第20話 (アリス視点)

私は今、ユリマに言われた話だと、『恋』というものをしているらしい。


しかし、私の恋の仕方は少し独特だった。




ユリマと、上からの命令で精霊使いを殺すために町に来ていた。


正確には、反社会的思想のある精霊使いを殺すという命令らしいが、上からの命令を聞き流していたので、少し危なかったと、自分でも思っている。




この命令が、何故白教会全体に下ったのかはわからないが、とりあえず従っておいた。


「反社会的思想のある精霊使いって言ってもね~、そんなのわかるわけないじゃないですか...」




隣で、命令に対して文句を言っているのは、ユリマ。


白教会の幹部で、私の後輩。




とあるきっかけで、仲良く話すようになった、私の数少ない友達。


というか、今のところユリマしか友達はいない。




みんなは、私の剣技を恐れて、全く近づいてこない。


しかも、白教会総督幹部なんていう立場も与えられていたので、私も誰かに話しかけることが難しく練ってしまった。




「アリス先輩ぃ....もう探すだけの仕事なんて嫌ですよぉ」


うつむきながら私と歩き続ける。




「我慢..しよ?..」


そういうと、ッハっと顔を上げて。




「私が愚痴っていたことは、上に報告しないでくださいよ!?」


「しないよ....安心して...」




ユリマは、そっと胸をなでおろし、ため息をつく。


それと同時に、ぎゅるぎゅるとユリマのお腹の方から音が鳴った。




しばしの間、沈黙が訪れる。


「.....食事....とりましょうか....」




「うん...そうだね」


そう言って、私たちはロック森林に向かった。




なぜロック森林に向かうのかというと、上が下した命令は、


8時から15時まで、反社会的思想がある精霊使いを抹殺、




という命令で、そのあとすぐに16時に幹部集会が今のロック森林の緊急拠点で開かれるので。


町でギリギリまで捜索していたら、移動時間を含むと、間に合わないので、ロック森林で弁当を食べる。




そして、その弁当をユリマと交換しながら食べる。


それが、命令が下った後に習慣化した。




ロック森林まで歩く際は、ユリマと仕事のことやプライベートのことを話し合った。


そして、ロック森林に着き、座る。




「それじゃいただきま~す」


ユリマは、弁当にがっつき、幸せそうな顔をする。




「うまい!さすが私!」


どうやら自分のことを褒めたたえているようだ。




「いただきます...」


私も、ユリマに続いて自分で作った弁当を口に運んでいく。




今日は、スイスチャードにぶどう。


いつもどうりのメニュー。




しかし、このスイスチャードは見た目もカラフルでいいし、ちゃんと栄養もいっぱいとれるし、しかもおいしい。




いいことだらけのメニュー、そして、私がすきなぶどう。


「本当にアリス先輩はいつどうりのメニューですね~」




そう言っているユリマは、見る限りどれもハイカロリーなものばかり。


私がユリマからおかずをもらう時は、できるだけ低カロリーなものをもらっている。




「んじゃ私はぶどうをもらいますね~」


.......スイスチャード食べてよ....




心のなかで、少し毒を吐いてはいるが、私の数少ない友達なので、実際には言わない。


....私...先輩のはずなんだけどな...




まぁ、誰にでも平等に接するユリマだから仕方ないか...


そう諦めて、すがすがしく私の大好物のぶどうを明け渡す。




「う~ん!甘くておいしい!」


そうでしょ、おいしいでしょ。




心の中で、腕を組んで、エッヘンとしている。


「それじゃ私はこれもらうね」




私がもらったのは、若鳥のから揚げ、結構今は値段が高いので、狙ってやった。


これもちなみにハイカロリー。




一つだけ取り、口に放り込む。


「すこし冷えてしまってはいるが、ちゃんとおいしい」




「でしょでしょ」


こうして、弁当を食べ終わった私たちは、雑談をした。




「ってやばいやばい!もう少しで時間ですよ!」


ユリマは、腕につけている時計を見て驚く。




時刻は、15時40分。


「分かった、急ご」




走って、拠点に向かう。


2分ぐらい走った時に、前方から精霊の気配がした。




私はその時、精霊使いを見つけ次第抹殺という命令と勘違いしていたため、すぐに剣を鞘から引き抜き、気配がした方向に全力で走る。




そこには、精霊の気配を漂わせている男がいた、おそらくこの人が精霊使いだろうと思った私は、高速の7連撃を繰り出す。




しかし、その男は連撃を全て受け止めた。


私は、信じられない光景に驚いた。




私が全力で連撃を繰り出したのに、それを全て受け止められたのだから。


一回受け止められたとしても、それ以降の斬撃を受け止められた者は、今までにいなかった。




その男の顔を見た瞬間、私の心臓は、ガッシリと掴まれたかのように、きゅんっとなった。


いや...きゅんって何ですか?...




そんな意味の分からない表現が出てくるぐらい、その男の体格、雰囲気、顔がすべて私のタイプだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精霊術師の復讐譚 @oisii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