第6話 恋人達のクリスマス
今日はクリスマスイブ。
私は今、お台場にあるマンションに来ている。兄と、兄の恋人と三人連れだ。
「由紀子さん。その情報は信頼できるのでしょうか?」
「確かに、情報の元があの遠山玲香だっていうのが引っかかるよ」
「大丈夫です」
そう聞いて来たのは私の兄、秋山辰彦と兄の恋人アイリーン時山さんだ。
「遠山伍長のハドロン改に搭載してあるAIのララちゃんは私のお手製で超絶高性能ですから。そのララちゃんの情報ですからね。信頼度120パーセントです」
「凄い自信だな」
そう言いながら兄はインターホンのボタンを押す。するとすぐにドアが開いた。中から出迎えてくれたのはこの部屋の奥様である
「いらっちゃい」
まだ二歳くらいの天音ちゃんは、たどたどしいがきちんと挨拶をしてくれた。そして、だっこしてほしいとせがんでくる。私は迷わず彼女を抱き上げた。
もうすぐ臨月の紀里香さんは笑顔で私たちを迎えてくれた。
「多分、ここからよく見えると思うの」
東京湾を望むマンションの最上階。ここで世紀の天体ショーが見られるのだという。遠山伍長からの情報である。
「うちの主人からも連絡が入ったわ。多分見えるって」
紀里香さんのご主人は、遠山伍長と一緒に出撃していた斉藤大尉。私たちは彼らの作戦成功を祝い、そしてその成果を見届けるためにここへ来た。
時刻は午後9時55分。紀里香さんがベランダへと続く窓を開け案内してくれた。もう遅い時間なのに天音ちゃんは元気いっぱいだ。
「おほしさまたくさんみえるの?」
「ええ。見えるよ。天音ちゃんのパパが教えてくれたのよ」
私の腕の中ではしゃぐ天音ちゃん。私は南の空、おうし座の方角を見た。
すると、いくつもの流星が見え始めた。たくさんの流星が現れては消え、現れては消える。
一際明るい火球も見えた。それは東京湾に落ちる直前で燃え尽き消えてしまった。
「きれい。おほしさまきれい!」
流星雨。
いや流星豪雨とでもいうべき大量の流れ星。いくつもの流星が同時に現れては消え、また現れては消える。その連鎖は絶えることがない。
玲香さんありがとう。
あなたの活躍でこんなに美しい星空を眺めています。
兄も、アイリーンさんも、天音ちゃんも、紀里香さんも、そして東京中の恋人たちもこの光景に魅入っているでしょう。
この日の夜、東京上空で見られた大量の流れ星。
翌日の朝刊には遠山伍長の顔写真と共に紹介されていたという。
[おしまい]
遊星迎撃隊―Starship Breakers 【リメイク版】 暗黒星雲 @darknebula
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