第18話 醜悪なギルド      

 リョウとシェムハザはクロハを探しにベリアスルーギルドへ少女を連れ去った醜悪ギルドNo.1 フェルズ・フェニクを探しに来ていた。


 ギルドの中へ入ると光に照らされたシェムハザの美しい美貌に男たちの下賎な視線と女たちの嫉妬の視線がシェムハザへ纏わりつく。


「クラブハウスじゃねぇか」


 目の前に広がる公共と言う名がなくなっている光景に思い当たる光景を重ねて呟いた。

 そこへ、リョウとシェムハザの二人に否、シェムハザに男が近寄って来て――。


「おいおい、こんなところになんのようだい?お嬢さん」


「「··········」」


 こう言う類いの人間には極力関わらず何が刺激材になるのかわからないので口を紡ぐのが最善だと考えリョウとシェムハザは男の言葉を無視する。


 すると、男がシェムハザの白く細い手首を掴み声を発する。


「おいおい、無視するなよ!心に傷を負っちゃったよぉ、責任とって癒してくれよ」


 男は、ぽんぽんと下賎な言葉を並べていく。

 その間もシェムハザの手首は掴まれたままだ。

 シェムハザが捕まれている箇所を払いのけ、シェムハザの深い桃色の瞳孔が払われた男の瞳孔を射ぬき凄まじい鬼気を放ち――。


「あなた、誰に触っているのかわかっているの?」


「てめぇ!」


「わかってるわけないですよね、わかってたら手なんて到底出せるものじゃないですもの」


「――――――ぐはぁっ!」


「···········まじか、」


 そう言い、細く白い腕を手を出してきた男に向けた直後、男が見えない力で後方にぶっ飛び、男が鼻から血を流しながら床に大の字に横たわる。


 それをちょっとやり過ぎじゃないかと目を見開く。

 

 そして、それを目にした、ギルドにいる結束の強い冒険者達が仲間に手を出され黙っているまずもなく――。


「てめぇら!うちのギルドメンバーに手ぇだして、ただで済むとおもってんのか!」


 明らかに柄の悪い冒険者が吠える。


「こいつらやっちまおうぜぇ!ヒャッハッハァー!」


 青い鶏が吠える。


「あらあら、女だけなら乗り気じゃなかったのに、男がいるじゃない」


 女性がテーブルの上でお酒を飲みながら、こちらをなめ回すように視線を纏わりつかせ呟く。


「あの髪の毛が妬ましい······桃色の目が妬ましい······雪のように透き通る白い肌が妬ましい······全てが癪にさわるぅ!その全てに切り傷を刻み込んでやる!」


 自分よりも美しい存在が妬ましいと狂乱の女性が嘆き叫ぶ。


「ヤバい、聴覚と視覚を塞ぎたい、怖すぎる、」


 あまりに頭のおかしい連中の醜い形相とおぞましい叫びが視覚と聴覚を刺激し汚染していく。 

 そして、今にも飛びかかってきそうな狂乱者達を視認し、腰を低くし腰にかけてある双剣の柄へ指をかける。


「············」


「············」


 一瞬、ギルド内に静寂が訪れる―――――。


 突如、『ガチャッ』と思いもよらぬ音に静寂が破られ、全員が音のする方へと視線を送る。

 そこには、ギルドの2階の扉から30代半ばの中年男性がでてくる。


「おいおい、なんの騒ぎだよ、争い事は外か闘技場で殺れっていつもいってるだろーが!」


「「「「「すいません!ギルド長!」」」」」


「ギルド壊されると金が減るんだよ、わかるだろ?」


「「「「もちろんです!ギルド長!」」」」


「なっ、あの野蛮民族どもが、とてもお利口にみえるぞ········」


 あまりの野蛮どもの変わり身の早さに驚く。

 その驚いてる横でシェムハザが怪訝な顔をし桃色の唇からボソッと呟く――。


「ベリアード・ラミスルー·········」


「知り合いなのか?」


「えぇ、一応、ギルド長は年に何回か王城へ呼ばれるので、顔見知りになりますね」


「まさかまさか、お前の方から俺のとこに会いに来てくれるとはなぁ、会いたかったぞ!シェムハザァ!」


「私は出来れば会わないで事を終えることを望んでいました·········あと私をその名前で呼ばないでください、呼んでほしい人にしか教えてませんが?」

 

