第19話 お別れ②


「姉さーーーーーーーーーーん!」

「のあ」


汗を拭いながら、姉さんは私の方を向いた。


「遅かったな。早く掃除しないとおっさんにしばかれるぞ」


……これから姉さんに、雑用係を辞めることを話さなければならない。私がいなくなれば、姉さんは寂しいだろうか。


「………………………………」

「……のあ?」


姉さんが私を覗き込む。私は涙をこらえていた。


「……雑巾、水に濡らしておいたぞ。西の廊下の埃も取っておいた。

どうだ、もうあのガキにぐちぐち言われないぞ」

「姉さん………………」


姉さんは私そっくりな顔をほころばせた。



「私はもう一人でも大丈夫だな」



そのとたん、私の涙腺がゆるんだ。


「うわあああああああああああああん!姉さああああああん!」


「……ちょっ、のあ?!どうしたんだ…………」


「私ぃ……雑用係辞めることになっちゃったよぉ……!

大変だったけど楽しかったよぉ!姉さんにも会えた!シュウゾウさんにもムザウさんにも米さんにも!ついでに夏陽にも!」

「のあ……………………」


私は顔中びしょびしょになって姉さんに抱きついた。

何で泣いてるんだろう。私は現代に帰りたかったのに。


「でも……のあだけが辞めたら不審に思われないか?私とのあは……姉妹で…………」


姉さんが私を引き止めているのが分かった。


「……大丈夫です。不自然にならないように、しておいたので」


そう言うと姉さんはこらえていた涙をぽろぽろとこぼした。


「……そうか。人には……色々な事情が……ズビッ。あるからな。深追いはしない。……元気でな。ヒック」

「……うん。ありがとうございます」


そう言って私が顔を上げると。


「……んぶっ!姉さん?!すごい顔!」


ほっぺをにょーんてして変顔をしている姉さんの顔があった。


「……ふっ。最後くらい笑え」

「……えへへ…………」


私が笑うと、姉さんも笑ってくれたのだった。






 




「……達者でな。のあ」

「うん!バイバイ!」


           伯!


バイバイ?と首を傾げながら、伯は手を振ってくれたのだった。




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