第197話歓迎
トラットの町に戻った私は西門に到着すると子供達が走って近寄って来た。
子供達は私を囲むと抱き着いてきて、私はそんな子供たちの頭を撫でて落ち着かせていった。
その間にキャトルーはまた私の肩まで登り自慢げに胸を張る。
この子は何をそんなに自慢気にしているのか・・・。
「マリアねえちゃん悪魔倒したんだろ、なんか手に入ったのか?」
アントニーくんが聞いて来たけど、大したものは手に入って無いのよ。
私は仕方ないから手に持っていた悪魔の角をアントニーくんに見せると、アントニーくんは私の手から悪魔の角を取りクルクルと回しながら眺めすぐ返してきた。
「悪魔って必ず角落とすのか?前にも角落としてたよな」
アントニーくんの言葉に私達は悩んでしまった。
悪魔を倒すと角が確定ドロップなのかしら?ゲームの時は他にも色々と落としてくれたけどわからないわね。
私が首を傾げてアントニーくんから受け取った角を眺めていると、そばで私達の様子を窺っていたギルバートさんが声をっ掛けてきた。
「一説では悪魔は角に魔力をためているのだとか、だから体の部位の中で角が一番残りやすいのだとか」
ギルバートさんの言葉に私は一度頷き、説明してくれたギルバートさんにお礼を言った。
お礼を言われたギルバートさんは頬を掻きながら下がると今度は裁判で私を擁護してくれたあの紳士が私の前に来て恭しく礼をした。
「この度は町の危機を救っていただき誠にありがとうございます。私はキレール・ヴァン・トラット、この町の領主として御礼申し上げます。
つきましては私の屋敷でお礼も兼ねて歓待させていただきたいのですが・・・」
キレールはそう言って来たけど私はどうしようか考えてしまった。
まああれだけ暴れれば私のことを取り込もうと思うかもしれない、そうじゃなくてただお礼をしたいだけかもしれないけど、取り合えず及ばれしてみましょう。
話の流れが変な方向に言ったら退散すると言う事で。
「分かりました、ですが子供達も一緒でもよろしいでしょうか?今回の裁判で、すでにこの子達も心労が溜まっていると思いますので、できれば安心して貰いたいものですから」
私がエイミーちゃんとアントニーくんの頭に手を乗せながら言うとキレールは頷き。
「もちろん良いですよ、孤児院の支援金着服問題でその子達にも迷惑を掛けたからね、せめてもの償いにご馳走させてもらうよ」
キレールは私の提案に心良く受け入れてくれた。
そして彼の横に控えていたバーザックに指示を出していた。
バーザックは恭しくお辞儀をすると町の中へと走っていき見えなくなった。
私はキレールと話した後、キレールは先に屋敷に戻ると言うので別れ町に入った。
私は子供達と一緒に街に入る、すると割れんばかりの歓声に包まれた。
大通りには私を一目見ようと多くの人が犇めいていた。
私は大通りの真ん中を歩きながら手を振る、大通りの両端に並んだ人は手を振ったり拍手をして私を迎えてくれた。
私を見る民衆は皆口々に天使様とか聖女様だとか言っている。
神官らしい服装の人なんかは跪いて祈る人までいる、確かに私は神官だから神の使いってことにはなるかもしれないけど、天使じゃなく人間なんだけどな~。
仕方ないよね背中から天使の羽生やして悪魔と戦ったりしたら、そう考えることも仕方ないわよね。
でも仕方なかったのよ、空飛ぶためには女神の翼付けないと飛べないんですもん、あれは仕方ないっと思いたい。
私が大通りをゆっくり歩いて行くと見知った顔も見つけることができた。
パン屋の奥さんにリナちゃん、ナタリーさんにアイナちゃん、ギルドの受付嬢のレインさんに黒剣のパーティーメンバーに四閃のパーティーメンバーも手を振ってくれていた。
他にも顔見知りの冒険者や商業ギルドの職員の人たち、私と一緒に新しい家を見て回ってくれた女性係員もいた。
そんな知り合いも多く見てけることができた道も、中央の噴水前で止まった。
思えば知り合いも大分増えたわね、冒険者として治療してあげた人や露店に買いに来てくれた人ギルドの職員さんなんかも居た。
皆のいるこの町を守れたのよね、皆からの感謝の言葉に私は実感を持つことができた。
私は皆の笑顔を守ることができて自分も嬉しく思っていた。
これで私はまた日常に戻れると安息して皆に歓迎されながら町を歩いていくのだった。
聖女様って呼ばないで 渡海 @tokaisage
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