私の出会い2

「よぉ、神崎。ひさしぶりだな」


「お、お久しぶりですね、村井さん」


 私が学校から下校していた時、私をいじめていた村井という女子が現れた。この村井という人物は、小学校ではクラスの中でダントツの人気を誇っていたスターだ。そして、気に入らない女子などは容赦なく傷つける、私の中では正真正銘のゲス野郎だ。正直、こんなやつとはもう会いたくもなかった。


「村井さんは、何でここにいるのですか?」


 そう、ここは私の通っていた小学校から遠いところにある中学校。そう簡単には出会わないはずなのだ。


「なんでって言われても、あたしパパの会社の転勤でここに引っ越してきたんだよ。あんたこそ、なんでここにいるんだよ」


「私は、少し都合があって、このお父さんの地元に引っ越してきたんです」


 驚いたことに、村井も家庭の事情で同じ場所に引っ越してきたらしい。本当に厄介だ。このままでは、この先の生活も最悪なものになってしまうのではないかと思っていたが、


「でもあんた、あたしの中学校の入学式にいなかったよね。」


そうだ、すっかり忘れていた。ここの地区には、中学校が二つあるんだった。


「え、、、ということは、村井さんは飯山中学校にいるのですか?」


「そういう神崎は、菜賀山中にいるの?」


二人同時にそのようなことを言うと、同時に頷いた。


「よかったー!こんな神崎と同じ中学校にいなくて!」


と、村井がそんなことを言った。私も、こんなクソ野郎と一緒にならなくてよかったと思った。


「んじゃ、あたしは帰るから。言っておくけど、あたしのことについては他言無用でな。もし破ったら、どうなるかわかってるよな?」


「わかっています。大丈夫ですよ、誰にも話しませんから」


それから、そのようなことを言って、私は自分の家に向かって歩いて帰った。










「ただいまー、って言っても、だれもいないよなぁ」


 私は家に帰ると、挨拶をしてから、玄関に入り、そのままリビングに行こうとしたその時、




「おおおおかかかかえええええりりりぃぃぃぃぃ!!!!!!!」




大きな声が聞こえた。私は、声も上げられないくらいの恐怖を感じ、その場にしゃがんでしまった。そしてリビングから、2人の兄が立っていた。


「ゆ、勇作兄さんと恵梨香兄さん!! どうしてここに?」


「どうしてって、俺たちのかわいい妹がまた一人暮らしにさせてしまうのは、とてもひどいことだと思うの。だから、俺たちもここで働くことになったから、ここで暮らすことが決定したの!」


「そうよ、僕たちの妹と暮らせてしまう、とても素敵なことが実現してしまったのよぉ!」


そう、私の兄、勇作兄さんと恵梨香兄さんが、私の前に立っていたのだ。言葉遣いに若干癖があるが、とても面白く、明るいせいなくなので、私は兄さんたちが好きなのだ。


「兄さん、帰ってくるなら事前に行ってよ! びっくりしちゃったじゃん!」


「悪いことをした覚えはないけど、なんかごめんね。」


そんな反省の色なしの様子の勇作兄さんの謝罪を聞いた後、私たちはリビングに向かっていった。リビングにあるソファーに腰掛けると、恵梨香兄さんが声をかけてきた。


「友梨佳、あなた今日の学校はどうだった? 何かいやなことはされなかった?」


「大丈夫よ恵梨香兄さん。今日は嫌なことよりも、いいことが起こったのよ!」


「まさか、、、好きな男の子でもできちゃったの!?」


「ち、が、うー! 友達ができたの!!!!」


私が今日の学校生活の中でうれしかったことを兄さんたちに伝えると、兄さんたちは目を輝かせて、涙を流していた。


「う、うちの友梨佳に、友達が!」


「勇作兄さんはうれしいよぉ。友梨佳に友達ができて!」


二人のオーバーすぎるリアクションを見ていると、私も嬉しくなってくる。


「私、いつも一人だったけど、中学校に入ってから、いろいろなことがあって、そこで新しい出会いを見つけることができて嬉しいんだ!これからもいろいろなことがありそうで楽しみなの!」


私の今感じている思いを言うと、兄たちは笑顔になった。この笑顔が、私の生きる中の大きな柱となっているのだ。


 その後、私は兄たちと一緒にご飯を食べ、そのまま自分の部屋に行った。部屋の中には、兄たちが買ってくれたパソコンがある。私はパソコンの電源をつけると、動画サイトにすぐに行く。そこで、いつもドラムを叩いている動画を見る。それを見ながら、私も机を叩いてリズムを刻んでいるのだ。その時間が、私の中で一番楽しいのだ。私もドラムを叩きたい。そんな思いをこめて。










 夜寝ていると、夢を見た。中学校に入って、友だちができて、居場所ができて、村井が来、て。まてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまて。これは夢だ。そうだよ、村井は違うんだ。ここには私を縛るものなどいないのだ。佐々木も、中島も、そして、梨衣菜も。


「嫌な夢だな、私はもう、誰にも縛られない。やりたいことをできるようになるんだ。」


これは悪夢。そう、悪夢。








 朝になり、リビングで朝食をとり、部活の朝練に行く。兄たちはしばらく在宅ワークらしいので、まだ寝ている。私は玄関で挨拶をしてから、ドアを開けて学校へと向かった。


「よし、頑張るぞ」


私はそう言うと、小走りに学校へと向かった。

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8beat!!<エイトビート‼︎> 宮原慶太 @drumnight

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