第28話 第十章 再び故郷で
第十章 再び故郷で
肩に掛けた袋一杯の薬草を摘み終わると、モリオンは屈めていた腰を伸ばし、薬草摘みの手を止める。モリオンと一緒に薬草摘みをしていた姉のティアドラと、従妹のルベはもう十分に薬草を摘み終わったようだ。夏や秋の初めの暑い日に切る袖なしのチュニックに、母親になった人が使用するスカートをはいた二人は薬草摘みの手を止め、柔らかい草の上にすわって話し込んでいる。その二人の周りを元気な女の子に成長した姪のトリンが走り回り、ルベの腕には、まだ乳児の男の子が抱かれている。
「やれやれ……いつの間にかみんな、お母さんになってしまうのねぇ」
姉や従妹の様子を見ながら、袖なしチュニックにズホン姿のモリオンはそっと呟き、草の上に座って寛いだ。
「モリオン、貴方には一緒に子供を作りたいと思う人はいないの」
一人でいるモリオンに、ルベが遠慮無く聞いて来る。
「いる事はいるけれど、子供はまだ先になりそうね」
モリオンがこまった顔で答えると、ルベはそれ以上モリオンに問う事をせず、ティアドラとのおしゃべりにもどった。
それにしても、時が経つのは早いものだ。
季節はもう、モリオンがイナの村を出た春から、秋の手前になっている。思春期の少女が母親になるのには、十分な時間の移り変わりだ。モリオン自身もすっかり変わってしまった。背丈が伸びて大人びた体形になっただけではない。イナの賢女の娘として薬草取りをしていた娘が、一人前の鳥使いなったのだ。右肩にある鳥使いの印がその証拠だ。後はちゃんとした伴侶がいれば、申し分ないのだが。こればかりは仕方がない。でも一人前の鳥使いの仕事は、しっかりと任されている。イナとの交易の責任者も、その仕事の一つだ。
今回モリオンは、消火剤の火消しをイナの村に渡す目的で、イナにやって来ていた。イナの村人達が火事の時に役立つ火消しに興味を持ち、是非ともほしいと言ってきたからだ。その代り鳥使い達は、イナで採れる薬草や果樹の林で採れる果実などを持って帰る約束になっていた。モリオンはこの交易の責任者としての仕事をしながら、空いた時間で姉や従妹と薬草取りに出かけたのだ。昔のように仕事としてではなく、姉や従妹との他の沿い時間を過ごすためにだ。
薬草取りをする薬草の丘は、賢女の血筋の女性しか入れない場所だ。姉も従妹のルベ、姪のトリンも賢女の血筋で、薬草の丘に入る事が出来る。ルベの子供は男の子だったが、乳児なので特別に薬草の丘入りを許されている。モリオンも賢女の血筋の一人として薬草の丘に入り、一緒に育った姉や従妹との、誰にも邪魔されない寛いだ時間を過ごしている。村を出て鳥使いになったとは言っても、賢女の血筋には変わりないのだ。
モリオン達は草の上から立ち上がると、帰り支度を始める。モリオンは立ち上がる前に傍らに赤いきれいな花が何本か咲いているのを見付け、その花の一つを手折ってから立ち上がった。
「トリン」
モリオンは幼い姪を呼ぶと手折った花を姪っ子に持たせ、抱っこしてやった。モリオンに抱っこされたトリンは、片手で花をしっかりと握りながら、空いている手でモリオンの肩にある、鳥使いの印を撫でる。トリンはモリオンにある鳥使いの印が、不思議でしかたないらしい。
「トリン、もう帰るわよ」
ティアドラに呼ばれたトリンはモリオンから離れると赤い花を持ったまま、母親の元にまっすぐ走っていく。モリオンとティオドラは、薬草で一杯の袋を持って、抱っこ紐を使って赤ん坊を抱いているルベと共に、薬草の丘の斜面を下っていく。ルベが採った薬草まで運ばなければいけないので、薬草の嚢はおもかつだが、これも楽しい時間だった。
