第10話
ひとり部屋に取り残された俺だが。
正直、
心配していた。
メールは跡形もなく消したが。
ミヒロの奴が、俺と関係を持ったことを洗いざらい話してしまう危険性があった。
色々考えていたら、昨夜も一昨日の晩もろくに寝れなかった。
マヒロからの電話着信も、
メールもない。
それが逆に恐ろしかった。
ミヒロから色々聞いたのか、
それとも、何も聞いてないのか。
そんなことを考えてたら気がつけば朝になってた。
「ねむ....」
マヒロと顔を合わせるのが気まずかったが、
俺は高校に赴くことにした。
最寄り駅にて。
いつも乗る電車の時間が迫り来る。
ホームにマヒロの姿を見つけた。
「おはよ、シンジ」
「おはよ、マヒロ」
いつもと変わらない挨拶。だいたい同じ定位置に
二人して並んで山手線の電車を立つ。
「ねぇ」
マヒロが俺の顔を覗き込んで心配そうな表情を浮かべた。
「ん?」
「目のしたのクマ、すごいよ?
どうしたの、シンジ?もしかして、
昨夜、あんまり寝てない?」
「顔色もいつもより悪いよ...?」
俺のささいな変化に気がつくマヒロ。
俺は一昨日、今から思えば。
もっとマヒロのこと、常日頃から注意深く観察していれば、間違いを犯すこともなかったのにな、と心の底から悔やんだ。
「マジでどうしたの?シンジ。
すごい、怖い顔してるけど...今まで見たことないくらい険しい表情だよ...?」
「あのさ」
「ん」
「俺さ。
お前のこと、もっとよく見て、知ろうとするわ。今度はけして、失敗しないように。
よく、観察しようと思う...!」
「?」
マヒロの反応から。
どうも、ミヒロはおねぇちゃんであるマヒロに俺とのこと、何も言わなかったのかもな、と思った。
少し、ホッとした。
「私のこともっと知りたい?ふーん。
そっかぁ...」
マヒロはニヤニヤしてる。
「あのね、今度、イチャイチャするときはさ...。言葉責めとかしてほしい。
あと、ネクタイで手首とか縛ってほしい...」
意外だった。
マヒロ、そんな趣味あったの...!?
てか、そんなプレイをお望みなの!?
「ええ!?」
眠気が一気に吹き飛んだ瞬間だった。
「よろしくね、シンジ!」
「あ、電車きた...!!」
結局、俺は。
マヒロとともに、電車に乗り込んだはいいけど。
車内で、
がたん、ごとん、と。
心地よく身体が揺さぶられたせいか。
ふっとんだはずの睡魔がまた襲ってきて。
俺はマヒロの肩に寄りかかって寝てしまい。
山手線を3周もすることになったのでした。
もちろん。
二人して学校には遅刻したけど。
いつも通り。
仲良く恋人繋ぎをして。
校舎のなかを悠々と歩いて。
俺は二年一組。そして、マヒロは二組。
それぞれの教室のちょうど中間地点にあたる廊下の隅で。
「じゃあまた、放課後ね。
校門のところで、いつもの時間に」
と約束して別れたのでした。
妹のミヒロと。
いっ時でも深い関係になってしまったが。
俺たちの関係に、亀裂が入らなくて
本当に良かったと思ってる。
何だかんだ言って。
ミヒロは黙っていてくれた訳だし。
メールだけで。それ以上は何もしなかった
みたいだから。
お姉ちゃん想いの優しい妹なんじゃないか?って。そんな、ことを考えながら俺は授業中の教室に入ったんだけど。
時刻は三時間目開始時刻を大幅に過ぎてて。数学の先生に
「遅刻しやがって...!廊下に立ってろ...!」
って怒鳴られて廊下に出たんだけど。
教室を出たら
マヒロも廊下に立ってた。
「あはは。古文の先生に廊下に立ってろって
言われちゃった...!」
お互い小声でそうやり取りし。
ふふっと苦笑してみせた。
お互い先生に怒られたんだけど。
妙におかしくて。
楽しくて。
マヒロと一緒に廊下に立つのも
悪くないな...と思ったのでした。
幼馴染(俺の彼女)の妹に俺が(寝取られる)NTRされるという由々しき事態に見舞われた汗汗。 雲川はるさめ @yukibounokeitai
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