第19話 殺し合い
翌日、クロハを取り返すためのベリアスルーギルドとの命懸けのデスマッチ開催当日、闘技場へ大勢の人々が集まっていた。
「おいおい、この町の連中はどうなってんだ?」
リョウはデスマッチ、いわゆる殺し合いを観るために集まるこの町の人々の思考を疑う。
その一言へ、シェムハザが答える。
「この町はこういう野蛮人の集まりです。人が傷つき痛めつけられ死ぬ様を娯楽としている·····そして、それを許している王国がおかしい!」
この町と言うより、国のあり方を否定し激昂するシェムハザ、そこへ拡張されたかのような不快な声が闘技場へ響き渡る。
「さぁ!デスマッチのルールのおさらいだぁ!」
ベリアードギルド長が賭けをする際のルール説明を意気揚々とし始めていた。
「昨日言ったとおり、このデスマッチは二人で1チームの2チームで行う!そして!闘技場内であればなにをしてもいい殺し合いだ!」
そう言い放ち闘技場内には人々の歓声と拍手、口笛が沸き上がる。
そして、ベリアードギルド長が不適な笑みを浮かべながら――。
「ちなみに、この殺し合いにおいてこのベリアード・ラミスルーとシェラーム・ハザの参加は認めない!」
「臆病者ね·······そんなに負けるのが怖い?」
「そんなわけないだろう?ただおれとお前が参加したら意味がないだろう?」
「··········」
「いや、でもおれとシェムハザの二人しかいないんだけど、シェムハザが参加できないとなるとどうすれば?」
チーム戦に異議を唱える。
すると、ベリアードギルド長が『もってこい』と部下どもに合図を送る。
「「了解っす」」
そう言い、下っ端らしい男二人がリョウの前に人一人入りそうな大きさの袋を担いで来て、地面へ袋を落とす。
地面に落ちた袋から何か小さなうめき声が聞こえた気がした。
「なんだこの袋?」
「お前、仲間いないんだろ?仲間を用意してくれたんだよギルド長様がな」
「は?」
「いいから開けろよな、見世物が始まらねぇだろ」
「お前らの用意した仲間なんか信用できるか!」
「リョウ・クラーク様、もう無理ですよ、この賭けに乗った時点でベリアードの思うつぼです」
「······シェムハザ、」
「そうそう、二人でチームを組まない賭けは成立しない、そしてこの町にはそこに落ちているもの以外誰もお前の見方をしない!」
この男の言っていることは本当なんだろう、それほどこの町の人々は心が魂が黒く濁っている。
仕方ないと、この町の思惑に逆らうのを諦め、紐で閉ざされた袋をそっと開く、中にはいったいどんなごろつきが入っているのだろうと―――。
「―――なっ!」
袋の中を覗くと、そこにいたのは両手、両足を縛られ短めの黒髪の少女が窮屈そうな姿勢で入っていた。
「これは·········」
「気に入ってくれたかい?それがこれから始まるデスマッチのチームメイトになる少女だ仲良くな」
「お前らの仲間か?」
「そうだとも、それは丁度先日連れてきた見世物用の少女だ、やはりショーにはエンターテイメントが必要だからな、闘技場の中をお前は足手まといを庇いながら戦わなければいけないそして無様に倒れし、この大勢の観客の前で少女が剥かれていくのを見てるがいい」
「何が仲間だ、ただ拐ってきただけじゃねぇか、そしてやっぱりお前らはクズだ」
沸々と身体の底から怒り、憎悪、そして殺意が込み上げてくる。
きっとこの少女もこの町の冒険者に無理矢理連れてこられたんだろう、ただの娯楽のために、なんて可哀想な子なんだろうと、少女にゆっくりと手をさしのべ手足の拘束を取る。
「大丈夫?可哀想に、きっと無理矢理連れてこられたんだね」
「··········」
少女はゆっくりと立ち上がるが、少女の手はとても震えていて、話せそうな状態ではない。
「怖かったよね」
震える少女へ呟き、ベリアードギルド長を睨み付け――。
「この子の名前は?」
ベリアードギルド長が少女の名前を聞かれると首をかしげ肘を抱え――。
「知るわけないだろう?」
「あぁ、そうかい」
「おいおい、絶対お前なら激情に駆られ怒鳴り散らすと思ってたのに案外冷静だな」
「········クロハは無事なんだろーな?」
「あぁ!もちろんあの薄紫色の髪をした少女なら大切に傷が付かないようにしてあるよ、万が一傷でもつけてしまったらシェムハザが暴れ兼ねないからね、それだけは避けなければならない」
「そうか、ならいい、さっさと始めよう」
ベリアードギルド長が怪訝な顔つきから不敵な笑みへと表情を変える。
「あぁ!そうか!そうか!お前が冷静ではショーが盛り上がりがいまいち欠ける、と思っていたがしっかり怒っててくれてありがたいよ」
そう、リョウは怒りなどでは収まらないほどに沸点を越え、海のように宇宙のように深く暗く壮大に怒り狂っていた。
「さっさとリングに降りてこい、No.1とその仲間、できるだけ残酷に、できるだけ惨たらしく惨めにさせて負かしてやる」
そう言い放つと、上から二人の男が目に前にいきなり飛び降りてくる――。
「おいおい、てめぇ青ランクの癖に俺ら相手に言うじゃねぇか、俺はギルドNo.1でランクは赤でお前は青だそして相棒が」
No.1ファルズ・フェニクが隣にいる男へ視線でバトンを渡し――。
「······俺は······無視していい·······」
「··········」
心のなかで『できるわけないだろう、馬鹿かこいつ』と叫ぶが、明らかにめんどくさそうな人格の持ち主だと判断し、口には出さなかった。
隣にいたNo.1が『ハハッ!やっぱりおもしれぇ!』と大声で笑い始め――。
「こいつ面白いだろう?今から殺し合う相手に気にしないでって、ウケるだろ?」
「··········」
「·········ノリが悪いな、まぁいい、この根暗の紹介を俺がしよう、こいつはベリアスルーギルドの実力No.12の名前は ――――忘れた、がちなみにランクはお前の1ランク上の紫だ」
敵は二人の、俺より上の赤と紫、そして名前もわからない少女を庇いながら、かなり絶望的だ、だけどなんで、なんで――。
「なんで、No.1とNo.2でやらないんだ?なめてるのか?」
弱い奴が出てきてくれるのはありがたいが、とても腹立たしくて我慢できない。
「あぁ、なめてるってのもあるが、No.2からNo.11までは仲が悪いのさ、あいつらみんな負けろって思ってるだろーな」
「くだらないな、さっさとやろう」
そう言い、観客が徐々に増えデスマッチの開始を黙ってまつことにする。
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