地底の入国審査

 意外です。もっと寒々とした場所かと。旅行者の呟きに、職員は愛想良く答える。

「花も咲けば稔りも有ります。人が暮らす土地なのですから」

 地下に広がる大空洞。わけても首都にあたる最深部は、ドーム状の岩盤が燐光を放ち地の底にあって空の似姿を成している。そして足元には薔薇、アネモネ、ガウラにプリムラ。時知らず乱れ咲きの花々が。

「冥府へようこそ」

 押印済みのパスポートを返しながら職員が朗らかに告げた。

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200~300字くらいで小説を書く 納戸丁字 @pincta

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