「あぁ、そうだっけか?」


 ベリアードはとぼけながらケラケラと嘲笑う。


「········」

 この二人のやり取りを見てる限り何かしら因縁があるのだろうと思い口を挟まないよう黙っていたが、そこへ唐突に凄まじい敵意を向けられる。


「俺に会いたくないのにここに来たのは、隣にいる男にそそのかされたのか?お前が?」


「え?いや?」


 いきなり話を振られ戸惑っているとベリアードギルド長はそれを気にもせず話を続ける。


「まぁいい、ここに来たのはなんのようだ?理由によっちゃぁ、いまここで袋叩きだ」


 凄まじい圧力を感じ唾を飲み込み――。


「ッ·······俺の妹がここのギルドのNo.1フェルズ・フェニクに拉致されたから連れ戻しに来たんだ」


「ほう······これは良いもんが釣れたな、フェルズの奴を誉めてやるか」


「おい·····誉めるってなんだよ、まだちっちゃい少女を気絶させて、無理やり拐って来たんだぞ?おかしいだろが!」


「悪い悪い、そう言うことなら悪かったなぁ、いまフェルズを呼ぶから待ってろ」


 ベリアードがそう言い指を鳴らすと、突然なにもない空間から、長い槍を装備した暗い深紅の長髪の男性が現れる。


「ん?俺は·······はっ!ギルド長!」


 現れた男性が膝をつき頭を下げる。


「お前、今日なんか少女拐ってきたか?」


「―――ッ」


「今日ですか?一応亜人の美少女がいて連れてきちゃいましたね」


「そうかそうか」


 なにが連れてきただ、少女を気絶させた時点で違うだろお前がやったのは―――。


「誘拐の間違いだろーが!」


「あぁ?なにあいつ、誰に口聞いてるのかわかってんのかぁ?俺は―――」


「No.1フェルズ・フェニクだろ?」


「ん?あぁ、知ってて俺に――――」


「喧嘩を売りに来たんだよ!クロハを連れ戻させてもらうぞ!」


「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!俺の話を遮るんじゃねぇよ!くそが!」


 別に2度くらいしか遮ってないが、仏の顔では無いらしい、激昂し憤怒をぶちまけ、背中に背負ってる槍を引き抜く。


「おい、ここはギルドだ、やめろ」


「···········はい、すみません、ギルド長」


 激昂したNo.1を沈め、No.1が槍をゆっくりとしまう。

「ここは、俺のギルド流で決闘をしようじゃないか、勝ったものは何でも好きにできる、しなかったらお前の妹は取り返せないけどな」


 この勝負での負けはきっとクロハだけじゃなくシェムハザにまで害が及ぶことになるだろう。


「どうするシェムハザ·····」


「やりましょう、私はあなた様を信じています」


 「課題評価すぎる、それに自分を賭けてまでなぜ俺に力をかしてくれるんだ?」


「言わせるんですか?とてもじゃないですけど言えませんよ」


 何故かシェムハザは頬と耳を真っ赤にさせてる。


「おいおい、見せつけてくれるなぁ」


「「········」」


「ムカつくな」


 ベリアードは反吐を溢す。


「よくきけぇ!ベリアスルーギルドの冒険者ども!明日ぁ、2対2のデスマッチを開催する!ちなみにギルド長は参加不可能だ!」


「「なっ!」」


 そう言い、ベリアードによりデスマッチの宣言がされたのであった――――――――――――――

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