第9話

「万年くん、また来ちゃったよ。」

高校を卒業して、大学に通うようになっても、大学を卒業して勤めるようになっても、私は週に1回は必ず、万年桜に会いに行っていた。

そして今。

少し離れた所に嫁いでしまったのだけれども、実家に戻るよりもまず先に、万年桜に顔を見せる。

「私、もうすぐお母さんになるんだよ。もう、真っ先に万年くんに報告したくて、来ちゃったんだ。」

私の言葉に反応するかのように、青々と繁った葉が、サワサワと音をたてる。

「それでね、予定日が3月なの!ちょうど、桜の時期だよね、すごい嬉しいんだ。生まれたらすぐ、連れて来るね。満開の桜、この子にも見せてあげてね。あ、それからね・・・・」

万年桜と私の会話は、尽きる事無く続いてゆく。


町の外れの小さな丘の上。

万年桜はそこにいる。

そこで、私を待ってくれている。

それは、私だけが知っている、秘密のお話。

彼と私の、大事な約束。

だから。絶対に。

『誰にも言っちゃダメだよ。』


End

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万年桜と私の秘密 平 遊 @taira_yuu

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