三人が薬草の丘の中腹あたりに来たところで、遠くの空で一羽のベヌゥが飛び回っているのが見えてきた。鳥使い達がイナに滞在している間は、ベヌゥ達は近くの森に自由に過ごしていて、村でベヌゥ立見る事はなかった。たまに遠くで空を飛ぶベヌゥの姿が、見られるだけだ。ティアドラとルベはベヌゥを見ると、足を止めて空を飛ぶベヌウを見上げる。イナで育った二人には、ベヌゥはまだ珍しい存在だ。モリオンも二人に合わせて立ち止まるとベヌゥに目をやりながら自分が正式に、一人前鳥使いとなった時の事を思い出していた。
草原の狩猟民の一部が樹海を出て騒動を起こしそうになった時、モリオンがイナの村人と草原の狩猟民との衝突を阻止して鳥使いの村に帰って来ると、一人前の鳥使い達が住む宿舎への移動が待っていた。まだ伴侶のいない大人の鳥使い達の為に用意された宿舎で、一人一人の鳥使い達に個室が用意されていた。若手鳥使い達の宿舎から大人の鳥使い達の宿舎への移動は、モリオンが完全に一人前の鳥使いとして認められたことを意味している。宿舎の移動が終わるとモリオンには、一人前の鳥使いとして受けるべき儀式(イニシエーション)が待っていた。移動した次の日の夜明け前に、身体を清めるための浴室で身体を清め、儀式用の白衣を着ると長老達が特別な儀式をする小屋に入り、そこで鳥使いの印を受ける。これで朝日が降り注ぐ中、儀式の小屋から出てきたモリオンは、完全に一人前の鳥使いにとなったのだ。
モリオンは鳥使いの印を受けた後、鳥使いの印を受けたものに定められた五日間の安静期間が過ぎると、ジェダイドに乗って樹海の聖域へと向かう。樹海で最も神聖な場所である聖域にパートーナーと共に赴き、聖域で一晩過ごすのも一人前の鳥使いになる儀式の一つだ。
モリオンが見た聖域は、樹海で最古の樹木の群れが、古すぎて石になっている場所だった。石になった巨大な樹木が立ち並ぶ中でモリオンはジェダイドと共に一晩を過ごす。樹海と言うものをもっと深く知る為に……。これが一人前の鳥使いになったものが受ける、儀式(イニシエーション)の全てだ。
一人前の鳥使いになるものは全てこの儀式(イニシエーション)を体験し、正式な鳥使いとして認められる。モリオンも今では堂々とした、一人前の鳥使いとして生きている。
イナの空を飛んでいたベヌゥが姿を消すと、賢女の血筋である三人の女性たちは、再び薬草の丘の斜面を下り、果樹の林を抜けてイナの村へと帰っていく。村に帰ってくると三人は、取ってきた薬草を持って村の倉庫に向かう。倉庫の前ではイナの村人と鳥使い達とが、鳥使いの村へ運んでいく荷物の準備をしていた。倉庫の中にはイナの村人が頼んでいた火消しが収められていて、倉庫の前の荷物置き場には、その火消しに見合うだけ薬草が荷造りされて置かれている。モリオンとティオドラは三つある倉庫のうち、薬草用に建てられた倉庫に薬草を入れると、自分達の家へと向かう。鳥使いの村への帰還が明日に迫ったモリオンが、母や親戚達に挨拶するためにだ。三人が母屋に入るとモリオンはさっそく、中で食事の準備をしている叔母や従妹に、明日イナを去る旨を告げ、一人一人と短く会話を交わした。そして最後に、母屋の片隅でじっとモリオンを見ている母の元に行き、しっかりと手を取り合った。
「お母さん。私は明日、鳥使いの村に帰ります。また何時かイナに来ますから、それまで元気にしていて下さいね」
モリオンが挨拶すると、母はモリオンの手をしっかりと握り返してきた。
「もう帰ってしまうのかい、せっかくここに来たというのに」
モリオンに語り掛ける母の声は、少し弱々し具聞こえる。母は草原の狩猟民の事件があった後、賢女の地位を姉のティアドラに譲っていた。ち村の長老達に行ったように、モリオンが赤熱の薬を届けに来たというのに。一線から身を引いた母はその後、公式の場にはいっさい出ず、ひたすら賢女に伝わる知恵の保護と、忘れられていた賢女の知恵の掘り起こしに努めているという。
