第15話:目には目を歯には歯を、殺意には殺意を

「ノーマンは家臣達を率いて国境線に侵攻してください。

 必要ならバニングス王国を攻め取ります」


 私はノーマンに言い放つと急いでオーウェンの救出に向かいました。

 レジナルド、グロリア、ヘーゼルはピーター国王に殺された事にしましょう。

 私が、サヴィル公爵家が、バニングス王国に攻め込む大義名分になります。

 私にはバニングス王家の血は流れていませんが、幸か不幸かオーウェンにはバニングス王家の血が流れています。


 オーウェンをサヴィル公爵家の当主にするのなら、ナサニエル国王とメクスバラ王国首脳陣の許可が必要になります。

 内乱を覚悟するのでなければ、どうしても彼らの顔色をうかがう必要があります。

 ですがバニングス王国の国王に擁立するのなら、誰憚る事もありません。

 ピーター国王やバニングス王国首脳陣をぶち殺す気でいるのですから、他の連中も文句を言うのならぶち殺すのみです。


「オーウェン、大丈夫だった。

 お姉ちゃんが助けに来たからもう大丈夫だよ」


「お姉ちゃん、ヒルダお姉ちゃん、怖かったよぉお。

 父上も母上もヘーゼルお姉様も僕を助けてくれないの。

 それどころか母上もヘーゼルお姉様も僕と父上の事を……

 うぇえええええん、怖かったよぉおおおお」


 オーウェンもグロリアとヘーゼルが自分を殺そうとしている事に気がついていたのですね、不憫な子です、でも大丈夫、私がついていますからね。


「もう大丈夫ですよ、安心しなさい。

 父上と母上とヘーゼルはピーター国王に殺されてしまいました。

 ですがもう大丈夫、私がピーター国王は私が殺してあげましたからね。

 これからは私がずっと側にいてあげますから、もう何の心配もいりませんよ」


「ほんとう、本当にずっと側にいてくれるの」


「本当ですよ、ずっと側にいてあげますよ、だから安心するのです。

 ただピーター国王を殺してしまいましたから、その責任を私とオーウェンがとらなければ、多くの国民が困ることになります。

 私が側にいて手伝ってあげますから、オーウェンが王になるのですよ」


「僕が、僕がこの国の国王になるの。

 そんなの無理だぞ、僕はそんな事やりたくないよ、お姉ちゃんがやってよ」


「可哀想だけれど、表向きだけはオーウェンにやってもらわなければいけません。

 私にはバニングス王家の血が流れていませんから。

 ですが大丈夫、私が側にいて裏で全部やってあげます」


「ほんとう、本当に全部お姉ちゃんがやってくれるの。

 でもそれではお姉ちゃんが大変なのではありませんか」


「大丈夫ですよ、直ぐにノーマンが手伝いに来てくれますから」


「……僕、ノーマン第三王子殿下の事は嫌い」


 まあ、まあ、まあ、可愛い嫉妬をしてくれるのですね。

 オーウェンが一人前になるまで、信頼できる家臣団が形成されるまでは、私が助けてあげなければいけませんね。

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婚約破棄には婚約破棄を 克全 @dokatu

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