拗男

始まり

 我ながら小さいころはモテていたと思う。男女問わず友達は多い方だったし、小学校高学年という一般的にはかなり早い段階で彼女ができていた。


しかも勉強ができたので、親に勧められるがままに名門私立中学である赤城大学付属中を受験し、合格を果たした。赤城大学付属中は全国的に名の通っている私立大学・赤城大学の付属校という立ち位置ながら、実に半分以上の生徒が大学受験をし、他の国立大学や海外の大学へと進学していく。赤城大学への進学を考えつつほかの選択肢も視野に入れられる素晴らしい学校だ。


1つ欠点を挙げるとすれば、この学校は今自分が住んでいる地域からだと通うのが難しいことだ。新幹線を使おうにもそもそも新幹線の駅まで出るのが難しいし、仮に新幹線通学をするにしても莫大な費用がかかる。合格したはいいが進学するとなると親に多大な迷惑をかけることになる。

 

そう考えた俺は、別で合格していた地元の私立中学である高山中に進みたいと親に申し出た。高山中は進学実績こそ赤城大学付属中には及ばないが、家から自転車で通える距離だし、地元の友達との関係を壊さずにいられるかもしれない。


 しかし、親から返ってきたのはある種当然ともいえる言葉だった。

「せっかく合格したんだから行きなさいよ」

 親としては、高山中に行って確実に受験を経るよりも、赤城大学に確実に行ける付属中に行ってほしいということらしい。うちは決して裕福といえる家庭ではないだけに、この判断をしてくれたのは正直有難かった。

 

俺は新幹線で通学をするつもりだったが、親に「こっちの方が安いから」と付属中の近くの寮に入ることを勧められた。親と会えなくなるのは寂しいことだが、通学時間が短縮されるのは正直でかい。二つ返事で入寮を決めた。

 

少し時間が経ち、赤城大学付属中がある東京へ向かう日になった。最寄り駅には家族や友達が駆けつけてくれた。その中には俺の彼女もいた。彼女は「何かあったらすぐLINEしてよ?」と俺に言った。俺もそれに「うん」と返した。キスこそできなかったが、バレンタインデーには手作りのチョコを放課後の教室でもらった。二人で出かけたこともあった。俺と彼女はいわゆる「甘酸っぱい」恋愛をしてるんだろう。そう思っていた。

 

新幹線の発車ベルが鳴った。窓の外にいる母親は涙を流している。父も涙をこらえている。最低でも半年は戻ってこれない。俺は期待半分、心配半分で東京に向かった。


ちなみに、赤城大学付属中は今日珍しくなった男子校だ。しかも高校卒業まで6年。


思い返せば、ここから俺の拗らせ人生は始まったのだ…

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