「モリオン、これをもっておゆき」
母握っていたモリオンの手を離すと、来ていたガウンの懐から小さな石を取り出した。
「これはこの間見付けたものだよ。何かはわからないけれど、貴方が持っていた方がよいと思ってねぇ」
モリオンは母から石を受け取ると、じつとその表面を見る。石の表面にはくっきりと、女性の姿らしいものが彫られていた。
「これは……」
「それに彫られているのが誰だかは知らないけど、とにかくもっておゆき」
母に言われモリオンは、石を握った後、来ている服のポケットに仕舞いこんだ。
「有難う、お母さん」
モリオンが母とは話し合っても、仕事から帰ってきた親戚達が、夕食の為に母屋へとやって来る。男女が別々の家で寝起きしていても、母屋で一緒に食事をするのがイナの習わしだ。モリオンは母としっかり抱き合って別れを惜しんだ後、食事に来た男性たちにも挨拶をして母屋を出ると、鳥使いの野営地になっている空き地に向かった。
その空き地は、新しい家を建てる必要が出来た時に使い予定で置かれているもので、まだ利用する予定が無く、鳥使い達の野営地にされていた。鳥使い達はこの空き地に、町へ商売に行ったときと同じように、天幕を立てて寝泊まりしていた。夕暮れが深まる中、鳥使い達の天幕の前では、鳥使いと一緒にイナの若者達……得に鳥使い達と親しくなった若者達が、鳥使いと飲食を共にしていた。鳥使い達がイナを離れる前に、お互いの親交をふかめておこうと言うのだ。野営地に戻ったモリオンも、鳥使いとイナの若者の中に入り、暫く楽しい時間を過ごす。そしてイナの若者達が解かれの挨拶をして帰っていくと、それぞれの天幕に戻り、明日に迫った鳥使いの村への帰還に備えた。
翌朝モリオンは、同じ天幕を利用していた女性鳥使いと共に天幕を片付けると、イナの村人から借りた荷車に騎乗具や他の荷物と共にのせ、倉庫の前まで移動する。倉庫の前では荷運び用の家禽、マダラウズラを連れたイナの若者達が待っていていた。十二羽のマダラウズラの中には、鳥使いの村に運ぶ荷物を素手に背負ったものもいて、イナの村人が手早く準備をしてくれたのを現していた。イナの若者達は鳥使い達の荷物をマダラウズラの背中に着けた器具に固定させると、村外れに作られたベヌゥの離着陸場へと始め、地鳥使い達も自分達の騎乗具をもって、離着陸場に向かう。
イナでベヌゥ達の離着陸場とされている、イナの賢女が長老達を引き連れて、モリオン達の到着を待っていた丘だった。丘の上に着くと鳥使いとイナの若者の一行は、家禽の背中から荷物を下ろし、鳥使い達は家禽を連れた若者達に別れを告げた。イナの若者とマダラウズラが村へ帰っていくと、鳥使い達はそれぞれのパートナーと、荷運び専門のウルー・ベヌゥを呼ぶ。ベヌゥ達は鳥使いの呼び掛けに応じ、次々と離着陸場の丘に降り立ち蹲った。鳥使い達は家禽が運んできた荷物や天幕をウルー・ベヌゥが背負う物入れに入れ、先にとばしてやる。その後、鳥使い達はパートナーの背中に騎乗具を取り付けてベヌゥの背中に乗ると、朝の空に向かって飛び上がる。
イナの村外れの丘を飛び上がったベヌゥ達は、鳥使い村への帰路を順調に飛んで行く。 果樹の林の上を通り、果樹の林に続く森を通り越したら、もう樹海周辺部だ。樹海雌雄編部に入ると、鳥使い達は樹海の様子を伺いながら、パートナーとの飛行を続ける。鳥使い達は常に、樹海に異変がないかを見ているのだ。一見したところ、樹海周辺部には何の以上もなさそうだ。正体不明の飛行物体が樹海を襲う事も、樹海を焼き払おうとした奇妙な飛行物体の事件以来、起こってはいない。ただ最近、小さな飛行物体が目撃されているのが気掛かりなのだが。しかし鳥使い達の目は、樹海のある変化を見逃さなかった。樹海の樹木の間に咲く、様々な色をした花の存在だ。
