第20話 いざ、現代へ!

「ぜえ……はあ………ぜえ……うぅ……………」


姉さんと別れてから。

私は、戦国の町にそびえ立つ桜厘山を登っていた。

完全なる運動不足ですね!あはは!


……って笑ってる場合じゃないよ!

うう……もう足が限界です………


「けんちゃああああああああああああああああああーーーーーーん!」

「うるせー!叫ぶなら桜厘山で…………ってここ桜厘山だったわ!」


いつの間に私の近くにいたけんちゃんが片方耳を塞ぎながら私の手を取る。


「けんちゃん……下りてきてくれてんだ」

「お前があまりにも遅いから心配してたんだよ」

「ほー。心配してくれたんですかー。ほー。ほほほー」

「笑い方がキモい…………」

「なんだとー?」

「いいから行くぞ」


けんちゃんが私の手を引いて歩き出した。



ドキッ



(……えっ?!何で?!今ドキッってした?!)

「早く歩けよ。振り落とすぞ」

「ひえっ!怖い!」



(気のせい、だよね……)














「あ、星野君!」


頂上に着いた私は、星野君に手を振る。

……あ、夏陽もいたわ。


「……お前なあ……………………」

「ぎゃーっ!そんな怖い顔してるとモテないよ!」

「心配ご無用。お前よりモテる自信はあるね」


うわーナルだわーと引く私。


――そんな感じで和んでいたときだった。





「――のあ?」





「ぬぬ、ぬ姉さ………伯?!」


「何で……殿と……おっさんと…………」


戸惑ったように言う伯。

ま、まずい…………

っていうか頂上まで追いかけてきてくれたの?


「えー……あの…………ここまで追いかけてきてくれたんですか?」

「そっ、そんなことより……殿と……おっさんと…………」


ひえええええええ…………やばいよぉ……

っていうか3人とも顔面蒼白しないで助けてよ!


「えーっと……その……あの……あ!その手に持ってる紐って…………」


伯が握っていた金色の紐で話をそらす私。


「え……あ、この前の……のあが忘れてたから……」

「届けに来てくれたんだ……ありがとう」

「……………………」

「……ん?!伯?」


伯は急に黙って私の髪をいじり始めた。

この結び方って…………………………


「私のこの前の……リボン結び」

「ああ」


覚えていてくれたんだ……と私が微笑むと、伯がハッと我に返る。


「そうだ!殿とおっさ……………ガフッ」


「伯?!……気絶してる…………」



私がハッと顔を上げると、足をがたがたと震わせている星野君が立っていた。
















「星野君…………?」


「左門さん………………体が勝手に………」


星野君はそう言って、伯を気絶させた右手を左手で掴む。

体が勝手に……ってどういうこと?


『ふぉっふぉっふぉ。ご苦労じゃったのう』


「「「「っえええええええええええええええ?!」」」」


急に上の方から声がして、私たちは同時に叫ぶ。

上を見上げると…………………………………………誰もいない。


「気のせいかな……………………」

「でも、確かに声が………………………………」


『ああ、確かに言ったぞい』


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」


「「「『うるせーー(わい)!』」」」


再び聞こえた声に、叫ぶ私、それに怒鳴る3人と謎の声の主。

私はあはは……と笑いながら謎の声の主に言った。


「謎の声の主さーん!誰ですかー?」


『ふぉっふぉっふぉ………面白い小娘じゃのう』


「あ、その喋り方神様ですね!おーい神様!」

「お前……発想力子供か」

「子供だもーん」


『ふぉっふぉっふぉ。まあ神様みたいなものじゃの。正確に言うと桜のな』

「桜?桜厘山の?」

『そうじゃそうじゃ。さっきそこの童を操ったのはわしじゃ』


桜厘山の桜の枝がわさわさと星野君を指(?)指す。

おぉ、やっぱしこの桜が神様なんだね!


「じゃあ、神様が星野君を操って伯をキゼツさせたんだ」

『そうじゃ。面倒なことになりおって……後ろは気をつけて見んかいっ!』

「ご……ごめんなさーい」


私は神様にペコペコと謝る。

でも、伯がついてきてるなんて全然気づかなかったもん……


神様がぷりぷりと怒っていると、けんちゃんが口を開いた。


「それより……俺たちは現代に帰りたいんだが…………」

『おお、お主は少し前の……タケルとかいうやつと一緒におった……』

「田辺健一だ。この女子に見覚えはあるか」


『……ん?んむむ?こやつはいつかの………そうじゃ!

にせんにじゅういちねんに儂がくしゃみをしたときに花びらが何枚か飛んだんじゃが、缶に付いとった花びらをこやつが踏んだんじゃ』


そっか!だから花びらが見えなかったんだ。


「それでタイムスリップしたのか。こいつは?」


けんちゃんは夏陽を指さして言った。

夏陽のことを若干忘れていたので少し目を凝らす私。


『ああ、その童はに……にせんきゅうねん……?にくしゃみをして飛んでいった花びらをちっちゃい小娘が掴んだんじゃがな。こやつが飛びついて一緒にたいむすりっぷしおったんじゃ。愛の力じゃの〜〜〜〜』


最後の言葉に反応した夏陽。

ぴきっとこめかみの割れる音が…………


「いい加減に……………」

「ぎゃーっ!は、伯起きちゃうから!」


『…ああ、言い忘れておったがあのタケルとかいうやつ、健一の先祖じゃの』

「……え?」


『あと、たまにタケルを追いかけてきとったシュウゾウとかいうやつは、ホシノの先祖じゃ』

「え?」


『それと、そこの気絶している娘はそちの先祖じゃ』



「……ええええええええええええええええええええええええ?!」


色々なことが急すぎて話が上手く飲み込めないんですけど?!


「……ん………うるさい………」

「お、おい!お前がうるせーからコイツが起きただろうが!」


気絶していた伯がむくりと起き上がった。


「ひゃっ……ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

『こ……っ、これを掴むんじゃ!』


木から花びらが4枚落ちてきた。

私、けんちゃん、星野君、夏陽がそれを掴む。





ピカーーーーーーーーーーーーーーッ















「……ん……むぐぐ…………」


視界が開けた。

うーん、なんだか息が苦しいような…………


「…………ぐぐぐ……ん?のあ、起きたか」

「ぎゃーーーーーーーーっ!変態!重い!下りて!」


私の上には夏陽がうつ伏せで乗っかっていた。


「俺もコイツが重くて下りれねーよ!おい!どけっつーの!」


ゴン!


「いったぃ!ちょっ、やめてくれよ!痛いじゃないか!」

「あ?!だったらさっさと俺の上から下りろ」

「ボクも田辺君が乗ってて下りられないんだっ!お願いだから殴らないでくれ!」


……多分一番苦しいのは私だと思います。

私の下、地面だし。


「おい!田辺!下りろ!」

「……う……ん………………………」


……けんちゃん寝付き良いから…………




「……のあ……………………」


がしっ。





「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」






桜厘山に、星野君の悲鳴が響きわたった。


「あはは…………」


その桜厘山、実に正真正銘2021年の桜厘山だったのでした。






[一章 おわり]

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戦国時代にタイムスリップ?!お殿様のお城で働くことになっちゃった! マグロ @maguro_yayoi

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