退魔師や妖怪が実在する現代を舞台にした、いわゆる「悪役転生、原作救済もの」的な作品。ヒロイン達が殆んどのルートで地獄の運命を辿る鬱エロゲの、全ルートで惨殺される悪の親玉に転生した主人公。室矢重遠(むろや しげとお)。最初はちょい強、程度だが様々な事件やヒロインたちとの出会いを通じて成長していく。
なにより本作の大きな魅力は生き生きと描写される多数のヒロインたちであろう。
ローティーン西洋少女の容姿、のじゃロリ超越者、カレナ。因果と運命を見通し、超絶的能力を持つチートヒロイン。時に優しい母のように、時に厳しい師のように、主人公とその周囲を見守りサポートする。
幼馴染にして婚約者 詩央理(しおり)は退魔家当主として成長してゆく主人公に寄り添い、影日向尽くす。内政、知略に長ける優等生系美少女だがチッパイがコンプレックス。主人公の為には時には苛烈な行動も辞さない。
ミリタリーと西洋魔術を融合した能力を操る「魔法師(マギクス)」のマルグリットは金髪巨乳の西洋娘。一見明るいお色気担当だが、凄惨、過酷な幼少期を過ごし、心に深い闇と歪みを抱える。主人公と共にその歪みを乗り越えてゆく。
主人公の妹であり、大の「お兄様マニア」である夕花梨(ゆかり)は退魔宗家の姫君たる権力と従える多数の少女式神で主人公を手助けする。
霊力剣術使いの巫女、単純だが一本気な凪(なぎ)、は所属する退魔流派、「桜技流(おうぎりゅう)」の不隠分子の陰謀に翻弄されるも、主人公一派の助力を受けてその危機に立ち向かい、秘めた能力と要素を開花させていく。
他にも若き桜技流派筆頭巫女、咲莉菜(さりな)、凪の親友 澪(みお)、魔法師(マギクス)名家のお嬢様、明夜音(あやね)などそれなりの数のヒロインが登場するがそれぞれに割と細かい心理描写がありヒロインの記号化、背景化は無い。
さらには主人公とは恋愛関係にはならないものの、それなりに深く描写される個性的な女性キャラも多数。
作者氏のミリタリー知識、歴史習俗知識を感じさせる世界設定もかなり細かくその点も面白い。
この世界にはクトゥルフ的な異次元からの脅威が実在し、その対処は退魔師や魔法師、御刀巫女といった異能者が常に行っている。しかしその異能者組織の中でも権力争いがあるという複雑な世界。また異能者とそうでない非能力者は対立しており、人口としては少数派である異能者を「非人間」として扱おうとする非能力者の勢力も存在する。
悪役転生ものらしく原作主人公との対立パートもある。只ここで面白いのが原作主人公がよくある「不自然に取ってつけたような傲慢漢」ではなく「主人公的熱血正義漢だが行動が的外れで成長イベントに恵まれずずっと底辺の能力、立場」という点。そして原作主人公がハーレムを形成し、何となく悪っぽく見える本作主人公にチクチクと敵対行動を行っていく、というなかなかに芸の細かい展開を見せる。
2022年7月時点で370話を越える長編で読み応えは十分。重厚感の割には陰鬱、陰惨な展開は割と少ない。
好き嫌いは分かれる作風のようだが、私見としては今まで読んだWeb小説の中でもっとも面白い作品である。
他にはない権謀術数感が大きな魅力の一つ。かなりリアルな感じというか、力があるからといって思い通りにはいかないのが非常に良い。
ストーリーも伏線を張りながら進むため「どうなってしまうんだろう」と、続きが気になってしょうがなかった。
原作サイドの悲劇を見ると、一層感情移入しちゃう。
ヒロインが魅力的で、主人公含めて成長していくのもまたこの作品の良いところ。
応援コメント全部返してくれてるので、そういったところも非常に助かるし、楽しめる。
今まで結構な数の小説を読んできたが、この小説は群を抜いて面白い。続きが気になりすぎて、数日かかったが一気に読んだ。追いついた今なお、続きが待ち遠しい。
もとはタイトルから敬遠していたが、瞬く間に世界観に惹きつけられた。
完全にはまったのは4章あたりからかな? 当時(といっても数日前だが)寝る間を惜しんで読み漁った。
もっと評価されて然るべきだと個人的には思う。是非とも一読してほしい。そして布教してほしい。
ゲームの中の全ルート死亡の嫌われキャラに転生してしまったが、とりあえず嫌われることを避けて、元の原作ルートからは何とか逃げている現状……な感じで始まってるけど、まぁ題名から想像するよりも遥かに面白い。というか、題名で損してる名作。星が5桁はあってしかるべき(`・ω・´)b
18禁ゲームの世界が元という割には表現や描写が抑えられていて女性でも読みやすくなっているし、主役は男なんだけどゲームらしい群像劇の形も取っているので、ヒロインや主要人物視点もちゃんと出ていて、物語の奥行きが凄い。
原作ルートの悲惨さや救いのなさが時おり出てくるが、その中身が分かることで、より進行中の物語が深みを持ち面白さが増す手法は見事。ある意味IFルートではあるんだけど、本作の主人公が直接には関与してない展開が多くて、凄惨な運命から逃げられた今って喜びの方が強く感じる。
設定や登場人物も深く練り込まれていて、いつ出版されても良いレベルの出来なので、多くの人に読んでもらいたい名作。シリアスとコミカルの主成分に若干のエロスが入り、ドラマチックに進行する物語を是非一読してほしい。
物語の深みがあり過ぎて、どういうタイトルがついても、それなりに不満を感じそうなので、そこは作品を読んで楽しむことで満足してくだされ_(:3 」∠)_