第16話 メッセージ
「やっと村が見えてきた!」
リョウはクロハが消え、そこに残っていた謎のブレスレットのことでなにか知ってるやつがいるかもしれないと、村へギルドへ宿へ急いでいた。
そして、全力でくらい森のなかを駆け抜け、ようやく村の入り口の前に辿り着き、呼吸を整えるために、一時停止し、息を小刻みにし酸素を身体中へ送り――――――――――
「ハァ·······ハァ·······やっとついた·······てか······ハァ······森から遠すぎるんだよ!全力で走っても30分はかかるじゃねーか!」
村が森から遠いのは魔獣の侵入や攻撃をかんがえると、村民の安心安全を守るためには仕方のない事だと解ってはいたが、愚痴を溢してしまう。
そこへ突如、誰に向けて言ったわけでもない自分の愚痴への返答が帰ってきて、息が詰まる。
「あらあら、そんなこと言わないであげて、ここのアンシアーノギルド長もそれなりに頑張っていらっしゃるのですから、ね?リョウ・クラーク様」
「―――っ!お前は」
「うふふ、嬉しい反応をしてくれますね」
「シェムハザ············」
自分の名前を様付けで呼ばれ誰かと暗闇のなか村の明かりを頼りに目を凝らすと、そこには先ほど勇者の首の根っこを回収し王国へと持ち帰ったはずのシェムハザが待ち構えていた。
「はい!シェムハザです!先ほどの勇者暗殺ぶりですね!」
「おいおい、そんな言い方よせよ··········人聞きが悪いだろ!」
決して、断じて、暗殺などではない正々堂々とし因果応報の報いが下っただけのことだ。
「リョウクラーク様が、そう言うのなら、そう言うことにしておきましょうか」
「いや!今はそれどころじゃないんだ!」
いろいろ気になることはあるが、それよりも先にブレスレットの事が気になり、懐からブレスレットを取り出し、シェムハザに見せる――。
「········これなんだが··········」
「これは?」
「勇者と対峙している間、クロハと言う美少女を森のなかで勇者の目につかない所に隠れていてもらったんだ、そしてさっき戻ったらどこにもいなくなっていて··············」
「そこに、このブレスレットが落ちていたと言う事ですか·········」
「あぁ、そうなんだ、」
それを、聞きシェムハザが目をつぶり、腕を組み考え込み、ひとつの結果を予測する。
「森のなかに美?少女がただ一人、そして夜も更けてきていた·········と、なると·········魔獣に襲われたと考えるのが妥当でしょう」
「いや、その可能性は低いはずなんだ、武器屋で購入した魔獣避けのアイテムを1個じゃなく3個も持たせておいたんだ、だから」
「3個もですか、過保護で心配性過ぎてやばいですね···········」
「···················」
心配なものは心配なんだ、しょうがないだろう、念には念を込めとくに越したことはないだろう。
「まぁ、魔獣避けを3個も持たせてるなら、いつの間にか落として襲われたとかはないでしょうね」
「あぁ、まず魔獣なら周りに血痕やら争った跡が残るはずなんだ」
シェムハザが、その推理を聞きまぁ、確かにとうんうんと何度か頷き―――。
「ではやはり、その手に持っているブレスレットがなにか、手がかりが隠されていると言う事ですね」
「あぁ、きっと、絶対、必ずそのはずなんだ」
ブレスレットに必ず手がかりがあると言い切る。
なぜなら、クロハはアホじゃないからだ体格や見た目の年齢よりも、かなり賢く頭がいい、だから絶対意味のあることなのだと。
「そのクロハと言う女の子をとても信頼されているのですね、」
「·····················」
「では、そのブレスレット見せていただいても?」
「あぁ、ちなみにブレスレットにクロハの髪の毛が3本で自然には結ばれないような結び目でブレスレットに結ばれているんだ」
そう言い、ブレスレットをシェムハザへそっと手渡す。
「では、拝見させていただきます」
シェムハザは手渡されたブレスレットをじっと見つめ、髪の毛の結び目を触り――。
「これは、魔法ですね、トラップや時限に使われるそこそこ習得難易度の難しい魔法がこのブレスレットと髪の毛にかかっています」
「魔法?··········」
「はい、多分ですが、このブレスレットに魔法がかけられていて、この髪の毛によってブレスレットにかけられた魔法が留められています」
「と言うと?」
