最終話 白い国



「なんだこの風景…ここ……どこだ…!?!?」

メイルは鉄屑を投げ、どこかに当たる音が聞こえた途端に風景が真っ白になった事に対し、驚きを隠せない。



〝バタン!!!!”



「イッテエエェ!!!イテテテテテ。あーーまじイタイ。。……ん、………ん??どこ??え??

誰ですか!?!?ていうか、あなたなんで肌赤いんですか!?!?」

レイチェルは白い国の景色よりもメイルの肌の赤さに驚く。


「お、お、お前こそ誰だよ!なんで肌が黄色いんだよ!!」

ビビりながらもメイルはレイチェルに怒鳴る。


「あれ…もしかして、赤い国の子?今怒ってる…?ほんとに怒りっぽい人が多いんだ!笑

出会えて嬉しい!!!」

喜びの国からきた刺激が欲しい年頃のレイチェルには、白い国と赤い少年が目に映ってることがとてつもなくイケてる状況なのだ。



〝ドテンッッ”


「ぬぁ、イテテテテテ。んぁ…なぁ…はっはっ、どこじゃ?ここは。ワ、ワ、ワシのサカナはぁ、ワシの魚はどこじゃ!?!?」



「………あ、青い国の人!?」

メイルとレイチェルはハモった。2人は目を合わし、ちょっと恥ずかしくなる。


「ぬぁ?君たちは赤と青の国の子じゃろ…?なんでここにいるんじゃ?そういえばここはどこじゃ?……たしかワシは思いっきり魚を持ち上げて…」


「おじさんは今まで魚釣りしてたって事?ワタシはここに来る前、自転車で爆走して坂で体が吹っ飛んで石碑みたいなのに当たりそうになったらここに着地したわ…」


「ボクは全速力で走ってから思いっきりばかやろう!!って言って鉄屑を投げて…どっかに当たった音を聞いたら…」


「ぬぁ、キミもばかやろうと言ったのかね!」


「おじさんも…?」


「そ、そんなことよりパピーはパピーはどこじゃ…」



「うるさい!!」

またメイルとレイチェルはハモった。また2人は目を合わし、今度はクスッとお互い笑った。



(なんだこの気持ち…)

メイルははじめて誰かと心が通じ合った気がした

。これが〝嬉しい気持ち”だと今はわかっていない。


(なんかスカッとしたわ)

レイチェルはおじさんに怒鳴りつけた事に快感を覚えた。怒った後に起こること全てが悪い結果ではない、と思った瞬間だった。



(な、なんじゃ、72にしてはじめて怒られたぞ。はじめての感情じゃ…)



「そういえば、ワタシもすっ飛んだ時にトラックの運転手がばかやろうって言ってた気が……これが3人の共通点かもね。なんか謎解きみたいで楽しい!」



「……けど、真っ白なここ。変だよ、はやくこっからでようよ」

臆病なメイルはこの不可解な現象にはやくもビビっている。



「なんだかよくわからんが、少年の言う通り、脱出する方法を探してみよう」



そこから2時間、3人はあたりを見渡すが、そこは白い土に白い空が広がっており、音もなく殺風景で何の手がかりもない。

……段々とあたりが暗くなる。日暮れが近い。



「ボク…赤い国でいじめられてるんだ。弱肉強食社会で、まわりは怒りっぽい人ばかり。お母さんはボクが産まれあとすぐ死んじゃって、お父さんの仕事を手伝いながら2人で生活しているんだ。ボクは背が低いし臆病だし仕事が遅いから近所の子からもお父さんからもいつも怒鳴られるんだ…

お父さん心配してるかな…」

2時間脱出方法を探した後、メイルは一旦探す事をあきらめ、赤い国での環境について話し始めた。



「…そうなんだ。。。ワタシの国もあんまりいいところじゃないわよ。周りの人達はみーんな協調的。平和で祝日多くて幸せな国なんだろうけど、どこか刺激がないの。それに妹のミーチェが生まれたことなんてワタシにとったらぜーーんぜん嬉しくない。けど、パパとママ、私が帰ってこなくて心配してるかな…」