[ここにも、ベダの花が咲き出したね]
一人の女性鳥使いが、イドを使って鳥使い達全員に伝える。
[ああ、そうだな。これは面倒な事になるぞ]
[そうだ。何とかしないとな]
鳥使い達は、ベダの花を見ながらイドを使って話し合う。ベダはある問題を持った花なのだ。
秋が五回来るたびに咲き始めるベダの花は、大量に一斉開花して樹海周辺部を埋め尽くし、花が終わると多量の実を付け、その実を食べる動物達を増加させた挙句、一斉に枯れてしまうのだった。一度咲いたら樹海周辺部の生態系を壊してしまう。ベダはそんな花だった。モリオンはまだベダの一斉開花を見てはいないが、先輩鳥使い達からベダの話しを聞いて、ベタの開花に注意することを知っていた。しかしこの時、ベダの花に注意するモリオンの目に、ベダよりも興味を引くものが現れた。太陽の光を受けて銀色に輝く鳥が突然現れ、ベヌゥの横を飛び去って行ったのだ。まるでベヌゥを、銀色一色にして小さくしたような姿をしている。
[見て、流星の鳥が現れたわ]
めったに姿を現さない鳥の出現に、モリオンは自分の驚きを他の鳥使い達に伝える。
[本当に流星の鳥だ。でもどうして、今あらわれたのだろう]
他の鳥使い達も、流星の鳥の出現に驚いている。しかしモリオンは、流星の鳥と共に誰かの意識を感じていた。ジェイドの意識だ。この流星の鳥は、ジェイドを知っている……。
[ごめんなさい。ちょっと流星の鳥を追っていきたいの。いいでしょ?]
[ああ、いいよ。でも、どうして?]
[ジェイドに会えるかもしれないのよ。じゃあね]
仲間に自分の意思を伝えると、モリオンはジェダイドをベヌゥの編隊から外すと、理由性の鳥を追っていく。
流星の鳥はモリオンとジェダイドを導くように樹海周辺部を飛ぶと、樹海の前にある、大きな滝の前に降りて行った。滝壺の前に立っているある人間の隣へと。
「ジェイド!」
突然のジェイドの出現に驚きながらも、モリオンはジェダイドを滝壺の前に着陸させるとベヌウのから降り、とうとうと流れ滝とその滝壺に目をやる。滝壺の淵には騎乗獣と荷役獣むいて、二頭ならんで滝壺の水を飲んでいる。ジェイドはこの滝壺へは、家畜達に水を飲ませに来たのだろうモリオンはジェダイドに此処で待つように指示すると、大急ぎでジェイドの元へと入っていった。久しぶりに再会したモリオンとジェイドはしつかりと抱き合い、お互いの無事を確かめる。
「ジェイド、元気だったのね」
「あぁ、君ももうすっかり、立派な鳥使いになったね」
二人はお互いにの無事を確かめ合うと、口づけを交わし、再びしつかりと入り抱き合ってからお互いの手を離し、ジェイドの傍らにいる銀色の鳥に目をやる。二人が離れるとすぐに、ジェイドの傍にいた流星の鳥が、ジェイドにすり寄っていく。随分と、ジェイトドになれているようだ。
「この鳥、もしかして流星の鳥?」
「そうだよ」
ジェイドはモリオンの質問にあっさりと答えると、ベヌゥに似てはいるが、背の高さが人間の大人の肩ほどしかない鳥の頭をなでる。
「よく慣れているわね」
「そうだよ。大きな嵐の後に、樹海周辺部の中で迷っている雛を見付けて育てたら、流星の鳥になったってわけさ」
流星の鳥に降れるジェイドは、本当にうれしそうだ。そんなジェイド見ていてモリオンの心にも、暖かい物が伝わって来る。シカシモリオンは、流星の鳥とジェイドに暖かい物以上の、何が特別なものを感じていた。鳥使い候補の少年少女がパートナーになるベヌゥの雛と繋がった時に感じる、銀色の光のようなものだ。
(まさか!)
