第37話 暇という幸福

 そう感じるのはとても幸福なのは分かっていたが。


「ふむ……」


 誰もいないリビング。

 テレビを見ながら、ぼーっとする。

 桜子ちゃんがいるなら、もしかしたらテレビの音が聞こえて勉強の邪魔になるかもしれないからテレビを見る事は出来ないが、今日は彼女は塾に行っている。

 夏休みはまだもう少し先だが、夏期講習はもう始まっているらしい。

 なので遠慮なくテレビをつける事が出来る。

 とはいえ、面白いものはやっていない。

 暇つぶしにつけたのだが、しかし暇をつぶす事すら出来ないようなツマラナイものばかり。

 つまらな過ぎて眠気すらやってこない。

 眠気がやってきたのならば、このままソファの上で昼寝をするという手もあるが、それすら出来ない。

 昼の食後にコーヒーを飲んだのもいけなかったかもしれない。

 なんて言うか、いろいろと細かな失敗が重なった結果、こんな事になっている。

 お陰で俺は、手持無沙汰の暇人状態になっている。

 いや、どうしよう。

 こんな風に時間を浪費する事になるとは夢にも思わなかった。


 でも、こんな風に時間を無駄に出来るというのもある意味幸せかもしれない。

 前まではいろいろと暗躍する為に毎日毎日大変だった。

 具体的に言うと、ヒロイン達の好感度稼ぎの為に、いろいろと。

 今はそんな事をする必要はなくなっている。

 いや、大局を見据えるならばまだいろいろとやるべき事はあるのだが、毎日せこせことやる事はない。

 みんな、勝手に幸せな方向に向っていっている。

 そう思う。

 天童桜子ちゃん、日乃本朋絵ちゃん、竜胆愛奈さん、そして金剛姉妹。


 ……金剛姉妹についてはまだほとんどノータッチだ。

 特に、金剛朝日ちゃんについてはまだあった事すらない。

 彼女と接触するためにはいろいろと画策する必要はあるだろう。

 しかし、夜月ちゃんからさりげなく聞いた話によると、彼女は我らが主人公、竜胆翔君と仲がかなりいいらしい。

 まあ、仲が良くないとNTRが成立しないのだから、当然なのだが。

 そう考えると、いっその事彼に丸投げしてしまうというのも手のような気がする。

 あのアリスとか言う人物(?)の話を信じるのならば、彼に救われる人物は一人だけ。

 逆説的に言うのならば、一人だけならば彼に任せてしまっても良いと言う事。

 まあ、朝日ちゃんにもかかわりを持ちたくないかと問われれば、持ちたいとしか言えないのだけれど。

 これはNTR竿役おじさんとしての本能なのか、否か。

 

「それにしても、暇だな……」


 俺はぐっと伸びをする。

 しかしそうしても時間の進みが早くなるなんて事はないので。

 俺は少しだけ壁の時計と睨み合いをし、それからソファの上から立ち上がる。


「……散歩でも行ってくるか」


 小一時間程。

 それくらいならば、この後にある家事に支障はないだろうし。

 そう思い、部屋着から外着へと着替え、外に出る。

 空はとても青かった。

 俺は夏の眩しい太陽の光に目を細め、そして。


「あら、武さん?」


 そこには、家の外にある植物に水を上げていた、竜胆愛奈さんがいた。

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NTRゲーの竿役おじさんに転生した俺はヒロインを普通に寝取っていく カラスバ @nodoguro

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