第四話 何かに呼ばれる様に(向かう)
春を迎えるのにはまだ少し早い日の短い冬の今日。日の長さが切り替わる春分はまだ1カ月も先となる。
あの山を越えて氷柱に向かうには、人の動きが始まる前の暗いうちに動くのが望ましかった。
随分と甘やかされた私の目覚めは、太陽が昇り始めた後。窓を開けるとすでに日の光で明るかった。
周りは既に職場に向かい始める。
ほんの少し、自分に嫌悪感を抱く。
腐りかけた自分の心が春の芽の様に意気揚々と求める先に動き始めるのには、回復期間を必要としていた。
それでも、あの場所に辿りつけば、私の今は変わり始める気がしていた。
「ヨシ!行くか!」
目指す先は、年越し前に縁あって何度も向かった隣県の途中にあった。
(鹿鳴山)
(あの看板を左に向かいそして西に上って行けばあるんではないかな。。。)
少しばかりの土地勘があったせいか、自分の野生の勘に自信がある為か。
ろくに調べもしないまま、鹿鳴山の氷柱に向かい出した。
(ただの氷にいったい何があるのか?
氷を見たところで、私の人生が反転し始めるなどと思うなんて。。。何故だろう?)
疑問を抱きつつも、着いたら分かるだろうと、引っかかる思いを持ちながら先を急ぐ。)
ことば屋 一粒 @hitotubu
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