神玄と流星の鳥を包む光に感づいたモリオンの頭にはある考えが浮かぶ。ジェイドと流星の鳥を見るまでは考えなかっただろう、モリオン自身が、自分の考えに驚いていた。ソコデモリオンは自分の考えを確かめるために、ある事ジェイドに頼む。
「ジェイド、流星の鳥をベヌゥと一緒に飛ばせられないかしら?」
「えっ、あぁいいよ」
ジェイドはモリオンの思わぬ頼みに驚きながらも、快く日は受けてくれた。
「ジェダイド、飛んでみて」
モリオンは滝壺の前で蹲っていたジェダイドに、空を飛ぶように支持する。ジェダイドはモリオンの指示に従って滝壺の前から飛び上がると、続いて流星の鳥も空に舞い上がる。結果は、モリオンが期待していた通りだった。
大きな銀色の鳥と小さな銀色の鳥は互いに並んで大空を、輪を描きながら飛び続ける。
種類が違っていても、ベヌゥと流星の鳥は、お互いの心が通じ合うようだ。
「有難う。もういいわ」
自分の考えの正しさが解かったところで<モリオンはジェダイドを元の滝壺の前に着陸させ、ジェダイドに続いて流星の鳥も着地する。
「思った通りね。ベヌゥと流星の鳥は、仲良くやっていけそうね」
仲良く一緒に地上に降りたジェダイドと流星の鳥を見ながら、モリオンは自分の考えの正しい事を確認する。
「思った通りって、どういう事だい」
モリオンが何かを企んでいるのに気付いたジェイドは、流星の鳥の羽根を撫でながら、モリオンに問い掛ける。
「ジェイド、一週間後にまだここ庫に来てくれない。今度あったら貴方に、重要な話をするかもしれないから」
いきなり何の話か分からない、重要な話をすると聞き、ジェイドは不安そうにしている。だがモリオンは一週間後に会うほんとうの目的を言わなかった。
「詳しい事は鳥使いの村に帰ってから、イドを使って伝えるわ。じぁあまた、一週間後にね」
「あぁ、そうするよ」
「じぁあ、また一週間後にね」
モリオンはジェイドにそそくさと別れを告げると、ジェダイドに乗って飛び立ち、先に鳥使いの村へと向かっている、仲間の後を追う。村に帰ったら長老達に、ジェイドと流星の鳥の事を話し、自の考えを聞いてもらおう。それで長老達が良い判断わしてくれれば……。モリオンの心は弾んでいた。
鳥使い村に戻ると、モリオンは早速長老達に面会を求め、要求が通ると会議の間に入ると流星の鳥を連れたジェイドにあった事と、ジェイドと流星の鳥の様子から、を自分が感じた事を正確に伝える。そして最後に、長老達を驚かせる提案をした。長老達はモリオンの提案に驚きながらも真剣にはない愛。モリオンの提案を受け入れてくれた。モリオンは大喜び樹海周辺部にいるジェイトと、イドを通じて自噴が考えた事と、長老達が自分の考えを受け入れた事をイドで伝える。そしてモリオンは、ジェイドに向かって自分の考えを受け入れてくれるかどうかを問いただす。そしてジェイドはイドを通じて、モリオンの考えを受け入れると伝えてきた。
(あぁ、良かった……)
モリオンは自分の企てが成功したことにほっとしながら、難しい判断をしてくれた長老達に感謝した。それから一週間後、モリオンは喜び勇んで、ジェイドが流星の鳥と一緒にいた滝壺へと、ジェダイドと共に向かった。
その日モリオンと滝壺に向かったのは、長老ビルカと若手教育係であるユーディアだった。この二人にはそれぞれ重要な役割があったる長老ビルカはジェイトに会って、ある宣言をする為に、ユーディアは鳥使いの一人として、ジェイドがビルカの宣言を受け入れた時の証人となる為に。モリオンは言うと、何時もとは違う二人乗り用の騎乗具をつけたジェダイドに乗って、滝壺に向かって飛んで行く。二人乗りの騎乗具は、普通は鳥使いでない村人達を乗せるのに使われていたが、今回モリオンは、とても愛おしくおもっている人を乗せて帰るのに、二人乗りの騎乗具を使っていた。愛しい人を二人乗り騎乗具の後部座席に乗せて帰るのだと思うと、心はこの上もなくわくわくしていた。だがまずその前に、ジェイドに合わなければ。色々と考えているうちに目的地の滝壺が見えて来だ。モリオン一行はゆっくりと滝壺に近付き、そこにジェイドがいるのを確認した。ジェイドは滝を背にして、流星の鳥と一緒に立っている。ジェイドは約束通り、滝壺に来ていた。流星の鳥と一緒に。モリオンたちベヌゥ達をゆっくり滝壺の前に着地させると、待っているようにベヌゥ達に指示するとジェダイドの背中から降り、ジェイド目がけて走り出した。
