CHAPTER1 就任

1話『王の席』

あの出来事から半年が過ぎた

あの日私は唐突過ぎる現状にそれを夢だと思っていた

だが来る日も来る日もあの王座はポッカリと空いていた

狙っていたはずの席に私では無い、父が座っているという夢を見ようとしている自分に嫌気が刺した


今は国のお祭りムードも終わり

血の一滴も残らなかった父は失踪扱いになった事により

次期王の就任準備の為にまたバタバタとしている


明日戴冠式がある

なのに今日もまた空席の王座を眺めていた

私は何をそんなに思い詰めているのだろう

ほんの一瞬好きな父親が戻ってきて

たった1回それっぽい言葉を伝えられただけなのに……


未だに私の中を漂っていた


「……馬鹿みたい」


誰も居ない王座の広間で呟いた声は酷く響いた


が急に辺りが静まり返った


「何が?」


突然かかる声に私は硬直していた

体が動くのを拒否していた


始めての感覚だった

誰も居なかったはずの空間が急に重くなるような圧倒的圧

例えるのならそれは

王の圧と言うべきだろうか


明日からそれになる筈の私がこの圧を前にちっぽけに感じた


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箱庭の世界 @nakame0086

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