最終話その2(奥の店員さん視点)
そしておれは、田舎に帰って「この放蕩息子が!」と親にこっぴどく叱られて、その後親戚の紹介で面接を受けた警備会社に再就職し、何とか落ち着いた生活を送っています。
あれから3年。コーヒーに関するモノに手を出す事はかなり少なくなりましたが、それでもたまにはコーヒー豆をミルで挽いてドリップして魔法瓶に詰め、仕事の休憩の時に飲んだりしています。
今日は道路工事の傍らで、交通誘導でニンジンを振ってます。そんな所で先輩警備員から無線が入ります。
「おー。そろそろ休憩すんべーやー」
休憩場所で座って、魔法瓶に入ったコーヒーを飲むと、あの頃の大変な事が思い出されます。忙しくも充実した毎日。その中で交わされる、お客さんとの会話。とても充実していて、おれにとっては宝物の経験です。少し蓄えも増えてきましたし、また副業でコーヒースタンドでもやろうかな?
ふと西の空を見ると、そろそろ夕日が沈む時です。その夕日から、懐かしい声が聞こえたような気がしました。よくお店に来ていた、あの女性です。
「あのお客さん、元気にしているだろうか?」
そんな事をふと思い出してしまいます。
沈む夕日を眺めながら、おれは思ってしまいます。
『まだおれは、あなたの事が好きでいて、いいですか?』
話すはひとつ、聞くはふたつ。 皇 将 @koutya-snowview
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