第3話 酒の席の勢いで結婚を決めてしまった私達

「わかった。その、私も、四季と結婚したい。だから、よろしくお願いします」


 いくら何でも急過ぎる。結婚の話が出たときにとっさに思ったのはそれだった。

 もちろん、四季しきの事は好き、だし、いずれは……と思ってるけど。

 でも、こんな状態でプロポーズされるなんて、思ってもみなかった。


 でも、考えていて、ふと、気がついてしまった。別に結婚で問題ないのだと。

 四季と別れてから、他の人と何度か会ってみた。

 しかし、全て一回会って、「なーんか、違う」で終わってしまったのだ。

 思えば、四季の事が好きな気持ちがずっと残っていたのがある気がする。


 この先、四季くらい私と気が合う相手なんて、そもそも現れないだろう。

 なら、別に結婚でもいいや。それに、前に付き合ってた時は出来なかったけど。

 結婚するってことは、そのまま同棲にもつれこめるわけで、色々楽しそう。

 というわけで、OKな返事を出したのだけど、四季の様子がおかしい。


「ちょっと待て、桜子。俺はプロポーズした覚えはないんだけど」

「え?」


 彼からのあまりに予想外過ぎる返事に、目が点になる私。


「さっき、言いかけたんだけど」

「うん?」

「結婚を念頭に置いた付き合いは考えてるか?って意味だったんだけど」


 え?プロポーズじゃなくて、その程度の確認の話だったの?


「四季。それはないよー」


 私としても、真剣に考えた末の返事だったのに。


「いや、悪い。ほんと」

「もういいよ。じゃあ、さっきのは私からのプロポーズってことで。四季はどう?」


 四季だって、その話を持ち出すくらいだから、考えてはいるんだろう。

 だから、この際、逆プロポーズだっていいや。そんな開き直り。


「……よく考えたら、別に、全然ありだな。ここ、2LDKだし」

「あ、そうそう。それも聞きたかった。いずれ、彼女連れ込もうとか思ってた?」

「……彼女ってか、桜子と一緒に住めれば、くらいのことは、な」


 四季は少し照れくさそう。なんと、この広い部屋にはそんな意味があったとは。

 ヨリを戻すだけじゃなく、その先も考えてくれてたとは。


「じゃあ、しよっか。結婚」

「だな。してしまうか。結婚」


 お酒飲みながら、こんな話をしている私達は何なんだろうって、少し思う。

 でも、今更、相性を確かめ合うような相手でもないし、きっと、なんとかなる。


「じゃあさ、ちょっと聞きたいんだけど。空いてるもう一部屋って使っていいの?」

「……元々、そのつもりだったしな」

「ヤッター!四季、大好きー!」


 感極まった私は思わず四季に抱きついてしまう。


「お前、絶対、酔ってるだろ」


 仕方ないなあ、という声の彼。


「酔ってない、酔ってない」


 本当は、酔ってるのを自覚してるけど。でも、好きなのは本当。

 おまけに、なんだか甘えたくなって来てしまっている。


「キス、しよー?」

「はいはい。桜子は本当、酔うと甘えん坊になるんだから」

「いいから、キス」


 強引に、四季の顔をこっちに向けさせて、深い深いキスを交わす。


「ぷはー。気持ち良かったー」

「酒の勢いっていうのは怖いもんだな」

「酒がなくても、してたよー」


 ひたすら、幸せな気持ちで、四季に甘える私。

 酔いが覚めたら、凄く恥ずかしい気持ちになってそうだけど。

 まあ、それでもいいか。

 私の人生なんて、昔から、ずっと、いい加減だったのだし。


 こんな風にして婚約者が決まるのも、きっと、私らしい。

 酔った頭で、そんな事を考えた私だった。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆

というわけで、「酒の席の勢い」なお話でした。

先日のもそうですが、普段あまり書かない、社会人同士の恋愛ものになりました。

今回は、いつにも増して、ひたすら淡々としている感じが自分でもしています。

ともあれ、楽しんでいただけたら幸いです。


何か感じ入るものがあれば、応援コメントや☆レビューいただけると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

再会した幼馴染がいきなり結婚を申し込んで来た件 久野真一 @kuno1234

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