第17話 追走

 リョウとシェムハザはクロハが残したメッセージを聞き、唖然とし、脳が理解に苦労していた。


「え········まってもう一回聞かなきゃ········」


 そう言い、リョウはクロハヘ贈ったブレスレットを探し始めるが、見つかるはずはない、何故ならブレスレットは先ほど役目を果たして粉々になってしまっている。

 それを見かねたシェムハザが両手をそっと握りしめて、深いピンク色の瞳を向け――。


「リョウ・クラーク様落ち着いてください、私の目を見てください!」


「あ················」


「もうブレスレットはありませんし、メッセージを聞くのももう無理です、何より少女が大切なら動かなくてはダメです!」


「あ·····あぁ、悪かった、取り乱して、本当にありがとう、助かったよ」


 シェムハザに正気に戻され、あまりのアホらしさに自分であきれる


「ああ!そうだ、クロハを助けなくてはいけない、それを信じてクロハはこれを残したんだ。」


「そうですよ!」


「それでだ、シェムハザ···お前ならわかってるよな?俺が聞きたいこと」


「えぇ、もちろんです、でもそれはベリアスルーギルドに向かいながら話しましょう。ベリアスルーギルドのいい噂は流れていませんからね」


「そうだよな、知らなくてもわかる、No.1があんなグズじゃあな」


 当然だ、いい評判なんかあってたまるか、顔を見てすらいないが確実に糞な分類のやつに決まっている。


「じゃあいくか、」


「ええ!」


「え?そう言えばシェムハザもついてきてくれるの?」


「もちろんですよ!そのために村の前にいたんですよ」


「え?そうなの?て言うか勇者の首はどうしたの?まさかとは思うけどそこら辺に捨ててないよね?」


 シェムハザは勇者の首は王国へ届けると言っていたのに、ここにシェムハザ本人がいるってことは勇者の首をそこら辺に捨てかねない、しっかりしているがちょっとずれていると感じれる。


「····················」


「おい、なぜだまる?」


「なんのことだかさっぱりですぅ!」


「こいつ、やりやがったな」


 確実にそこら辺を探し回れば勇者の生首が出てくるのは間違いないだろう、そして明日の朝には見つかって村では大騒ぎになってるだろうな。


「今度こそ、いくぞ···········」


「えぇ、」


 そう言いリョウとシェムハザは足に力を入れて、地面を思い切り蹴り、森のなかを走り、木々の間を駆け抜けていく、目標地点はベリアスルーギルドへ。


 暗い森のなか風を切りながら言葉を交わす。


「ところでシェムハザ、ベリアスルーギルドの事とクロハを拐っていった自称ギルドNo.1のファルズ・フェニクのこと知ってる限りの情報を教えてくれ!」


「もちろんですよ·······ナニもしらずにベリアスルーギルドの管轄に入るにはあまりにも危険過ぎるんで話させていただきます········」

                   

「そんなに頭のおかしい········ヤバい所なのか?」


「そうですね、やはり問題はベリアスルーギルドの長が頭のネジが違うところへ刺さってるみたいで··········」


 酷い言われようだな、


「ベリアスルーギルドまでいったらいったい、なにからしたらいいんだ?」


「リョウ・クラーク様、まずですね、あのベリアスルーギルドは七個ギルドがあるなかで一番醜悪で醜く汚れたギルドと呼ばれています」


 そんなところへクロハが連れ去られたと思うと


「···············最悪だな」


「そして、そんな悪評の立ち込めるギルドに加入し集まる冒険者と言えば悪名高いものばかりが集まってしまい、ギルドではさらに悪と悪は結束がかなり固いものとなっていますね」


 あれ、もしかしてこれって悪のギルドVSシェムハザと俺の二人で抗争見たいなことになるのではないだろうか、


「ねぇ、さすがにギルドVSなんてなんないよね」


「いえ、正直あり得ます、なんせ自称ではなく本物のNo.1に喧嘩売りにいくんですから、」


 できれば、ただ自称No.1と名乗ってる痛い奴であってほしかったが、事実らしい


「いや、でもなぁ················」

 喧嘩売りにいくと言うよりすでに売られた喧嘩を回収しに行くだけのことじゃないか。

 間違っているのはどう考えてもあのNo.1とその勝手な行動を見逃してるギルドと国が悪い、抗争になるとしても必ずクロハは取り返してやる。


 心のなかで決意を固めていると


「つきましたね、ここがベリアスルーギルドのあるベリアスルー村です··········」


「ここが·········なんか暗いな·········」


 目の前に見える村の雰囲気はとても悪辣だ、人に家の玄関を見れば大体解るように、村の門構えは最悪だ、とても入ろうとは思わないが。


「いくか」


 そう言いながらリョウとシェムハザはゆっくりと村へと足を踏み入れるのであった―――――――

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