さぁ、世にも恐ろしい拷問に耐えられるかな

ちびまるフォイ

拷問させろやオラァ!!

「こ、ここはどこだ! 離せ!! だれか! 誰か助けてくれーー!」


「ククク。助けを呼んだところで無駄だ。ここは地下深くにある。

 それよりも今の自分の状況をわかっていないのか?」


「これはいったい……!?」


「お前が座っている椅子は電気式拷問椅子。

 ひとたび電気が流れば死ぬよりも辛い苦痛を味わうだろう」


「なんだって……」


男のこめかみに冷や汗が流れる。


「それだけではない。電気が流れると同時にお前の中学生のときの卒アルが読み上げられる。

 ククク。イタめなポエムを読まれる精神拷問に耐えられるかな」


「うそだろ……!? 俺がひた隠しにしていた暗黒の中学時代を!?」


「お前が情報を吐かない限り拷問は続くことになるだろう。

 では始めるぞ。早めに金のありかを答えることが懸命だがな」


犯人は拷問器具のレバーに手をかけた。



「わかった! 金のありかは3丁目の山田さんの家にある!!」



「……え?」

「ん?」


犯人と男は顔を見合わせた。

拷問器具はまだ何も動いていない。


しばし犯人と男との間に謎の沈黙が流れた。

犯人はそっと拷問器具のレバーに手をかけと、男は慌てて止めた。


「おいおいおい!! 待って待って! なんでスイッチ入れようとするの!?」


「だってもったいないし……」


「もったいないって何!?」


「えーーだって今日のためにめっちゃ頑張って拷問器具作ったのに

 このまま使わずに終わるなんてなんかもったいないよぉ」


「おかしいだろ! こっちは秘密を話したのになんで拷問されなくちゃいけないんだ!」


「なにごとも経験だっていうでしょ」


「こんなのは求めてねぇよ! 秘密は話したんだ! 早く外せ!」


「そしたら拷問できないでしょうが!」


「なんでまだ諦めてないんだよ!」


犯人はぶすっと膨れて不機嫌そうな顔になった。


「お前は単に出された拷問を浴びるだけだから思い入れはないかもしれないよ。

 でもね、こっちはそうじゃないわけ」


「お、おお……」


「お前を拷問すると決めたときから、どんな拷問がいいかずーっと考えたんだよ。

 どうすれば秘密を吐いてくれるかなって。どれくらいがいいあんばいかなって。

 それがどうだい。1回も使わずに粗大ごみまっしぐらなんてあんまりだ」


「他のやつの拷問につかえばいいだろう!?」


「他の人用には作ってないんだよ! オーダーメイドなの! わかる!?」


「どうりで椅子の高さがしっくりくるわけだ……」


「その人に合わせた高さにしないとガタガタ動いちゃうから、

 そこも厳密に計算して作ったからおさがり拷問なんてできないんだよ!」


「ええ……?」


「だからいいじゃないか。1回だけ。1回拷問させてくれればそれで満足するから」


「何のための拷問なんだよ! 秘密を話したのに痛い思いをしなくちゃいけないなんてあんまりだ!」


「もう! お前が少しはあらがってくれたら拷問できたのに!」


「痛いのは嫌いなんだよ!」

「男の子でしょ!」

「うるせえよ!!」


犯人と男は拷問するしないで口論を続けたが、どちらも折れることなく平行線をたどった。

拷問してないのに長い時間叫び合っていた二人は疲れ切っていた。


そんな中、犯人がふとアイデアを思いつく。


「……そうだ。お前が話した秘密が嘘かもしれない」


「へ?」


「うん、それがいい。きっとお前は拷問を避けるために嘘をついていたことにしよう」


「拷問する理由を作っているだけだろ! 嘘だと思うなら調べればいい!」


「いやだ! そんなことしたら拷問できなくなっちゃうだろ」


「お前もう話した情報が真実だって思ってるじゃん!」


犯人はいい建前を見つけたと顔をニヤつかせ、拷問器具のレバーに手をかける。


「ククク。よくも嘘の情報を教えてくれたな。真実を話さないかぎり、拷問は終わらないぞ?」


「せめて真実かどうか確かめてからやれよ!」


今まさにレバーが降ろされようとしたとき、部屋に拷問長が入ってきた。


「ご、拷問長!!」


「拷問は進んでいるか? この男は真実を話したか?」


これはチャンスとばかりに男は叫んだ。


「金は3丁目の山田さん家にある!! 本当だ!!」


男の魂の証言は拷問長の耳に届き、犯人は"まずい"と顔を歪ませた。


「ご、拷問長! こいつの言葉を信じないでください!!」


「……というと?」


「こいつは拷問を逃れるために嘘ばっかり話しているんです!

 今の言葉も大嘘です! これからちゃんと自慢の拷問器具で真実を吐かせてみせますよ!」


「そうか……」


拷問長はあごひげをなでつけながら犯人に言った。


「つまりお前はこれだけ時間を使ってもまだ真実を吐かせられなかったのか?」


「え……いや……」


犯人のこめかみに嫌な汗が流れた。



「罰としてお前拷問だ」


犯人は自作の拷問器具の凄さを身をもって思い知った。

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