「……2人とも自分の国に不満を持っとるんじゃのう。ワシもその気持ちは同じじゃ。ワシの国は自由で…」

おじさんが話し始めたとたんにまた2人がハモる。


「帰りたい。」




「ボク…やっぱりお父さんに会って謝りたい。」


「ワタシも…刺激がないなんて言ってごめんなさい。。パパとママとミーチェに会いたくなってきたわ…」

メイルとレイチェル2人揃って普段なかなか気付くことができない、家族への〝愛”が芽生え始めた。



「ワシもパピーに会いたいのぉう…パピー…、でもどうやって出るんじゃ」

3人は全員、この国から脱出できない状況に〝悲しい気持ち”になり、あたりに〝哀愁”が漂い始める。。。


すると、白い国の空が次第に色彩を帯び始めた。数分後には赤、青、黄、橙、緑などと様々な色が重なり、虹色の景色へと変化し始めた。




〝モソ。モソモソモソ。モソモソ。ピカーーーーン”


3人が〝悲しい気持ち”になった後、白い土から1人の冠をつけた男が出てきた。


「カ、カ、カラード王!?!?」



「フハハハ。よくぞ気づいたな、赤い国の少年よ。近頃の赤い国はどうだ?まだ弱肉強食の世界か?あいつは長男のくせに弟たちにひどい扱いを……


………エヘンエヘン。驚かせて申し訳ないな。私はこの国の初代王カラードだ。

君たちが今ここにいる理由について、説明しよう。

今から200年前、私には3人の息子がいたが、三者三様肌の色と性格が違っていてな。私の息子3人は性格上、どうしても一緒に行動することができなかったんだ。これを私は面白がり、それぞれの子供に国を与えた。そして互いの国に踏み入れることができないように魔法をかけたんだ。

瞬く間に三国の分断は深刻化してしまった。そしてやっと自分の愚かさ気づき、魔法をかけた事に後悔した。

私は子供3人に対して、互いの気持ちを理解し合えるような人に育てなければいけなかった。そして1人ひとりが〝喜怒哀楽”をもち、豊かな社会を築けるように育てねばならなかった。

……ただ一度かけた魔法は解くことができなかった。そして私は魔法を使った事で相当な体力を消費し、寝たきりの状態になってしまったんだ。

後悔してもしきれなかった。なぜ私は面白がってあんな事をしてしまったのか………

ただ、それから死ぬ間際に3人の中で1番中性的な性格だった次男から頼まれたんだ。

「ひとつだけ、それぞれの国から出れる方法を作ってくれ。それが親父の罪滅ぼしだ。」と。

「ただし、長男と三男に気づかれたらややこしい事になるからこっそりとやってくれ。」と。

そう、残念ながら息子たちは魔法を使う事ができなかったんだ。つまり、その時が魔法をかけれる最後のチャンスだったんだ。

そこで私は、各国に小さな自分の墓をたてたんだ。そして、面白がって魔法を使ってしまった私の墓に対して〝ばかやろう”と叫び〝何か物を当てたら”、何にも染まっていない新しい国〝白い国”へ行ける様に魔法をかけたんだ。

その魔法をかけた事によって私は現実世界からは去って、今ここに亡霊としているんだよ。


……もうわかるな?君たちがなんでここに来たのか。

少年は鉄屑、少女は自分自身、おじさんはでっかい魚が私の墓に当たったんだよ。

そして今ここで、3人が協力しあい、互いの心を理解した事によって、この200年生まれることのなかった〝複数の感情”を生み出せたんだ。

そう、人類はたった1つの感情では豊かな社会を作り出せないんだ。

人間には〝喜怒哀楽”があり、1人ひとり物事の捉え方が違うから人生が豊かになり、世の中が発展していくんだ。

とても素晴らしい。キミらはこの短時間で人間が本来持つべき感情、〝喜怒哀楽”に触れる事ができた。そしてみんなが〝愛”を再認識した事で、この白い国が虹色になったんだ。これこそが私が200年待っていたものだ。今の時代ならいつかのように全人類が協力し合える気がするんだ。


……だから私カラード王からキミらにお願いがある。よく聞いてくれ。

少年、少女、おじさんよ、この国を発展させてくれ。まずはそれぞれの国に帰り、この国に来る方法を広めるんだ。あとはまかせた!!キミ達ならきっとできる!!!!」


〝ムクムクムクムク”

カラード王は登場よりも素早く土へと沈んでいった。



「……え?え?途中感動的っぽいこと言ってたけど結局こうなってるのってあいつのせいだよね?そしてどんだけ勝手な王様なの!?」

とレイチェル。

「と、いうか結局それぞれの国に帰る方法教えてくれなかったよね…??」

とメイル。



「…………カラードッッッ!!!!」

メイル、レイチェル、おじさんは声を揃えて怒鳴った。





おわり。


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いかがだったでしょうか。

結局オチそこかよと思われた方多いと思いますが…笑


喜怒哀楽をテーマに、を作品中に入れて進めてみました。

感想お待ちしております!笑

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