モリオンはジェイトに元に走り寄ってお互い軽く抱き合ってから、会話を交わした。
「約束どおり、来てくれたのね」
「あぁ、もう心を決めたよ」
「騎乗獣と荷役獣はどうしたの?」
モリオンはいつもジェイドと一緒にいた二頭の家畜がいないなのに気付き、ジェイドに聞く。
「元の飼い主が連れていったよ。また家畜を養えるようになったからってね」
「そうなの」
ジェイドは樹海周辺部での生活に欠かせない二頭の家畜を手放していた。やはり鳥使いの村に、帰るつもりのようだ。
「ジェイド、本当に私達の提案をうけいれてくれたのね」
「本当だ」
ジェイドは語気を強めてモリオンの問に答えると、モリオンの後ろにいた長老ビルカに近寄り、大声で自分の決意をビルカに伝える。
「長老ビルカ。俺は鳥使いの村に帰る決心をしました。どうかもう一度、鳥使いの仲間に加えていただきたく思います」
「よしわかった。お前を流星の鳥の鳥使いとして認める。堂々と村に帰り、モリオンを伴侶にするがよかろう」
ジェイド決心が確かめられると、ビルカはすかさずジェイドを流星の鳥の鳥使いに任命する。これはモリオンの願いが、現実になった瞬間だった。ジェイドはビルカに向かって頭を下げ、ビルカの言葉を受け入れた事を現す。そしてビルカはジェイドの肩に両手を置き、流星の鳥の鳥使いジェイドを祝福し。ビルカがジェイドから離れると、コントはカーネリアがジェイトと軽く抱き合い、ジェイド祝福した。更にビルカは自分のパートナーの騎乗具の入れ物から一着の騎乗服を取り出すとジェイドに手渡す。騎乗服を受け取ったジェイドは、その場で騎乗服を身につけた。これでジェイドは、完全にまた鳥使い一員になったのだ。前代未聞の、流星の鳥の鳥使いといて。
「さぁ、鳥使いの村に帰ろう。みんな驚くぞ。流星の鳥の鳥使いなど、考えてもみなかったからな」
ジェイドを無事鳥使いに戻す事に成功し、長老ビルカはにこやかに鳥使いの村への帰還を告げ、自分のパートナーに騎乗する。ユーディアもその後に続いて自分のパートナーであるベヌゥに乗り、モリオンとジェイドは、ジェダイドの二人乗り用の騎乗具に乗り込む。
二人乗り用騎乗具の全部座席に乗ったモリオンは、騎乗具の命綱で身体を固定させると、後部座席のジェイドの様子を見る。ジェイドは自分の身体を命綱で固定すると、モリオンの胴に手を回す。これで二人乗りの体制は整った。
「しっかり私に摑まっていてね。これかは二人で乗っていくのだから」
「もう準備はできているよ」
モリオンは笑顔でジェイドと話ながらジェダイドを飛翔させ、先に飛び立ったカーネリアと長老ビルカの後を追い、鳥使いの村への帰路に就く。そしてジェダイドの傍らでは、小さな流星の鳥が巨大なベヌゥと肩を並べて飛んでいる。
今、モリオン達が飛んでいるのは、村の帰り道だけではなかった。モリオンやジェイドの新しい人生の始まりであるのと同時に、鳥使いやベヌゥ達にとっては、新しい時代への幕開けでもあった。流星の鳥の鳥使いがいると言う時代の。その新しい時代の幕開けを、天頂のビティスが見守っていた。
―――了―――
銀翼の宿命 demekin @9831
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