女化再起(仮題)

青井まほろば

弱体化

 <大戦>期に急造された練兵場跡、辺境にありふれすぎていていちいち名前も付けられないその場所は、久方ぶりにその本来の機能を取り戻していた。


 人体を模したとわかる土塊が、ばらばらに砕けて地面に転がっている。

 構築に必要な術式の複雑さのわりにはあまりに脆弱だとして滅多に使われぬ、練習用の泥人形だ。

 その正面に、木を削って作られた短杖を持つ少女が、両膝をついている。

 顔面蒼白でよだれを垂らし、虚ろな両目は見開かれ、死人でないことを証明するのはかすかな身震いだけで、執行を待つ死罪人の姿だと言われても異を唱えるものは、そう多くないだろう。


「……ぅ……ひゅ、ぁ、っ……かっ……ぜ、っ……ひゅぅ……ふー……はー……」


 出来の悪い笛のような、あるいは末期まつごのような少女の息が、獣のように荒いものになり、すぐ深く、大きなものへと変わる。


 そしてこの場には、第三の存在があった。


「おつかれさまでした、戦士アウロラ」


 公認魔女の黒いローブを身にまとっているのは、男女定かならぬ、そして仮面じみた美貌の錬成人間ホムンクルスである。


「模擬人形の撃破に半刻。再行動に必要な休息は短く見積もって丸一日。

 これが今のあなたの実力です」


「女神があなたを女にした結果が、これです」

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女化再起(仮題) 青井まほろば @A_Mahoroba

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