男子校生活スタート
期待半分、不安半分で東京に向かった俺は、赤城大学付属中の寮"飛翔寮"へと向かった。
飛翔寮では、先輩2人と1年生2人、計4人1部屋で暮らすことになる。そのメンツは当日知らされるため、当然俺はまだ知らない。どんな人と一緒になるのか、素直に楽しみだった。
最寄駅からバスに乗り、飛翔寮に着いた。中に入ると、すぐに大きめのホールがあった。予想とは異なり、あまり盛大に歓迎をするという感じではないらしい。ホールの中には新入生用のパンフレットと、授業で使う教科書、それと部屋割りが書かれた紙があった。部屋割りにはこう書かれていた。
302号室
6年 高木 義人
3年 室井 修
1年 深山 秀介(俺)
1年 齋藤 勇気
同室者は高木さん、室井さん、斎藤と言うらしい。それを確認して、俺は302号室へと向かった。
302号室にはすでに俺以外の3人が集まっていた。
「失礼します!1年の深山です!よろしくお願いします!」
「おぉ、君が深山くんか。」そう声をかけてくれたのは6年生の高木さん。髭を蓄えた風貌は、とてもじゃないが18歳には見えない。貫禄のある人だった。
「あ、深山くん来た!よろしくね!」次に声をかけてくれたのは3年生の室井さん。顔のつくりが女性的で、いわゆる「男にモテる」タイプだと感じた。
「齋藤です。よろしくお願いします」最後に声をかけてきたのは1年生の齋藤。非常に精悍な顔立ちをしている。身長に関しても170cmある俺よりも頭一つ抜けていて、しかも坊主頭だ。野球部でも入るのだろうか、一昔前に甲子園を沸かせたあの選手と同姓同名だし。
「1年生の深山です。よろしくお願いします。」俺は当たり障りのない自己紹介をした。
4人の自己紹介が終わった後、さっきのホールで集会があるということなので向かった。ホールでは総合寮長の挨拶があるらしい。寮担当の先生によるありきたりな話が終わった後、壇上に立ったのは高木さんだった。
「はい、学生注目!」「なんだー!!!!!!」なんだなんだ、よくわからない儀式が始まっている。
「一昨年、昨年に引き続き総合寮長の高木だ! 1年生の諸君、飛翔寮は最高に面白い場所だ!6年間、男子校ライフを満喫したまえ!!!!!」「おー!!!!!!!!」先輩たちを中心に鬨の声が上がった。俺は完全にその雰囲気に呑み込まれてしまった。一方で隣にいた高木はひどく感銘を受けたらしく、鬨の声のあと、先輩たちの歓声に自分も加わっていた。
というか、一昨年、昨年も総合寮長だったのか、高木さんって見た目によらずめちゃくちゃ優秀なんだな…そう思っていた。しかし、歓声から聞こえたのは予想外の事だった。
「高木ィ!今年こそは卒業しろよォ!!」ん?今年こそは?
「深山くん、深山くん、大丈夫?」そう声をかけてくれたのは室井さん。
「大丈夫ですけど、ちょっと面食らってしまいました…」
「そりゃそうだよねえ…寮ができたときからの伝統らしいんだけどね。初めての人にはしんどいよね。僕も初めて見たときドン引きしちゃった けど、何回か見てればそういうもんだって思えてくるからがまんがまん」
「そうなんですか…」
一通りの儀式が終わった後、俺らは食事や入浴を済ませ、302号室に戻った。齋藤はまだ帰ってきておらず、俺と先輩2人という構図だった。
「深山、初めての"儀式"はどうだった?」高木さんに聞かれた。
「いやあ、なかなかすごかったっすね」
「ハハハハハ。そうだろう。この寮はすげーんだ」
「そういえば高木さん、この子たちに例のことは言っとかなくていいんですか?」室井さんが意味深なことを言う。
「例のこと?ああそれか。えーとな、さっき歓声のなかで「今年こそは」みたいなこと聞こえたか?」
「はい。」
「俺な、3回目なのよ、6年生やるの」
「ええええええ」思わず声に出てしまった。
「やりたくない勉強をさせられるのが嫌で、気づいたら6年生3回やってた」
こういう時に後輩はどんな態度をとればいいんだろう。俺はただごまかし笑いをするだけだった。
斎藤が帰ってきた。高木さんは齋藤にも同じ質問をした。
斎藤は「チョー楽しかったっす」と答え、高木さんは俺の時と同じように「ハハハハハ」と笑った。
「まあ、じきに深山も慣れるさ」
「そんなもんなんですかねえ…」
「さて、明日から授業が始まるよ!もう寝ましょう!」そう室井さんが言う。確かにもう11時だ。
「えー俺まだ寝たくねえー」高木さんが子供のように駄々をこねる。
「ダメです高木さん、そんなんだから留年するんですよ?」意外と室井さんの言葉にはとげがある。
「しゃーねーなー おやすみー」意外と聞き分けがいい。
それに合わせるように、俺もベッドに入り就寝した。明日から学校だ。頑張ろう。
拗男 雪 @yuki-0305
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