第4話 その少年
「…死人だって…?!で、でも僕は君に触れるし…死んでいるようにはとても…」
いや、完全に死んでないように見えないと言えば嘘になる。
現に、彼の腕の傷は無くなっているし、アジェにはこの少年が見えていなかった。
この子が、アジェの言っていた”守護者様”と言うものなのだろうか?
「死んでるよ。お前が何で俺に触れるのかは知らないけど、俺の仕事は凶暴化事件を止めること。
それ以外の事は別にどうでもいい」
そう言って少年が腕を振り解いて去ろうとした時、また別の凶暴化した人間に横から襲われそうになった。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「……またか」
そう言って少年はもう一度弓を構え、相手に向かって勢いよく放った。
見事に命中。
凶暴化していた人はさっきと同じ様に呻き声を上げながら倒れた。
その人にも弓を受けた傷はなかった。
「び、びっくりした…」
一日に二度も凶暴化した人に襲われるなんて…最近、よく遭遇するなとは思っていたけれど…
急に襲われたため、腰を抜かしてしまった。
自力で立つことができない。
そうすると、少年が手を差し出して、
「…お前、もしかしてとは思っていたけど、こいつらを惹きつける体質?」
と、相変わらずの無表情で聞いてきた。
「え…た、確かに最近は行く先行く先遭遇はしているけど…」
「そんなの中々ないよ。それに、俺がこうして現世の人間と関係を持っているのに体が消滅しない、何が起こってるんだ…?」
「体が消えるだって…?」
やっぱりちっとも分からない。
この少年は本当に何者なんだ…
少年は、
「…俺らは現世の人間と一度でも関わりを持てばこの世から完全に消える。生きていたという証と共にね」
とさっきより一層落ち着いた声で言った。
「な…」
生きた証と一緒に消えるって…
「それって、本当にどこにも存在しなかった事になるって言うことじゃ…」
するとまだ名前も知らないその少年は
「まぁそんなことより、君、俺の仕事手伝ってくれない?」
と言って、少し微笑んだ。
とても暖かく、優しい笑顔で——…
永世のエルヴィス 田崎 和 @tsk___n
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