っ青になってしまっているわ。
「何だと⁉」
「それは大変だ。お前は奥方の傍についてやれ」
「しかし……」
「案ずるな。お前が暫く奥方の所にいても支障はない。お前が鍛えた部下達が仕事を回すだろう」
「魔王様、ありがとうございます。では!」
お父様が慌てて走って行く。
「今日は、お前も帰って母の傍についてやるといい」
私も父についていくため、一つ頷くと魔王様に告げる。
「寛大な御心遣いを戴き、感謝申し上げます。慌ただしくて申し訳ありませんが、私も失礼いたします」
礼をした後で王の間を飛び出した。早くお父様に追いつかなければ!
お茶会は、私達に配慮してくれた魔王様の希望で、お母様が倒れてから一週間後に行われることに決まった。
お母様は、お医者様から「少し重たい風邪なので安静にしているように」と言われたけれど、命に別状はなくて本当にほっとしたわ。お父様は「完治するまでは家にいるつもりだ」と言っていた。お父様ではないとできない仕事は部下が家まで持ってくるみたい。
「お父様は、お母様のことが大好きだから、仕方がないわね」
少し、憧れてしまう。私も魔王様と……。
一週間後の、お茶会の日。
やっと計画を実行に移せるのね。
「シェリー嬢」
魔王城の庭園に繋がる道の途中で近衛隊長様に声をかけられた。
「御機嫌よう。近衛隊の皆様。今日のお茶会で魔王様に召し上がっていただきたくてクッキーを作ったのだけれど、生地が余ってしまったから皆様にも作ったの。よかったら召し上がっていただけますか?」
「ありがとう。後で戴こう」
「魔王様には内緒ですよ? 今食べれば分からないわ」
「職務中だから、私は後で戴く。貴殿達は一刻もしたら交代だろう? せっかく貰ったのだから、食べるといい」
近衛隊の皆様は、嬉しそうに私が作ったクッキーを食べている。隊長だけは食べなかったけれど。まぁいいわ。
「ふむ。美味いな」
「お口に合ったようで良かったですわ」
近衛隊の皆様にあげたものと違う、魔王様だけに作った特別なクッキーを魔王様が美味しそうに食べている。味をしっかりと整えておいて良かったわ。
近衛隊の皆様は私達から少し離れたところで私達を守っている。
「君の母君の具合は大丈夫なのか?」
「ええ。まだ安静にする必要はありますが、大分良くなりましたわ」
「そうか。それは良かった」
魔王様に気にかけてもらえるなんて、お母様は幸せ者ね。少しだけ妬けちゃうわ。
「それにしても、この紅茶も美味い」
「ええ、良い茶葉が手に入りましたの」
少しだけ嘘をつく。良い茶葉が手に入ったのは本当だけれど、少しブレンドしているの。魔王様、ごめんなさい。これは大切なことなのよ。
「む? 何やら近衛隊が騒がしいようだ。一体何が……!」
近衛隊の様子を見るために立ち上がろうとして膝をつく魔王様。良かったわ。ちゃんと効いてくれたみたい。
「こ、これは……⁉」
流石、魔王様ね。彼らの数百倍の濃度かつ遅延効果もない毒入りクッキーと紅茶なのに、彼らよりも後で効き始めるなんて。彼らよりも早く効き始めたら……と懸念していたのだけれど、杞憂だったわね。
「お前達⁉ 魔王様⁉」
「近衛隊長様、少しだけ遅かったですわね」
「シェリー嬢!」
「彼らよりも、ずっと後で効かれても大変だったので、本当に助かりましたわ」
「な、何を……」
まだ気を失わない魔王様、本当に凄いわ!
「では、皆様」
私は魔王様の肩に手を添えると。
「さようなら」
転移魔法を発動したのだった。
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