124年に一度の節分
嬾隗
ツインテールと節分
「お豆おいひい」
「寝転がりながら食べるな」
僕の膝に頭を預け、升から豆を貪っている幼馴染にチョップを落とす。今日は節分である。僕の部屋の中だけだが豆をまき、掃除をし、まいていない豆を食べている最中である。節分には自分の年齢の数だけ豆を食べる習慣があるが、こいつは軽く年齢の三倍は食べている。いや、それが実年齢なのかもしれない。だとしたらエルフなのか?
「イタッ! 暴力はんたい! 美少女になんてことするの!?」
「自分で美少女って言うあたりがもう美少女じゃないぞ」
膝の上の自称美少女を振り落とそうと試みる。すると全力で腰にしがみついてくる。コアラが木にしがみつくかのように。
「やだっ」
「やだじゃない。僕はトイレに行く」
全力でくっついてくる幼馴染を引きはがし、トイレに向かう。と、見せかけてキッチンに向かい、こっそり恵方巻きを食べる。なぜなら僕の幼馴染は静かに食べるのを邪魔してくるからだ。去年は横で思いっきり漫画のネタバレをしながら音読された。いろいろむかついたからあとでほっぺたをつねっておいた。もちもちしていてとても良かった。
と、それはさておき。今年は南南東を向いて食べるんだったか。海鮮太巻きを頬張る。む、今年は初めて行ったスーパーで買ったが、当たりだった。おいしい。さて、お願い事だが……まあ、一つしかない。さっさと食べて戻ろう。
「ただいま……っ?!」
帰ると、幼馴染がツインテールになっていた。かわいいんだが?
「どうした? その髪型」
「今日はね、ツインテールの日らしいの。二月二日に節分なのは、百二十四年振りだから、一生に一度しか来ないんだよ? だから、ツインテールにしてみたの。どう?」
「めちゃくちゃかわいいです。ごちそうさまです」
「ふふー、モフモフしていいよ?」
「やります」
躊躇なくモフる。
「恵方巻き食べたでしょ」
「なんでわかった?」
「におい。なんてお願いした?」
「一つしかないにきまってるだろ」
ずっと、この幼馴染と一緒にいられますように。
124年に一度の節分 嬾隗 @genm9610
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