「つまりですね、この髪の毛をほどいたらブレスレットに留められていた魔法が発動する、と言うことです」
「なら、はやくほどかなくちゃ」
そう言う事なら早くほどいてみて、クロハの真意を確かめなくては、とシェムハザに握られているブレスレットを取ろうと手を伸ばすが、伸ばした手が取ろうとしたブレスレットを掠める。
シェムハザがブレスレットへ手を伸ばしたと同時に背後へブレスレットを隠す。
「おい·····シェムハザ、どういうことだ?」
瞬間、リョウとシェムハザの間の空気が張り詰めるが、シェムハザが『早まらないで』と話を続ける―――。
「このトラップを仕掛けたのがもしクロハって言う少女じゃないかもしれないじゃない、もし少女が誰かに悪人に何かされた場合、その悪人が仕掛けたトラップかもしれないよ?」
「ぐっ·······」
シェムハザの言っている事は確かにあり得ない事でもないが、いまそれをどうこう考えても前進しないし、それが事実だとしたら尚更早く行動に移さなくてはならない。
なら、やることは決まっている――――。
「シェムハザ······教えてくれてありがとうな」
「もし、私が言ったことが真実だった場合、十中八九爆発しますね、頭が吹っ飛ぶくらいの」
「いや、俺なら大丈夫だ······だからシェムハザは離れていてくれ」
「いや、大丈夫な訳無いじゃないですか!?まともに食らえば怪我したしたぐらいじゃすみませんよ?」
「本当に大丈夫なんだ、だから離れていてくれ」
実際、本当に大丈夫である、体が残っていれば恩恵の力で再生するだろう、だからこれは決して死亡フラグなんかでは決して無い。
「そこまでリョウ・クラーク様が言うのなら離れています。一応、治癒魔法の準備はさせていただきますから」
シェムハザはそう言い、この場を離れる
「あぁ、ありがとうな······シェムハザ」
そう言い、ブレスレットに結ばれているクロハの髪の毛に指をかける。
あとは、この髪の毛を引っ張るだけなのだが、やはり、いくら死ななくても、再生するからと言っても爆発するかもしれないと知っていてトラップを発動させるのには結構な勇気がいる。
「····························」
吹き飛ぶ覚悟を決める。
「ふぅー·················」
肺にある空気を吐き出し、身を内側から硬め、髪の毛の結び目を勢いよくほどく。
「っ―――――へ?」
爆発するかと思い、目を閉ざしていたが、何も起こらず変な声を喉から出してしまう。
「·················なにも起こらない?」
何も起こらなかったのを確認し、シェムハザはゆっくりとこちらへ近寄ってくる。
何も起こらなかったことに、安堵し気を一気に緩めると、次の瞬間どこからか音が聞こえる。
「ん?」
「これはまさか」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
――――――――――――ザザッザザ――
「あなたは一体誰ですか?」
「俺はベリアスルーギルドのNo.1 ファルズ・フェニクだ」
「ベリアスルーギルド·················」
「さすがに知ってるよな?」
「················」
「まぁ、知ってようが知ってまいがどうでもいい、お前は俺と一緒に来てもらう」
「そんなの無理です!私には待って―――」
「あぁ、あとお前の話はどうでもいい、こんな暗い森のなかで何をしてたとかもどうでもいい、」
「っ················」
「ただ、お前の可愛さに愛くるしさに気に入った、だから俺のものになるんだ」
「····················」
「俺のあとをついてこい········わかったな?」
「嫌です、絶対に、私には待つべき人がいます」
「あぁ、そう言うことか、男か、いいさ、むしろそっちの方が楽しくなりそうだ、いつその男諦めるか、そして忘れるか、そうやって俺色に染まってく姿こそ愉悦だ」
「····················」
「とりあえず、めんどくさいからギルドまで眠ってろ」
「うっ············」
――――――――――――――プツン―――
ブレスレットから響き渡っていた音が突如音を立てて消え、ブレスレットが崩壊し崩れ、夜風に晒されたブレスレットの破片は少しずつ風に拐われていき、無くなる。
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