思わず死にそうになる食レポがここに!

駆け出しのライターである麓郎は原稿を書きあげれば慰労の意味を込めて酒とつまみを買ってきて祝杯を挙げ、仕事でヘマをすれば酒とつまみを買って憂さ晴らしのヤケ酒をする。そしてどちらのケースでも麓郎が利用するコンビニが、クトゥルフお母さんが働くルリエーマート……うーん、既にろくな予感がしない。

この麓郎、毎回イカ焼きや山羊のチーズなど怪しいものを買ってきては食レポをするのだが、ライターを職業にしているだけあって食レポが非常に上手いのである。描写がいちいち丁寧で、コンビニグルメという身近な題材だけあってその味や食感が自然と伝わってきてついつい読んでいるこちらまでお腹が減ってしまう。そしてその巧みな語り口を維持したまま、食後の自身の身体に起きている異変を詳細に伝えて無惨に死んでいく……。例外はない。

毎回とても美味そうな食レポのあとに、神話生物によるグロテスクな人体損壊描写という死にレポが続くせいで、読み終わった後、どんな顔をすればいいのかわからなくなってしまう短編集。

この奇妙な作品に関して言えることは一つ、毎回麓郎にオススメ商品を教えてくれるクトゥルフお母さんが妙に可愛らしいということだけだ。


(「カクヨムで読める冒涜的なクトゥルフ特集」4選/文=柿崎 憲)

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