2.妖怪処刑人小泉ハーン
インパクトがある人にはある題名である。
小泉八雲ことラフカディオ・ハーンを主人公にしたこの小説は凄まじいパワーを持っている。
明治維新は不成功に終わり、東は徳川が西は薩長が支配する日本。
列強も介入しており混沌としているが、その混沌に乗じてか怪しき者達が跋扈している。
そんな時代、ぎらつく太陽の下、荒野を往くのは黒馬に乗った老いた偉丈夫と彼の装備一式を軽々と背負う娘。
彼らが相対する相手は日本古来の妖怪たち。
のっぺらぼう、かまいたち、平家の怨霊になぜかグール、そしてアメイジングデッドガール。
まあ、色々と可笑しい。
徳川ご禁制のダイナマイトを平家の怨霊に投げる耳なし芳一と言う図は、何も知らない人から見れば酷いパロディに見える。
だが、これは芳一が自身の力で怨霊に立ち向かった瞬間であり、人間賛歌の瞬間であるのだからたまらない。
そりゃ突っ込みどころはわんさかと出てくる。
そもそもぎらつく太陽の下の荒野ってどこのテキサスかメキシコだよ。
ってか、なんで小泉八雲が妖怪ハンターやってんだよ! ターヘル・アナトミアは魔術書じゃねぇよ!
とか、まあ色々出てくるが……熱量とパワーに押し切られること間違いないと思う。
読むと元気が出る。
妖怪の解釈も面白い。
かまいたちがまるでクトゥルフ神話の生物めいて書かれたり、のっぺらぼうが一層邪悪であったり。
かと思えば飴買い幽霊の如き母親の強さを想起させたり……。
書き分けが上手いし、話の筋は実は王道でもある。
私はこういうのが書きたいのだなと再認識させてくれた一冊だ。
私は文句なくこの作品を勧めるし、面白くないと言う方には趣味が合わないねと言うしかない。
書きたいことは山ほどあるが、万が一未読の方が興味を持った際に興を削がぬようにこの程度のとどめておきたい。
なお、この本は内容ばかりではなく真面目な筑摩書房から出ている点も変な可笑しみを誘っていると私は思うのだが。
私の愛する作品たち キロール @kiloul
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