第20話 殺し合い2

「さぁさぁ、今回のデスマッチはギルド長自ら持ち出した賭けのようです!これは大盛況、大反響間違いなしの伝説の試合になること間違いないでしょう!」  


 一人の男性が闘技場の上のほうで拡声器のマイクのような物を使い、闘技場全体に声を響かせている。


「さぁ!そろそろデスマッチが始まりそうです!観客の皆さん!お席の確保はできてますか?おつまみの用意はできてますか?」


「「「「オオォォ――――!!!」」」」


「闘技場内には凄まじいほどの熱気、熱狂が渦巻いています!さぁ!参加者は準備出来ているのでしょうか?―――」


 闘技場の真ん中には四人の人影がポツンとたっていた。

 凄まじい歓声の中、びくびくと震える黒髪の少女へ声をかける――。


「きみはずっと俺の後ろのほうの隠れていて、大丈夫君には怪我もさせないから」


「········」


 黒髪の少女はリョウの呼び掛けに声を出しはしないが顎を少し引き、頷き小走りでリョウの背後へと身を隠す。

 それを、横目にフェニクがニヤリと口角を吊り上げ不敵な笑みを見せ口を開く――。


「おい、根暗·······わかってるな?」


「えぇ······もちろんです·······私は少女から·······」


 陰湿な男性が纏わりつくような視線で背後に隠れている少女を覗き込む。


「くそ共が」


 そして、また突如、頭上から大きな声が降り注ぐ。


「リングの上もやる気は満々のようです!そろそろデスマッチを始めないと観客が今にも暴動を起こしてしまいそうなほどの熱気です!」


「「「まだ始まらねーのかー!」」」


「「「はやくしろよー!」」」


「「「No.1負けちまえよー!」」」


「「「「ひん剥けよー!」」」」


「「「期待してるぞー!」」」


 闘技場内が歓声が沸き上がる。


「では!そろそろ全てを賭けたなんでもありのデスマッチを始めましょうか!」


「「「オオォォ―――!!!」」」


「皆さん席には着いたでしょうか?」


「「「オオォォ―――!!!」」」


「観客の皆さんは準備万端!さぁ!リングの四人はどうでしょう?準備万端なら合図を送ってください!」


 闘技場の真ん中で四人の小さな人影が立っていた。


「おい、根暗、準備万端か?だとよ、もはや答えるまでもねぇよな?」


 長い青髪をなびかせ、背中に槍を背負うフェニクが横にいる陰鬱な暗い男へ視線を送る。


「えぇ········まぁ、別に·······いつでも·····」


 暗い男はやる気の無さそうな返事を返す。

 

「········あぁ」


 そして、怯え震える少女を背に庇いながらリョウは試合開始に同意すると、突如、うるさくうっとしい大きな声が響きわたる。


「準備万端のようですね!ではそろそろ始めましょうか!そうでないと今にも熱気、熱狂がはち切れそうなほどに膨れ上がっています!」


「「「いつまで待たせる気だよ!」」」


「そうですよね!そうですよね!もうすぐ始まります!いえ!もう始めましょう!」


「「「オオォォ―――!!!」」」


「では!僭越ながら私が試合開始の合図を出させていただきたいと思います!」


 ノリがパーティーを始めるみたいで、どうにも気合いが入らないし、相手に集中できない。


「おいおい、そんなんだとすぐ終わっちまうぞ、せいぜいエンターテイナーしてくれよ」


 そう言い放った瞬間、No.1から凄まじい殺気、敵意、鬼気が横殴りにぶつけられる。

 リョウは、その気迫に、少女を背に庇っていることで奇跡的にON/OFFのスイッチが切り替われた。


「――――エンターテイメントしてやるよ」


「·······少しは楽しめそうだな」


 同時に凄まじい殺気と鬼気と気迫が二人のあいだで混ざり交じり絡み合う。

 闘技場全体に緊迫が走る。


「では!始めましょうか!いまここにデスマッチをスタァ――――――ト!!!」


 その合図の瞬間、二人の男が動き出す。


 青髪の槍を背負う男が消える。


 腰にかけている二本の短剣の柄にに指をかけ二本の短剣を引き抜き双剣を構え、命を刈り取ろうと迫りくる槍の矛先を甲高い金属音を鳴らしながら弾き反らし受け流す。


「――――ッシ!!!」


「――――死ね!」


 No.1フェニクがそう言い放ったとたん、無数の刺突が放たれる。


「―――――ッ」


 次々と一撃一撃が行動不能の致命傷になりかねない刺突を、二本の短剣で弾き、反らし、交わし、弾き、反らし、弾き、弾き、交わし、反らし、弾く、火花を散らせながら受け流す。


 すると、突然No.1フェニクが攻撃の手を緩め、止まり、怪訝な表情を浮かべ、なにかをボソッと囁く。


「·······は?·········どういうことだ?·······」


「·······なにがだよ」


「青ランクほどの実力なら確実に行動不能にできるぐらいの攻撃だった」


「???」


 なにが言いたいのだろうか。


「お前ランクを偽造してるのか?」


「は?できるわけないだろ、お前が一番わかってるんじゃないのか?なぁギルドNo.1の赤ランクさん」


「――――ッ調子に乗るなよ!」


 No.1が凄い形相を見せ激昂する。

 その瞬間、No.1とリョウ、その背に庇う少女を包み込むようになにかが爆発するような音を立てて砂煙が舞う。


「おい!まて!根暗ァ!」


「なんだ?」


「―――キャッ」


 視界が土煙によって塞がれ、誰かが叫び、誰かが煙に疑問を抱き、誰かが爆音と爆煙に驚く。


 ここから闘い、殺し合いは更に激しく激化していく―――――――――――――――

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俺の人生は異世界でも障害だらけ~なので障害を全部ぶっ壊す シャケ缶 @syakekann

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